じつは、頭の骨しか残されていなかった…80センチ超もある「あまりに長すぎる頭」から予想した「絶滅した肉食獣」その体格と食生活

写真拡大 (全5枚)

新生代は、今から約6600万年前に始まって、現在まで続く、顕生代の区分です。古生代や中生代と比べると、圧倒的に短い期間ですが、地層に残るさまざまな「情報」は、新しい時代ほど詳しく、多く、残っています。つまり、「密度の濃い情報」という視点でいえば、新生代はとても「豊富な時代」です。

マンモスやサーベルタイガーなど、多くの哺乳類が登場した時代ですが、もちろん、この時代に登場した動物群のすべてが、子孫を残せたわけではありません。ある期間だけ栄え、そしてグループ丸ごと姿を消したものもいます。

そこで、好評のシリーズ『生命の大進化40億年史』の「新生代編」より、この時代の特徴的な生物種をご紹介していきましょう。今回は、イヌやネコの仲間となる食肉類以外の肉食哺乳類を見ていきます。

*本記事は、ブルーバックス『カラー図説 生命の大進化40億年史 新生代編 哺乳類の時代ーー多様化、氷河の時代、そして人類の誕生』より、内容を再構成・再編集してお届けします。

獲物を切り裂く鋭い歯を揃えた肉脂類

現在の哺乳類世界では、「肉食性」といえば、食肉類が主流だ。

しかしかつては、食肉類以外の肉食哺乳類が生態系の上位に君臨したこともあった。

その代表といえる存在は2種類いたが、一つが「ヒアエノドン(Hyaenodon)」とその仲間たち(肉歯類)だ。

世界各地から化石が発見されており、その見た目は頭部は大きく、吻部は発達し、口には鋭い歯が並ぶ。上下の犬歯は鋭く、そして、長い。臼歯は肉を切り裂くことに適した構造となっていた。

また、四肢のつくりは走行に向いていたとみられているが、同じ走行性のイヌ類と比べると短足だ。

大型種も存在したヒエノドン

ヒアエノドンの名前(属名)をもつ種は多数報告されており、その中には頭胴長が1メートルに達する大型種も存在した。

ラブラドール・レトリバー種というイヌがいるが、彼らの頭胴長がちょうど1メートルだ。人懐こい性格の個体が多く、若い成犬などは、人とプロレスのような遊びをやったり、うれしくて飛びつくなどすると、相手を押し倒してしまうこともよくある。「1メートル」とは、そんなサイズである。

ヒアエノドンは、始新世だけではなく、その次の漸新世、そして、さらにその次の新第三紀中新世まで、その命脈を残している。

長大な頭部をもつ哺乳類

始新世の陸上世界で「最大級」と位置付けられる肉食哺乳類の名前を、「アンド

リューサルクス(Andrewsarchus)」という。

その頭胴長は3〜3.5メートルに達するとされ、現生のライオン(Pantheraleo)やトラよりも一回り大きい。肉食性の陸棲(りくせい)哺乳類としては、古今東西で最大級とされるサイズである。

最大の特徴は、その大きな頭部であり、長さは83センチメートル、幅は56センチメートルに達した。口に並ぶ歯は、鋭さこそないものの、頑健そのものだ。この頑丈な歯と大きな顎で、獲物を骨ごと食べるような、腐肉食者だったと指摘されている。

ただし、実は、アンドリューサルクスの化石は、この大きな頭部だけしか知られていない。頭胴長の推測値は近縁とされるグループに基づいているが、実は、その分類に関しても謎が多い。

そのため、実はサイズに関しては「最大級」とみられているものの、具体的な数値はよくわかっていない。具体的な数値はわかっていないが、3.5メートルで復元したときも、かなりの「頭でっかち」なので、新たな化石が発見されても、この値より小さくなる可能性は低かろう。

ちなみに、「アンドリューサルクス」という名前は、20世紀に活躍したアメリカの古生物学者、ロイ・チャップマン・アンドリュースにちなんでいる。

もちろん、始新世の哺乳類のすべてが、肉を食べていたというわけではない。

哺乳類は生態系のさまざまな地位に進出し、のちの繁栄の礎を築き始めていた。北アメリカの森林で、ウマの祖先であるメソヒップスが誕生した頃、暮らし始めたころアフリカでは新たな長鼻類が出現してきた。

続いて、ようやく鼻が長くなり、大型化してくる長鼻類をはじめ、サイの近縁種など新たに登場してきた哺乳類を見てみよう。

カラー図説 生命の大進化40億年史 シリーズ

全3巻で40億年の生命史が全部読める、好評シリーズの新生代編。哺乳類の多様化と進化を中心に、さまざまな種を取り上げながら、豊富な化石写真と復元画とともに解説していきます。

足もとの木が、めちゃくちゃ小さく見える…なんと、哺乳類最大レベルのデカさをほこった「3600年前のサイ」衝撃の姿