意外と知らない「年収の下がり方」…50〜60代を直面する「定年危機」の実態

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年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。

10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。

70歳男性の就業率が45.7%の日本社会。多くの人が長く働き続けるなか、どれほどの年収を得ているのだろうか。

〈60歳以降の就業者全体の年収分布をみていくと、60代前半では平均収入は357万円で、上位25%所得は450万円、収入の中央値は280万円となる。

60代後半に目を移すと平均額は256万円まで下がり、上位25%所得は300万円、中央値が180万円まで下がる。

定年後の就業者の収入の実態を探っていくと、300万円以下の収入の人が大半であることがわかる〉(『ほんとうの定年後』より)

60代前半では300万円を切る人が、60代後半では200万円以下になる人が多いという。

定年後には「300万円以下の収入の人が大半」という事実は、人生100年時代の基礎事項として頭に入れておきたい。

収入はいつ下がるのか?

さきほど見たように、当たり前だが、定年後には収入が大きく下がる。

だが、定年前から収入低下のタイミングが訪れる人もいる。収入がいつ下がるのか、見ていこう。

〈収入低下の第一のタイミングは50代後半に訪れる。これは、定年を前にした役職の引き下げによるものだと考えられる。一定数の企業は役職定年制度を定めており、それと同時に給与も下げる傾向がある。

役職定年制度の実態は、人事院が公務員の給与を算定する際に活用している調査である「民間企業の勤務条件制度等調査」からつかむことができる。2017年時点において、企業全体の16.4%、従業員規模500人以上に絞れば30.7%の企業が役職定年制度を導入している。〉(『ほんとうの定年後』より)

50代の方々は、役職定年を気にしながら働く人もいることだろう。

役職定年で下がった収入は、その後もう一度下がる。

〈第二の給与削減の波は、定年直後に訪れる。これは想像の通り、定年を迎えた段階で会社を退職したり、同じ会社で再雇用に移行したりすることで給与が減少するからである。

60歳から64歳の平均給与所得は55歳から59歳の8割程度である。これは、女性配偶者などもともとパートで働いている人なども含まれた数値となるため、50代で正社員で高収入を得ていた人などは低下幅はより大きくなると予想される。

正社員で勤め続けていた人に限定すれば、同じ勤務体系でも定年直後は定年前と比較して3割程度給与が下がるというのが実情のようである。〉(『ほんとうの定年後』より)

定年後の仕事や生活に漠然とした不安を抱く人も多い。

誰かの経験談を聞いても、はたしてそれが自分に当てはまるのかはわからない。

だからこそ、統計データなどから「実態」を知ることで、「定年後をどう生きるのか」についてのヒントが得られるのではないだろうか。

つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。

多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体