園児バス置き去り死で前園長実刑 裁判長「教訓のため生まれたわけではない」声震わせ

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 おととし、通園バスに3歳の女の子が置き去りにされ、重度の熱中症で死亡した事件で、元園長に実刑判決が言い渡されました。裁判長は言葉を詰まらせながら、3歳の女の子が生きた意味を説きました。

【画像】裁判長、3歳女児は「お父さんやお母さんを幸せにするために生まれてきた」

■座席方向の確認せず…バスに取り残される

 河本千奈ちゃん(当時3)がおととし9月に命を落としてから、1年10カ月が経ちました。

 静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通っていた千奈ちゃん。いつものように首から水筒を下げ、午前8時半に家を出て送迎バスに乗りました。

 普段勤務している運転手が休みだったため、代わりに当時園長だった増田立義被告(74)が運転をしていました。

 午前8時50分ごろに園に到着したバス。元園長は座席の後方の確認をせず、千奈ちゃんはバスに取り残されました。

 当時担任だった西原亜子被告(48)は千奈ちゃんがいないことに気付きながら、欠席だと思い込み、両親への連絡を怠りました。

 事件当日、牧之原市は最高気温は30.5℃まで上がりました。警察が行った実験では、車の中の温度は45℃に達していました。

 千奈ちゃんが見つかったのは、およそ5時間後の午後2時。バスの中で衣服を脱いた状態で発見されました。麦茶を入れた水筒は空っぽでした。

 増田被告は事件直後の会見で、千奈ちゃんの名前を言い間違える場面もありました。

園長として会見する増田被告(おととし9月)
「“ちなつちゃん”がどの子というのは、入園して間もないので把握はしていません」

 さらに、笑みを浮かべたような表情でこうも話しました。

増田被告
「廃園になるかもしれないよね」■裁判長「教訓のため生まれたわけではない」

 最高気温39℃を超えた静岡で開かれた裁判公判。静岡地裁は、送迎バスに千奈ちゃんを置き去りにして重度の熱中症で死亡させたとして、増田被告に禁錮1年4カ月、元担任・西原被告に禁錮1年、執行猶予3年の判決を言い渡しました。

 國井恒志裁判長は判決文を読み終えると、被告に語り掛けました。

國井裁判
「2人の仕事は人の未来を育てる素晴らしい仕事です。その分、人の命を預かる責任は重い」

 裁判長は、声を震わせながらこう続けました。

國井裁判
「千奈ちゃんはお父さんやお母さんを不幸にするために生まれてきたわけではなく、お父さんやお母さんを幸せにするために生まれてきました。教訓にするために生まれてきたわけではありません。お父さんやお母さんの泣く顔を見るために生まれてきたわけではありません」■増田被告「大変重く受け止めている」

 法廷内では、パーティション越しに聞いていた母親とみられる女性のすすり泣くような声が響きました。

千奈ちゃんの父親(40)
「実刑という言葉を聞いた時にホッとしましたし、良かったなと」
「(Q.千奈ちゃんにどういう言葉を掛けたいか?)『良かったね』とは言えないと思います。いつも謝っているので、手を合わせる度に、きょうもそれでも『ごめんなさい』と謝ると思います。『今回の事件で千奈ちゃんは子どもの命を守る大切さを私たちに教えてくれた』と(裁判長が)おっしゃった言葉が、一番印象に残っています。今回しっかり実刑判決を下していただいて、とても説得力があって、素直に私の中で受け止めることができました」

 増田被告は弁護士を通じてこうコメントを発表しています。

元園長・増田被告の判決後のコメント
「今回の判決を大変重く受け止めております。自らの責任に真摯に向き合っていく所存です。また、今後とも千奈さんの慰霊、ご遺族への謝罪・償いを続けてまいります」

(「グッド!モーニング」2024年7月5日放送分より)