「札幌ドーム」とはスケールも発想もケタ違い…日ハム「エスコンフィールド」”衝撃の未来図”がヤバすぎる!

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前編記事はこちら:「札幌ドーム」最終年より観客動員数が爆増中…!日ハム「エスコンフィールド」試合がなくても稼げる「驚きの理由」

観客数は「大谷在籍時並み」に!

プロ野球・北海道日本ハムファイターズが、パ・リーグ6球団中2位で2024年シーズンを終え、上位3球団がトーナメント制で対決する「クライマックスシリーズ」に、6年ぶりに進出した。

熱戦の舞台となる野球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(以下:エスコンフィールド)は、ファイターズの好成績もあり、2024年の主催試合での観客動員数は「1試合平均2万8830人・年間207万5734人」。以前に本拠地を置いていた札幌ドーム時代・コロナ禍前の2019年(1試合平均2万7368人、年間197万0516人)をしのぐどころか、ファイターズが最後に日本一となった2016年の「1試合平均2万9281人、年間207万8981人」(2022年以前は旭川スタルヒン球場・東京ドームなどの開催分含む)にほぼ並ぶ高水準だ。

さらに、球場を含む「北海道ボールパークFビレッジ」にはアクティビティやグルメフードコートが満載で、2023年に来場した年間346万人のうち、野球を観戦しない来場者は4割(144万人)にものぼったという(数字は「ファイターズスポーツ&エンターテイメント」(以下:FSE社)発表)。野球場を中心に整備されたボールパークは、野球をテーマにした一大テーマパーク、といえば分かりやすいだろうか。

FSE社が発表した中長期の経営計画によると、ボールパークの将来的な開発によって、2028年には「年間来場者2700万人、試合観戦以外の来客70%」を目指すという。今後どのような開発が行われるのか、ボールパークの未来予想図を、ちょっとだけ覗いてみよう。

大学移転も控える巨大ボールパーク

「北海道ボールパークFビレッジ」32ヘクタールの敷地のうち、球場が占めるのは約5ヘクタール。ほか、子供向け遊戯施設、グランピング、農業学習施設、ドッグラン、ベーカリーレストランなどが、広い敷地にゆったりと並んでいる。

また温泉・サウナやホテル、フードホールを併設した「TOWER11」もあり、インバウンド観光客が球場やボールパークを観光の目的地に選び、ゆっくり巡りつくす様子も見られるようになってきた。

さらに分譲マンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」などもあり、認定こども園「キッズラボ ボールパークこども園」の子どもが、おさんぽカーに乗って保育士さんとともに球場周辺をまわっている。今年に入って、高齢者用賃貸住宅や医療モールも完成。ボールパークは幅広い世代が過ごす「新しい街」としても動き出しているのだ。

FSE社によると、敷地内にはさらに「今後の開発可能エリア」が5ヘクタール以上もある。うちエスコンフィールド東側の一角には、高級リゾートを展開する「バンヤンツリー・ホールディングス」のブランドホテルが2027年に開業予定で、球場に隣接してレストラン・カフェ・温浴施設・スポーツジムが入る複合施設が2025年以降に開業することが報じられたばかりだ。

そしてエスコンフィールドの北側には、学生数3600人、教職員数800人を擁する「北海道医療大学」が2028年に当別町から移転する予定だ。付属の大学病院、歯科医院などもまとめて移転するため、大学関係者だけで年間80万人がボールパークを訪れる見込みだという。学生の多くがボールパークでアルバイト勤務することを考えると、ボールパーク内での雇用状況もかなり安定するだろう。

しかし、いまだに解決しないのが「ボールパークへのアクセス問題」だ。人口195万人・地域最大の札幌市から20km近く、最寄駅(JR千歳線・北広島駅)からも2km近くも離れ…現状は徒歩かシャトルバス頼み。より安定した移動手段が必要なのは、明白だ。

現在、北広島市とJR北海道が協議のうえで、JR千歳線に「ボールパーク新駅」(仮)を設置するための協議が進んでいる。間もなく着工されるであろう「ボールパーク新駅」のこれまでの動きを振り返りながら、筆者が実地検分と“さいこうゆきや”体験の上で、たまたま痛感してしまった「新駅の必要性」についても触れていこう。

なぜ新駅設置は“2028年夏”?

エスコンフィールドの最寄駅となる「ボールパーク新駅」は、2024年7月に工事の着手が発表され、「令和10年(2028年)夏ごろ開業」という見通しが示されている。ただ北広島市によると、現時点では「着工は秋ごろ」とのこと。8月末に現地をみた限りでも、その後の現地情報でも、工事に向けた準備は始まっていない。

新駅の建設決定までには紆余曲折があった。当初の建設費用は80億〜90億円と見込まれていたものの、資材や人件費の高騰で実際には120億円以上もかかることが判明。この駅は地元の要望で開設される「請願駅」のため、建設費用は基本的に地元が負担する必要がある。

これまで「固定資産税減免(年間3億〜5億円の節税効果)」などの優遇や、周辺道路の整備などでファイターズに尽くしてきた北広島市でも「ファイターズ関連の支出がまだ増えるのか?」といった議論があったことも事実だ。

結果として「引き上げ線の建設取りやめ」「JRと市の設備の一体化」などコストダウン対策を細かく講じ、費用を90億円まで抑えてようやく着工に至った。こういった経緯もあり、当初「2027年度末開業」であったはずの新駅は、「2028年夏めど」にずれ込む見通しだ。

新駅はいまの最寄り駅である北広島駅と同様に2面4線のホームを備え、「快速エアポート」(札幌〜新千歳空港間)を含めて、6両編成の列車が停車可能。試合開始前・終了後の臨時停車などの対応が行われるだろう。

実際に観戦してわかったこと

北広島駅〜札幌駅間は「快速エアポート」で20分少々。いまのエスコンフィールドへのアクセスが「北広島駅から2km弱、徒歩20分程度orシャトルバス5分」ということを考えると、「球場まで300m、徒歩4分」の新駅開設によって札幌駅まで30分圏内で到達できるようになるのは、劇的なアクセス改善となる。

筆者が直近で観戦した試合(2024年8月27日)は、ボールパーク新駅の必要性を心から痛感させるものであった。この試合は4時間半を超える熱戦となり、試合が長時間となることを察知した観客が、早めに帰る姿が目立った。

現状では札幌方面の快速の最終が23時13分、普通列車の最終が23時29分であるため、バスや徒歩の時間を考えると、ゆっくり観戦できないのだ(試合展開によっては臨時便もあり)。

特に10回裏、ファイターズが2死満塁、サヨナラ勝ちのチャンスでアンドリュー・スティーブンソン選手が三振に倒れた時など、まわりの観客が荷物を持って、シャトルバスの行列に並ぶために、いっせいに席を立っていた。

そのあと11回まで観戦していれば、「さいこうゆきやチャレンジ」として数日ネットを賑わせる齋藤友貴哉投手の投球(自らのエラーでノーアウト満塁のピンチを招きつつも、別人のように立ち直って無失点に抑える)が見られたため、先に帰った観客が「貴重な場面を見逃した!」と悔しがる事態となった。

今年のファイターズの試合は、新庄剛志監督の闘志が選手に乗り移ったのか、とにかく展開がもつれる。球場を出てすぐ帰りの電車に乗れる「ボールパーク新駅」があれば、こういった試合も最後まで、安心して観戦できるだろう。

急がれるJR千歳線の改修

ただ、ボールパークのアクセス改善には、まだ課題がある。「JR千歳線そのものの改良」だ。

千歳線の沿線には、人口195万人の札幌市やエスコンフィールド、ボールパークだけでなく、国内便・国際便あわせて約2300万人が利用する「新千歳空港」もあり、2027年には千歳市で半導体大手「ラピダス」工場が本格稼働、関連企業を含めると数千人規模の雇用が見込まれている。

「195万都市」「ボールパーク・大学」「巨大空港」「半導体工場(予定地)」がズラリと揃う千歳線沿線の人気は高く、特に千歳市は2024年の公示で、地価上昇率が住宅地で全国2位(23.4%)、商業地で3位(30.3%)。地域としてのポテンシャルは国内有数といっていいだろう。

千歳線を含む札幌圏内はJR北海道の鉄道路線では貴重な黒字を確保しており、最近でも「快速エアポート」でロングシート車両の導入や、増発による1時間6本化など、なかなか攻めた改正を行っている。今の混雑状況を考えると、さらに増便が欲しいところだ。

あとは、JR北海道の「中期経営計画2026」で触れられた「高速化(札幌〜新千歳空港25分化)」「新千歳空港駅のスルー化」(新千歳駅空港駅を途中駅化、岩見沢方面、石勝線方面の列車などを経由させる)などが可能なのか。

恐らくすぐには難しいので、とりあえず現実的に「ナイター時の臨時列車をもっと増発」くらいは、何とかお願いしたいものだ。

「札幌ドーム」最終年より観客動員数が爆増中…!日ハム「エスコンフィールド」試合がなくても稼げる「驚きの理由」