(※写真はイメージです/PIXTA)

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学歴など関係ない……とはいうものの、高卒と大卒では、生涯年収の差は数千万円単位。多少、経済的に無理をしてでも、大学には進学したほうがいいというのが昨今の傾向です。しかし、ちょっと無理して大学進学を果たしたその先には、なんとも苦しい未来が待っていました。

物価高…東京で1人暮らしの若手サラリーマンを襲う

――月4,000円でもキツイですよね

竹山海斗さん(25歳・仮名)。専門商社に勤務する、社会人3年目です。4,000円というのは家賃の値上げのこと。大学生の頃から住んでいる東京のアパート。月7万1,000円でしたが、今回の更新で4,000円アップしました。引越しをするかどうか迷いましたが、引越し費用を考えると家賃4,000円アップを飲んだほうがいいという結論に達したといいます。

総務省統計局『小売物価統計調査統計調査』によると、2024年7月現在、民間借家の家賃は全国平均4,494円/月(1畳あたり)。1畳=3.3平米と考えると、1人暮らし25平米ほどの部屋だと、全国平均3.4万円ほど、という計算。都市別にみていくと、東京都区部では9,747円/月。25平米の部屋だと7.3万円ほどです。東京都市部の府中市では6,634円/月、25平米なら5万円ほど。八王子市なら5,772円/月。25平米で4.3万円です。

大卒サラリーマン(平均年齢42.6歳)の平均給与は月40.8万円、年収673.6万円。学歴計で月収36.3万円、年収で596.9万円なので、“大卒”というアドバンテージは大きいといえるでしょう。しかし大卒であっても20代前半では月収で24.3万円、年収で356.1万円程度。

ちょうど平均くらいの給与だという竹山さん。手取りは月19万円ほどだといいます。

【月収24万円・25歳サラリーマンの手取り額】

額面:24万円

手取り:18万9,812万円

(天引き内訳)

・所得税…4,697円

・住民税…1万0,083円

・健康保険…1万2,000円

・厚生年金…2万1,960円

・雇用保険…1,440円

一方、1人暮らし男性の1ヵ月の支出をみていくと、月17万円程度。ただこれは全国平均で、家賃にあたる居住費は月3.6万円。倍以上の家賃を払う竹山さん。平均的な1人暮らし男子の暮らしは難しい水準です。

【1人暮らし男子の1ヵ月の支出】

消費支出…16万8,797円

(内訳)

食料…4万2,747円

住居…3万6,289円

光熱・水道…9,161円

家具・家事用品…4,998円

被服及び履物…5,735円

保健医療…4,113円

交通・通信…2万0,838円

教育…7円

教養娯楽…2万5,907円

その他の消費支出…19,004円

※34歳未満/勤労男性の場合

高年収でも「奨学金の返済負担」を感じているという事実

さらに竹山さんの家計をひっ迫させているのが、奨学金の返済です。

中央労福協が日本学生支援機構の奨学金を利用し、現在それを返還中の人を対象に行った『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』によると、奨学金の借入額は平均310万円。また毎月の返済額は月1.5万円でした。また返済に関して4割が「苦しい」と回答。困窮具合は年収で左右されますが、竹山さん同様「年収300万円〜400万円未満」では5割弱が奨学金返済が大きな負担になっていると回答。さらに大卒サラリーマンの平均年収、600万円台になっても3割強の人が奨学金返済に負担感を覚え、さらに8人に1人は「かなり苦しい」と窮状を訴えています。

【年収別「奨学金返済」負担感】

年収200万円〜300万円未満…55.2%(27.7%)

年収300万円〜400万円未満…48.9%(19.2%)

年収400万円〜500万円未満…41.9%(22.6%)

年収500万円〜600万円未満…41.3%(15.9%)

年収600万円〜700万円未満…34.7%(12.6%)

年収700万円〜800万円未満…32.7%(10.5%)

年収800万円〜900万円未満…28.0%(8.5%(

年収900万円〜1,000万円未満…36.4%(16.9%)

年収1,000万円以上…29.0%(12.3%)

※数値は「かなり苦しい」と「少し苦しい」の合計、(かっこ)内は「かなり苦しい」のみの数値

30代後半くらいまでかかる奨学金の返済。なかには結婚したり、子どもが生まれたりとライフステージが変化している人もいるでしょう。そうなると、奨学金返済にあてる月1.5万円でも、大きな負担を感じるようになります。

大学を卒業したばかりで社会人経験が浅く給与も低い。奨学金の返済が苦しいのはいまだけ……そう歯を食いしばっている人たちにとって、いまよりも給与が良くなっても、奨学金の返済負担からは逃れられない(というケースもある)という事実には、絶望感を覚えるかもしれません。

地方から大学進学のために上京をしてきたという竹山さん。「その先の就職を考えると、地元の大学よりも東京の大学のほうが有利だから」というのが上京の理由。家の経済的な事情を鑑みて、奨学金を利用し、アルバイトをしながら、大学に通ったといいます。しかし、この先も奨学金返済に苦しむ、地獄のような日々が続くかもしれません。

――こんなことなら大学なんていかなきゃ良かった

竹山さんのように、奨学金返済の負担感が、その先のライフイベントに大きな影響を与えていることがクローズアップされています。昨今は、返済不要の給付型奨学金も増加。また福利厚生の一環として、奨学金返済を肩代わりするという企業も増えています。

進学したことを後悔することのないよう、返済のことも見据えて賢く奨学金を利用したり、キャリアを考えたりしたいものです。

[参考資料]

総務省統計局『小売物価統計調査統計調査』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

総務省『家計調査 家計収支編 2023年平均』

中央労福協『奨学金や教育費負担に関するアンケート調査』