ガッツリ盛られたロースト肉はしっとり柔らかく、ぺろりと食べられてしまいます。

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海外の料理について、昔から定説のように言われていることがあります。それは、「イギリス料理は不味い」ということ。こう言われるのは理由があり、土壌が痩せ地で野菜が育ちにくいこと、歴史的に質素な食事を好むこと、18世紀後半の産業革命の都市過密によって低所得者層の栄養状態が悪化したことなどがあげられます。このイメージに引っ張られてきたことは一理あると思いますが、時代は進みました。ロンドンは世界で最も国際色豊かな大都市のひとつであり、多様な食文化が入り混じる状況に。果たして、いまだにイギリス料理は不味いのでしょうか?
私は食文化研究家としてイギリスに出向き、リアルな食事情をリサーチしています。結論から申し上げると、感動するほどの美食を味わうことは可能だとお伝えしたいのです。そこで今回は、2024年夏の最新・英国食事情を実体験してきた私が、ロンドンだけではなく地方でも味わったメニューを6つほど紹介しながら、定説を覆すおいしい話をさせていただきたいと思います。

◆1:地元民に愛されるサンデーロースト

イギリスには「サンデーロースト」という日曜日に供される伝統的な食事があります。料理の基本構成は、ローストした肉、ジャガイモ、ヨークシャープディング(小麦粉に牛乳、塩、卵黄、泡だてた卵白を加え、肉汁をかけて焼いたもの)、野菜の付け合わせなど。グレイビーソース(肉を焼いた時に出る肉汁を使って作るソース)がポイントになっていて、パブや肉料理専門店などで味わうことができます。

これ、肉好きにはたまらない食べ応えで、日本でこのレベルの豪快さを味わえるお店はなかなかないでしょう。観光客ではなく地元民が通うような人気店を予約すれば、ハズレを引くことはありません。

◆2:3つ星以上のホテルで食べる「イングリッシュブレックファースト」

こちらもイギリスの食文化を語る上で欠かせない、伝統的な朝ごはんのこと。ベーコン、ソーセージ、卵料理、ベイクドトマト、ベイクドビーンズ、マッシュルームなどを1枚の皿に盛り付けたボリューム満点の構成になっています。ホテルやカフェなどで食べることができますが、3つ星以上のホテルであれば大概は安心できる味で、朝から至福の満腹感を味わうことができます。

◆3:有名店や地方パブで食べる「フィッシュアンドチップス」

イギリスの国民食「フィッシュアンドチップス」を日本で食べてイマイチだと判定している方がいたら、本場の味を試していただきたい。特に有名店や地方のパブなどで食べるフィッシュアンドチップスは、言葉を失うおいしさです。白身魚の程よくやわらかさと衣の風味やサクサク感のバランスが良好、超ビッグなボリューム感も喜びにつながるでしょう。

とにかくビールとの相性は抜群で、揚げ立てのおいしさは記憶に残ります。産業革命時代のフィッシュアンドチップスは下味をつけず臭みを取らないまま揚げていたために、不味い料理として扱われたそうですが、今では大きく改善。ガイドブックやグルメサイトで評価の高い店に行けば、必ずや感動の味にたどり着けるはずです。

◆4:人気の和食店で食べる「アレンジされた日本料理」

今回の滞在で改めて実感したのが、イギリス国内における和食の進化ぶり。以前はサーモン中心の寿司おにぎり、味噌汁などが定番でしたが、人気の和食店に行ってみると、和牛とトリュフの握り寿司、ピリ辛マヨネーズが添えられたたこ焼き、スパイスの効いたカツカレーなど、人気メニューに変化が。

純粋な和食とは違う、海外の食文化がほどよく融合した和食は、イギリス国民だけでなく、世界中から集まる観光客からも広く愛されている光景を確認できました。