走った後にサンドバッグを打ち込む比嘉大吾(撮影・佐々木彰尚)

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 「ボクシング・WBO世界バンタム級タイトルマッチ」(9月3日、有明アリーナ)

 王者・武居由樹(大橋)に挑戦する1位で元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(志成)が19日、都内の志成ジムで公開練習を行った。

 6年ぶりの世界戦で、6年は「あっという間」だったという比嘉。その6年前、2018年には体重超過で世界王座を剝奪されており、「まず体重を意識しないといけない」と自虐的に語り、「体重は練習前であと5キロ、練習後であと4キロ。いい感じで来ています」と現状を説明した。

 野木丈司トレーナーは、世界戦が決まる少し前、比嘉が初めて練習中に「自分に勝つって気持ちいいですね」と言ったことを明かし、「(20年の)復帰後初めて聞いて、それまでキツいと投げ出したりやらなかったりしたのは、天からぶら下がった1本の糸に感じた。そこから少しずつ少しずつ、自分に勝つって気持ちいいみたいなことをやっていった」と、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を引用して比嘉の意識改革を説明する。「復帰後の試合は今の大吾と比べて参考にならない。ミットを持っていても、パンチに気持ちが入っていて全然違う」と強調した。

 武居は比嘉が苦手とされるサウスポーだが、比嘉は「サウスポー対策は集中力だと思います」ときっぱり。野木氏は「どれだけ入れて距離をつぶすか、距離次第になる」と試合の鍵を指摘し、「武居サイドは入られたくないと思う。大吾は入り際に頭をグッと下げてから入るクセがある。(武居陣営は)ここでアッパーを狙えとたぶん練習していると思う」と、偵察に訪れた武居陣営の八重樫東トレーナーに語りかけるように話し、心理的な揺さぶりをかけた。

 比嘉、野木氏、武居、八重樫氏は旧知で、普段はトレーニングをともにしている間柄。試合が決まってからは顔を合わせていないというが、よく知る八重樫氏相手ならではの野木トークだ。

 比嘉が「僕が体重オーバーした時、いろいろ飲みに連れて行っていただき、ありがとうございました」と、かつての八重樫氏の気遣いに感謝すれば、八重樫氏も「試合終わったら飯行きましょう」と返す一幕もあり、偵察は和やかムードに。

 強打者同士となる試合の決着について、野木氏は「僕は正直、判定勝負になるんじゃないかと思います。ポイントを取るのがすごく重要になってくる」、八重樫氏は「どっちかが倒れる展開になる。武居が倒して終われるように」と、対照的に予想していた。