正直に言うと、どーんと「積んであるコンポ」が、ハイエンドだと思っていた…信号経路に「ケーブルを経由させない」ほうがいい、納得の理由

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類稀なる高音質で、話題になったネットオーディオ。しかし、割高な価格とダウンロードのわずらわしさから一部のマニアにしか支持されませんでしたが、高音質定額制配信サービスの出現で、大きく変わろうとしています。

ベテランと言われるオーディオ愛好家の中にも、CDやレコードなどの「パッケージメディア(パッケージ音源)」によるオーディオなら知識も経験もあるが、ネットワークが重要になった最近のオーディオに関しては、専門用語の意味もわかりにくいと感じている人もいるかと思います。

はじめてネットオーディオに挑戦するオーディオファンや音楽ファンを対象に、機材の選び方、高音質ストリーミングのセッティング、煩わしいネットの設定などなど、聴き放題の“1億曲ライブラリー”を手にするノウハウをご紹介しましょう。今回は、オーディオ機器の機能集約についての解説をお届けします。

※この記事は、『ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう』の内容を再構成・再編集してお届けします。

オーディオの新常識「機能の集約化」

小規模な回路で構成できるネットオーディオの機能を活かすもう一つの流れとして注目したいのが、複数の機能を統合する一体型オーディオへの志向です。

大きく重い製品を好むとともに、オーディオの世界では、機能ごとに独立したコンポーネントを組み合わせてシステムを構築する手法を評価する傾向があります。

プリアンプとパワーアンプを独立させるセパレートアンプをはじめ、CDプレーヤーの信号読み取り機能とデジタル/アナログ変換回路を分離したセパレート型プレーヤー、左右を独立させたモノラルパワーアンプ、電源部と本体を別筐体(べつきょうたい)とする設計など、高価格なハイエンドオーディオでは分離・独立は重要なキーワードの一つになっています。

異種信号間の干渉を抑える、左右チャンネルのセパレーションを確保するなど、説得力のある理由があるとはいえ、そこにこだわりすぎるとコンポーネントの数が増え、システムの規模が大きくなってしまいます。

そんな高級オーディオの常識を覆す新しい流れの一つとして、ネットオーディオの時代に入りオーディオ機器の機能統合が始まりました。プリメインアンプにネットワーク再生機能を統合したり、ネットワークプレーヤーにボリューム回路を内蔵し「ネットワーク・プリアンプ」という新ジャンルの製品を作ったりと、新たな提案をする国内外のメーカーが相次いでいるのです。

アクティブスピーカーの高音質化

その流れはスピーカーにも及び、アンプとスピーカーを合体した「アクティブスピーカー」や、ネットワークプレーヤーとアンプの両方をスピーカーに内蔵するオールインワン型の製品まで登場しています。

後者は音質より使い勝手を重視した安価な「ワイヤレススピーカー」として従来

から発売されていたジャンルの延長線上に位置する製品に見えますが、音質優先のハイファイ向けに設計した製品であり、かつてのワイヤレススピーカーの音とは雲泥の差があります。

アクティブ型スピーカーのハイファイ志向が強まったのは、比較的最近のことです。

では、機能を統合すると、どんなメリットがあるのでしょうか?

接続ケーブルによる信号劣化を防げる

機能統合によるメリットとして、すぐ思いつくのは設置スペースを確保しやすいという点で、リビングルームなど生活空間ではそれだけでも大きな長所になり得ます。音の良いオーディオが欲しいけれど、サイズがネックで導入を諦めたという人もいると思いますが、最近はそんな人にもお薦めしやすいスペースファクターの優れた製品が増えてきました。

音質と機能に注目しても、一体型には複数の長所があります。ネットオーディオは音楽信号をデジタル信号で処理し、伝送することが基本です。コンポーネントが複数に分かれている場合、それらの機器間の伝送をデジタルで統一できればよいのですが、メーカーによって伝送規格が異なっていたり、アナログ入出力しか付いていない製品の場合は、デジタルとアナログの変換処理が必要となり、そこで音質劣化や情報の損失が起こる恐れがあります。

ネットワークプレーヤーとアンプ間などでデジタル信号のまま、またはデジタル信号同士でデジタル/デジタル変換を用いて信号の受け渡しを行えば、それだけ音質劣化の要因が少なくなるため、機器間の接続ケーブルが不要な一体型には音質上のメリットがあります。

操作性の向上…聴きたい音楽に瞬時にアクセス

操作性や使い勝手が向上するメリットも見逃せません。

ネットワーク機能を統合すると、選曲、音量調整、入力切り替えなどの基本的な操作を統合し、スマートフォンやタブレットで一括して操作できるようになります。

従来のオーディオシステムでは、複数のコンポーネントの電源を入れ、入力を切り替えてからメディアの準備をし、音量を調整するといった一連の操作が必要でしたが、ネットオーディオの環境を手に入れると、それら一連の操作を数秒で行うこともできます。そこまで短時間の操作は求めていないと思うかもしれませんが、特に選曲操作については恩恵が大きいのです。

聴きたい音楽に瞬時にアクセスできる便利さは、音楽の聴き方まで変えてしまうほど大きな影響があります。

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このように複合機の登場で、これまでの「CDやレコードといったパッケージメディアのプレーヤー→プリアンプ/メインアンプ→スピーカー」といったオーディオ・システム全体は、どのように変わるのでしょうか。

次回は、オーディオシステム全体から、ネットオーディオの概念を見つつ、今回の記事でもたびたび登場した「ネットワークプレーヤー」とはどんな機器なのか、を見ていきたいと思います。

ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう

CDをはるかに凌駕する音質で、話題になったネットオーディオ。初めてネットオーディオに挑戦するオーディオファン・音楽ファンを対象に機材の選び方から、煩わしいネットの設定まで具体的に分かりやすく解説します。