主演舞台でコメディに挑戦する鈴木保奈美(撮影:KAZUYUKI EBISAWA/makiura office)

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東京ラブストーリー』をはじめ、トレンディドラマの女王として大人気だった鈴木保奈美(57)。そんななか、出産・育児のため12年間休業、女優復帰してからは朝ドラでの母親役など、以前より幅広い表情を見せてくれている。7月から念願のコメディの舞台へ立つにあたり、あらためて女優復帰した決意と仕事への思いを明かしてくれた。

「ドラマや映画、舞台を見るのが大好きで、いい作品に出合うと、自分も出たい! と思っちゃうんですよ。何かにつけてはやりたいなあと言っていたら、知人などを通していろいろつながって今回の舞台にたどりつきました」

7月に開幕する舞台『逃奔政走(とうほんせいそう)-嘘つきは政治家のはじまり?-』で主演を務める鈴木保奈美。近年、舞台での活躍も目覚ましい彼女が、逆オファーの形でタッグを組むのは、脚本家で演出家の冨坂友。シチュエーションコメディを得意とし、ポスト三谷幸喜とも呼ばれる注目の人だ。本作の前日譚でもある生放送ドラマ『生ドラ!東京は24時-Starting Over-』に主演した鈴木が考える冨坂作品の面白さとは?

「無駄なセリフは1行もなく、たくさん情報が詰まっていながらもわかりやすく、実に見事に伏線が回収されます。その緻密な構成は素晴らしいですし、疾走感があって面白い。また、演出方法は非常に的確で、見せたいものがはっきりしているので、とてもやりやすいです。ただ、見るのとやるのとでは大違いで、“生ドラ”のときもフィジカルな部分でついていくのが大変でした。動ける体にしていかなきゃいけないなあと思っています」

プライベートでは3人の娘の母。出産、育児のため12年間の休業を経て仕事に復帰した鈴木だが、復帰を決断した理由の一つに友人の死があったという。

「ずっと『仕事すればいいのに』と言ってくれていた友人がいたのですが、病気で亡くなってしまったんです。返事をうやむやにしたまま、彼女と最期にきちんと話ができなかったことに大きな後悔が残り、私自身、体調不良になってしまって。何か動かないと自分がダメになる。だったら、彼女が勧めてくれたことをやってみようと思い、復帰を決めました。人生は有限で、いつかやろうと思ってもいつかは来ないかもしれない。思い立ったらすぐに動かなきゃ! と考えるようになりました」

自身初のコメディ主演舞台となる本作も、そんな決意の延長線上にあったもの。

「誰かが呼んでくれるのを待っているだけでは何も起こらない。それは40代、50代になったらなおさら。自分のお尻をたたいて、ものすごく勇気を出してノックしに行っています。時間はかかるけれど、少しずつ結果につながっているから、やってみたほうがいいんだなあと、今は思っています」

また、年齢を重ねたことで無理をしなくなったことも仕事が順調な秘訣だ。

「若いころは、弱いところは人に見せまいと思っていたんです。でも、今はそんなことも言っていられず、カッコつけるのは二の次(笑)。それに、逆の立場で考えたとき、完璧すぎないほうが周りは安心してくれるのかもしれないと思って、弱音を言ってもいいのかなあと思えるようになりました」

舞台『逃奔政走(とうほんせいそう)-嘘つきは政治家のはじまり?-』

7月5〜16日 東京・三越劇場、7月20〜21日 京都・京都劇場にて上演。クリーンで人権派の女性知事が、さまざまなしがらみや理不尽なトラブルに巻き込まれながらも自らの正義感と使命を取り戻していく姿を描く

(ヘアメーク:福沢京子スタイリング:犬走比佐乃/衣装協力:オールド イングランド・OLD ENGLANDE銀座店)