サッカー日本代表のアウェー戦へ久保建英の想い 平和のために「僕らができることは...」
ヨーロッパリーグ(EL)リーグフェーズ第2節のレアル・ソシエダ対アンデルレヒト戦、久保建英は大方の予想どおりベンチスタートだった。
というのも、レアル・ソシエダは開幕8戦を終えて2勝2分4敗で国内リーグ14位と大不調。ELでは初戦アウェーのニース戦で勝ち点1を持ち帰ったが、正直なところそれどころではない。
久保建英は10月の代表戦にも招集された photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
久保は後半開始と同時にピッチに立った。前半は先制こそしたものの、アンデルレヒトに逆転を許してしまう。ビハインドで迎えた後半、さずかにホームでむざむざと負けるわけにはいかず、エース投入というわけだ。
しかし結果的には、それも奏功しなかった。久保投入と同時に前半の5バックから4-3-3に変更し、エースを起点にチャンス創出を狙った。49分、クロスからの流れで右サイドの久保にボールが渡ったが、シュートは枠上へと飛んでいった。
前半は静かだったスタンドの声援もがぜん熱を帯びる。だが、チャンスは作れども得点には至らず。65分にも久保は右サイドから左足シュートを放つもGKの正面、83分の右足シュートも枠外へ。
久保は後半だけで計5本のシュートを放つが、どれもゴールにならない。ボールは集まるものの、チームは困ったら久保に預けるばかりで、フォローも少なかった。結局は右サイドで潰され、絶好のチャンスとまではいかず、チームは1-2のまま敗れた。
試合後、久保は投入された直後の勢いのある時間帯に得点を決めておくべきだったと悔やんだ。
「ちょっと焦りが出てクロスが(枠外に)出ちゃいましたけど、そこまでの流れはよかっただけに、20分ぐらいで点を決めるべきでしたね。でも、シュートを外しているっていうよりも、最後のところで相手にブロックされたりしましたので、相手もよく守ったかと」
自分たちが攻めきれなかったというよりも守りきられてしまった、という感覚のようだった。
【最も気にするのはアウェーでの治安】ELでも、リーグ戦でも、とにかく勝利がほしいのがレアル・ソシエダの現状だ。
「(CLではないから)モチベーションが落ちる、というのは僕らにはないです。ただ、順位もふるってないし、勝たなきゃいけない試合だったのは間違いない。それで落としたのは厳しいですけど、悔やんでいる時間もないので。リーグでもいい位置(順位)かといったらそうでもないので、まずは目の前の1試合1試合に向かっていきたいなと思います」
アンデルレヒト戦が行なわれた日、ワールドカップ最終予選10月ラウンドに向かう日本代表メンバーが発表された。
久保が最も気にしていたのは、アウェーの地の治安だった。1戦目が開催されるサウジアラビアは、現在戦争状態にあるイスラエル周辺と同じ中東エリアになる。
「(試合が行なわれるのは紛争地域から)遠ければ遠いほどいいかなと思うので、個人的には。実際の距離は遠いと思いますけど、やっぱり今はインターネットで何でも見られちゃいますので、そういった意味で怖さはある。
でもFIFA管轄の大会は、本当に危ないと思ったら場所を変えると思うので、開催するってことはセーフティということだから、そこはしっかり従いたいなと思います」
久保は、最終予選の開催地の治安を懸念するだけでなく、スポーツの意義にまで話を進めた。
「(爆撃の映像を)見ましたけど、びっくりしましたね。それこそ、ドラマでしか見たことがないような光景でした。こういうことがないように僕らができることは、国の代表としてスポーツでお客さんを楽しませることで、そうやって平和に解決してくれれば一番いい」
代表の持つ重さ、意義をあらためて考えさせられる言葉でもあった。
レアル・ソシエダは今週末、現在4位のアトレティコ・マドリードをホームに迎える。決して簡単な試合ではないだろうが、ここで何かしらの手応えを得て、代表ウィークに入りたいものだ。