津波避難ビルの指定解除の方針が決まった静岡市役所清水庁舎

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 静岡市役所清水庁舎が巨大地震の余震で倒壊の危険性があると判定され、市が津波避難ビル指定を解除する方針を決めたことを巡り、地元住民から避難の際に混乱が生じるのではと不安の声が上がっている。

 市は20日夜、住民向けの説明会を開催。近隣の建物の活用や新たな津波避難ビルの指定などを行う考えを示した。

 「巨大地震が発生したら清水庁舎はどうなってしまうのか」「近くの避難施設は大丈夫なのか」。説明会ではそんな疑問が相次いだ。

 市が4月に発表した耐震性解析の結果では、南海トラフ巨大地震の余震で大きな被害を受けて大破し、安全確保が困難になる可能性があると判定された。中でも4階以下の耐震性が弱いと判断された。

 これを受け、市は7月に避難誘導計画を改定し、大津波警報や避難警報の発表時は来庁者を5階以上に避難誘導する方針だ。これまでは3〜9階への避難を呼び掛けていた。避難スペースを確保するため、2025年5月頃をめどに一部部局を葵消防署や静岡庁舎に移転する方針。避難スペースは5階を想定している。

 一方、津波避難ビルの指定解除にともない、いざという時は同庁舎に避難しようと考えていた近隣住民は「どこにどう逃げたらいいのか」と困惑する。

 市は近隣住民に対し、周辺の清水産業・情報プラザなど4か所の避難場所を案内する方針で、市清水区地域総務課の担当者は「清水庁舎で積極的な受け入れはしないが、外部からの避難を拒むことはしない」としている。住民説明会では同プラザの受け入れ人数を増やすことや、周辺の建物で津波避難ビルの追加指定ができないか民間事業者と協議中であることを説明した。

 ただ、築40年以上の同庁舎を巡っては、新築移転から現地改修、さらに難波喬司市長の就任後は補修費用を踏まえた上で改修か建て替えかを判断すると方針が二転三転した。地元住民からは「時間だけが過ぎてしまった。危ないと分かっているならなぜ補強してくれなかったのか」などの声が相次いだ。

 説明会後、地元の浜田地区連合自治会の会長(75)は「いざ地震が起きたときに清水庁舎を通り過ぎて逃げる人はなかなかいない。住民目線で対応を考えてほしい」と話していた。