石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相

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 決戦の刻まであと2日に迫った自民党総裁選(9月27日投開票)。当初、最有力候補と言われていた小泉進次郎元環境相が急失速してきたことを受けて党内は大混乱に陥っている。もし小泉氏が決選投票にまで残れない3位に沈んだ場合、「究極の選択を強いられる」と議員たちは頭を抱えているのだ。

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「成長を感じさせない」発言連発でまさかの急ブレーキ

 告知日前の9月上旬。菅義偉元首相率いる「菅グループ」を中心に、若手・中堅議員たちの多くが小泉氏支援に回ったことで永田町関係者の大半は「今回は進次郎で決まり」と口を揃えていた。

 若干43歳の小泉氏に支持が集まったのは、裏金問題で党への信頼が揺らぐ中、若返りへの期待と抜群の知名度で党員・党友票を多く獲得するに違いない、と見られていたからである。

石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相

 事実、告示日前の世論調査で小泉氏は9人の候補者の中でトップを走っていた。だが、その勢いは投票日が近づくにつれて削がれていき、ついには3位にまで転落してしまった。

 理由は環境相時代に「セクシー発言」であれだけ批判を浴びたというのに、成長を感じさせない軽薄な発言を繰り返したからだ。

「出馬表明の時から『解雇規制緩和』を打ち出してサラリーマン層から強い批判を浴びた。共同記者会見や討論会では『同世代の金正恩とは父親同士が会っている。対話の機会を模索したい』『カナダのトルドー首相が首相になったのは43歳で私と同い歳だ』と、だから何なんだという発言を連発。質問の意図を理解しないまま、トンチンカンな回答をする様子も相変わらずで、『こんな男に総理をやらせて本当に大丈夫なのか』と不安が高まってしまった」(自民党関係者)

「石破や高市になるくらいならば進次郎に入れる」と考える議員が多い

 23日に投開票された立憲民主党代表選で野田佳彦元首相が新代表に選出されたことも、ますます小泉氏では国会論戦で太刀打ちできないというムードに拍車をかけているという。

「もともと立民代表選は、軽量級の『進次郎総理』を想定して経験豊かなベテランの野田氏に党内の支持が集まった経緯がある。ただ野田代表に決まると、今度は自民党側に『進次郎では厳しい』という危機感が沸き起こってきた」(同)

 そして、とうとう「小泉氏は決選投票にすら残れない」という観測まで広がるに至ったのである。そうなった場合、自民党議員たちは「究極の選択を強いられる」と言う。

「冗談混じりで、よくこんな場面で持ち出される『カレー味の…か…味のカレーみたいな究極の選択になる』と話す議員もいます」(政治部デスク)

 現在、進次郎氏と共にトップ3圏内にいる石破茂元幹事長と高市早苗経済安全保障担当相の争いを指しているのだが、2人とも「党内屈指の嫌われ者」だと言うのである。

「小泉氏が1位だろうが2位だろうが、相手が石破氏と高市氏の場合、小泉氏が選ばれるだろうと言われていました。決選投票になると国会議員票のウェイトが一気に大きくなりますが、『石破氏や高市氏になるくらいならば進次郎に入れる』と言う議員が大勢いるからです」(同)

石破氏が敬遠される理由は「安倍政権時代、後ろから鉄砲を撃ったから」

 なぜ2人はそこまで党内で嫌われているのか。石破氏についてある中堅議員は「とにかく安倍派議員が蛇蝎の如く嫌っている」と語る。

「第2次安倍政権の後半、『党内野党』として政権批判を続けたことが最大の要因。あの時の石破氏を『後ろから鉄砲を撃ちやがって』と苦々しく見ていた安倍派議員は多い。安倍派には右寄りの議員が多いので、総裁選で石破氏が打ち出した『選択的夫婦別姓の導入』『女系天皇は議論から排除しない』『原発ゼロに近づける』といった左派的な政策はそもそも受け入れ難くもある」(中堅議員)

 麻生派にも敵が多いと言う。

「トップの麻生太郎氏が、自分が総理の時に退陣要求を突きつけられたことを根に持っています」 (同)

 石破派にいた一部議員からも愛想を尽かされている始末だ。

「いいかどうかは別として、夜の会合に出るよりは本を読んで勉強していたいタイプなので、後輩の面倒見が悪い。そんな理由もあって、齋藤健氏や古川禎久氏、浜田靖一氏ら仲間が離れていきました。幹事長時代、事務的な細かいところまで口を出す『マイクロマネジメント』ぶりを発揮したことでも評価を下げた」(同)

高市氏に向けられる「仁義すら忘れたのか」という非難

 一方、高市氏への評価も負けず劣らずだ。

「保守論壇では『安倍晋三の正統な後継者』との呼び声が高い高市氏ですが、国会議員の中では『タカ派色が強すぎる』とイロモノ扱いしている議員が多い。中国・韓国やフェミニストをあえて刺激する発言をする姿勢が過激すぎると捉えられている」(同)

 政治思想が近い安倍派からも嫌われている。事実、福田達夫氏など高市嫌いの安倍派若手は今回、小林鷹之氏の支持に回っている。

「萩生田光一氏も、裏金問題があって今回は表立って動いていないが、菅義偉元首相に近いことから今回は小泉氏を支持しています。安倍派の実質的オーナーの森喜朗元首相も小泉氏支持を公言しています」(同)

 高市氏がかつての仲間たちから嫌われる理由は、派閥を抜けていった時の「自分本位の態度」だという。2012年の総裁選で安倍氏は清和会所属でありながら当時清和会会長だった町村氏と争い、勝って首相に返り咲いたが、その時、高市氏は安倍氏支持を表明して清和会を抜けた。問題視されているのは高市氏がその後に見せた態度だという。

「安倍氏から寵愛を受けたのをいいことに、かつての仲間に詫び一つ入れてこなかった。それでみんな『仁義すら忘れたのか』とブチ切れたのです。前回の総裁選に出馬することができたのは、安倍さんという後ろ盾があったから。あの時は安倍さんに言われて仕方なく応援した人も少なくない。今回、他の候補者が推薦人に裏金議員を入れるのを極力避けている中、彼女だけが13人も裏金議員を推薦人にしていることが、彼女が党内でどれだけ嫌われているかの証左。結局、彼女は彼らに頼まなければ立候補できなかった」(同)

どっちに転ぶにしても「鼻をつまんで選ぶことになる」

 では究極の選択はどうなるか。政治部記者たちの間では「石破氏が有利」と見る向きがあるという。

「野田新代表と衆院選を戦うには、高市氏では右派色が強すぎて穏健保守層に警戒される。一方、石破氏は政策通で国会答弁が安定している。彼が掲げる『選択的夫婦別姓』などの政策は野党支持層からも受けがいいので、野党として攻めづらい相手となると考えるのではないか」(前出・政治部デスク)

 だが、いま右派から大絶賛を受けて人気急上昇中の高市氏が党員・党友票でダントツの一位に躍り出れば、形勢が変わる可能性もあると言う。

「どっちに転ぶにしても鼻をつまんで票を入れることになるので、議員たちは『究極の選択になる』と頭を抱えているのです」(同)

デイリー新潮編集部