久々のプレミアの舞台で躍動した三笘。(C)Getty Images

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 ブライトンの三笘薫にとって、3度目のプレミアリーグのシーズンが開幕した。プレミアデビューした2022-23シーズンは10月下旬にレギュラーの座をつかみ取ると、翌11月〜12月にカタールで行われたワールドカップでも活躍。大会中は「三笘の1ミリ」という言葉が生まれるなど、日本国内で一躍脚光を浴びた。

 大会終了後にイングランドに戻ってからは、クラブでコンスタントに結果を残し、最終的には7得点・6アシスト(リーグ戦のみ)を記録。イングランドでもブレイクを果たしたのである。

 2年目の昨季は、開幕から6節までに3得点・3アシストを重ねてさらなる活躍を予感させた。しかしクラブ史上初となる欧州カップ戦への参戦もあり、過密日程の影響からチームには怪我人が続出。前シーズンに見せたハイレベルなパフォーマンスは影を潜め、三笘自身も低調なプレーが続いた。

 12月には足首を痛めて6週間、さらに2月に腰の怪我から長期離脱を余儀なくされ、結果的にそのままシーズンは終了。最終戦のマンチェスター・ユナイテッド戦後、三笘は次のように語った。

「チームが厳しいなか、人数が少ないなかで戦っているところはありましたけど、(怪我をした)僕ができることはもう何もなかった。見守るしかできなかった。コンディションが上がりつつあったところで怪我しちゃったんで、もったいなかった」

 ビッグクラブへの移籍話も度々浮上し、さらなる飛躍が期待されたのが昨シーズンだったわけだが、終わってみれば不本意な1年を送った。一方で、マンU戦後の取材の際にはこうも述べている。

「まあ、次もう、切り替えるしかなかったですし、次のシーズンどれだけできるかが大事かなと思いますね」
 
 そして迎えた今季。真価を問われる3シーズン目の開幕戦で、その言葉どおり日本代表のエースがいきなり結果を残す。

 敵地グディソンパークでの初戦。6か月公式戦から遠ざかり、溜まっていた鬱憤を晴らすかのように、試合開始のホイッスルからピッチを駆け回った。開始2分に今季のファーストタッチ。左サイドでボールを受けると即座に加速してゴールに迫ったが、敵の好タックルによりボールはタッチラインを割った。

 13分には、今度は自陣ペナルティーエリア付近まで戻って敵からボールを奪い、さらにその数分後には右サイドのヤクバ・ミンテからのパスを受けて左サイドからカットイン。エリア内でシュートを放ったがブロックされた。

 迎えた26分。再び自陣まで戻った三笘は敵からボールを奪うことに成功。こぼれ球を味方が拾って三笘へ戻し、22番はそのまま前進。敵陣に入ると右サイドに展開し、ミンテの球足の速いクロスをファーサイドへ走りこんだ三笘が至近距離から右足で押し込む。鮮やかに先制点を奪った。
【動画】スピードに乗ったドリブル→鮮烈フィニッシュ!三笘の今季初ゴール
 その後も要所にキレのある動きで敵のバックラインに襲い掛かり、復調をアピール。対峙したエバートンの右サイドバックが39歳のアシュリー・ヤングだったことも奏功し、怪我をする以前の状態どころか、それ以上のコンディションで新シーズンに臨むことに成功した。
 
 66分には、スピード不足が露呈していたヤングの一発レッドカードも誘発。ルイス・ダンクの後方からのフィードを元イングランド代表がトラップミスした一瞬の隙を突いて、こぼれ球を拾った三笘がドリブルを試みる。すると後ろから倒されて、ヤングを退場処分へ追い込んだ。

 開幕戦は3−0で快勝。自身の得点シーンについて、「プレシーズンもなかなか点決められなかったですけど、チャンスは来ると思っていました。練習ではいい感覚はあったので、いずれ来るだろうと思っていました」と振り返った。

 昨季終盤のロベルト・デ・ゼルビ監督の辞任を受けて、今夏には31歳のファビアン・ハーツラー新監督を招聘。戦術的には、デ・ゼルビ監督と比べてバランス型といえ、攻撃の意識が高い一方、チーム全体で守って失点をしないことも重要視するスタイルだ。

 新しい指揮官から求められる内容はより多くなっており、とりわけ守りの面で貢献するよう指示が出ているという。

「守備のところは全員求められてるんで、そこをやった上で、前線で違いを出すっていうところ。よりポジショニングだったり、守備の立ち位置はよく言われますね」。
 
 三笘個人に関して言えば「サイドバックを助けろと言われている」。エバートン戦ではその成果を出しており、「特に相手の右サイドの選手がカットインする選手だったんで、そこのカバーは言われていた。特にそこは、うまく仕事はさせなかったと思います」と胸を張った。

 まだ初戦を終えたばかりだが、チームの形としては安定性が増したように映る。ブライトンファンであれば、シーズンに期待を持てる内容と言っても過言ではないだろう。

 実際にプレーをする選手たちも自信を深めており、三笘も「まだ分からないですけど、本当に自分たちがやってることをやり切れれば、上位にいけると思いますし、それを信じて今やってる途中なので、これからどうなるか見てほしい」とした。

 だが今はただ、プロになって以来、初めて当たったともいえる壁を乗り越えて、ピッチに立てる喜びを痛感している。

「本当に久々のプレミアリーグでしたし、楽しかったです。自分もその怪我から色々準備してきてるんで、それが今シーズンどう出るか楽しみですね、自分自身も」と目を輝かしていた。

取材・文●松澤浩三