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ますます過熱する中学受験。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』が発売に。本書より抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介する。

6年生の今(6月)でも、現実的な志望校はまだ決まっていなくてOK

 家庭内である程度、志望校を持っておくことは非常に大切です。なぜならば、志望校を決めなければ、

・学力を向上させる
・モチベーションを維持する
・志望校対策の打ち手を考える

 ことができないからです。

 第一志望は早い段階からあるに越したことはありませんが、1年生が「ぼく、カイセイ!」と言っているのは、まだ夢の段階。4年生でもまだ子どもの実力は測れません。

 夢物語ではない第一志望校は、6年の春頃にある程度固まっているのが理想です。そして、志望校対策に3ヵ月以上は必要なことを考えると、9月中には現実的な志望校を決めたいところです。

第一志望は「背伸びをしたら届くかも」というところ

 第一志望は余裕で合格できる学校ではなく、背伸びをしたら何とか届くかも……というレベルが最適です。なぜなら、そこを目指して勉強しなければ、学力は伸びず、モチベーションを維持することもできないからです。

「ノミの天井」という有名な話をご存じでしょうか。ノミは非常に高くジャンプする能力を持っていますが、飼育ケースの中で飼うと、ジャンプのたびに天井にぶつかるため、小さく跳ぶことを学習します。その後、飼育ケースの天井を取っ払っても、ノミは本来のように高く跳ぶことはせず、小さくしか跳べなくなります。

 もし、6年春の段階で第一志望のB校が余裕で手の届くレベルだった場合、子どもはそこに合格するための努力しかしません。関東では3〜4人に1人しか第一志望に合格できないといわれますが、合格を取っていくのは、その学校より難度が上であるA校の志望者たちです。第一志望がB校ならば、なおさらA校を“目標”として持っておくことをおすすめします。

 第二、第三志望は、第一志望の合格可能性との兼ね合いによって左右されますが、対策や過去問を解く時間を考えると、第二、第三志望は本番の3ヵ月決めておいてください。

 とはいえ、子どもの点数や偏差値は一定しません。秋の学園祭などで気持ちが変わることも、現実を見て志望校を下げることもあるでしょう。

 実際、Hちゃんはずっと「桜蔭」を目指して頑張っていましたが、模試で思うような結果がなかなか出ず、本番2ヵ月前に第一志望校を「豊島岡女子」に変更しました。このように、高い目標に向けて努力してきた上で変更することはよくあります。

志望校を絞り込むことも大切

 F君のご家庭の志望校は「早稲田実業、都立小石川(ともに東京都)、慶應湘南藤沢(SFC/神奈川県)」でした。この3校はいずれも難関校であり、出題傾向も対策も全く異なります。

 6年の夏までは、本人やご家庭のモチベーション維持のために「どこも良い学校ですよね」と容認していましたが、夏休みが終わった段階で「第一志望を絞ってください」とお話ししたところ、「どうして絞らなきゃダメなんですか! 全部受験しちゃダメなんですか!!」と言われました。

 どこも余裕で合格できる力があれば、この3校を併願しても問題ないのですが、この時点での偏差値に15以上の開きがあるF君にとってはどの学校も完全にチャレンジ校です。

 私立の早実かSFCに絞って徹底的に対策をしても、合格できるか否か―という状態であること、地元の公立に行かせる気がないならば確実に合格できる第二志望、第三志望を決めておく必要があること、塾では過去問を解く指示が出ているが、まだF君は解けるレベルでなく対策が必要なこと等を説明しました。

 しかし話は平行線のまま、冬を迎える前に私はこのご家庭の指導をクビになりました。

 中学受験はシビアです。

 どれだけ願っても、気合を入れても、本人の学力に見合った点数しか取ることができません。
 人間は夢や希望がないと気力を失います。しかし、夢だけでは現実を見失います。
 ぜひ、ある程度現実的な志望校を、しかるべき時期までに見つけてください。

*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。