【A4studio】大ブームだった『RIZAP』がまさかの赤字に…しかし「驚異的な復活」を遂げていた

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フィットネスクラブの倒産が相次いでいる。健康ブームは続いているにもかかわらず、である。東京商工リサーチによると、2023年度(4月〜2月)のフィットネスクラブの倒産件数は28件に達したという。16件を記録し最多であった2022年度を12件も上回り、1998年の統計開始以来、過去最高となってしまっているのだ。

健康ブームで増加したフィットネスクラブ。顧客を引きつけ続けるためには、最新のマシーンの導入が不可欠であるが、資金力に乏しい中小事業者はなかなか設備を一新させられず、大手事業者に飲み込まれてしまった。こうした中小事業者は2014年の『RIZAP』の成功を受けて参入した事業者も多い。そんな『RIZAP』も経営難に追い込まれていた。起死回生の一歩として生み出したのが、真逆のビジネスモデルである、コンビニジム『choco ZAP』だ。流通ジャーナリストの西川立一氏に解説していただだく。(以下、「」内は西川氏のコメント)

記事前編は「『RIZAP』ブームで急増も…じつは、いま『フィットネスクラブ』の倒産が止まらない」から。

『RIZAP』から真逆のビジネスモデルが誕生

『chocoZAP』は、『RIZAP』で10年間培った知見をもとに、ハードすぎず誰でも簡単に運動に取り組めることを目指して、「1日5分のちょいトレ・健康習慣プログラム」を開発。

ただ『RIZAP』の知見を活かしたとはいえ、『chocoZAP』はパーソナルジムとは真逆とも思えるビジネスモデル。パーソナルジムはトレーナーが一人ひとりの会員を手厚くサポートするため、莫大な人件費がかかることがネックだったが、『chocoZAP』は人件費を極限まで削減させることで利益を生み出そうというビジネスとなっている。

そんな『chocoZAP』は2022年7月の開始から快進撃を続けており、昨年11月の時点で早くも1160店舗、会員数は101.0万人となっていた。会員数100万人に到達するまで、1年半もかからなかったというのは驚異的。

『RIZAP』はビジネスモデルを変革することでピンチを乗り越える突破口を見出してきたのだ。

「『chocoZAP』がスタートする前からすでに、女性専用フィットネスクラブ『カーブス』が1回30分、着替えも予約も不要でマンツーマンプログラムを受けられるというビジネスを始めていました。そのため、『RIZAP』がそういったビジネスモデルを参考にして、新たなコンセプトの『chocoZAP』の業態開発がなされた可能性もあるでしょう。

ただやはり新型コロナ流行のタイミングもあって、より手軽に短時間で利用できるという業態開発はもう少し前から進めていたのかもしれません。いずれにしても2012年から始めてパーソナルジムブームを巻き起こし、2022年から始めたコンビニジムがブームになりつつあるという成功を考えると、『RIZAP』はフィットネス業界のパイオニアとして新たな地平を開拓してきたと言えます」

他社との差別化、サービスの細分化が鍵

健康ブームが終焉に向かい、フィットネス業界全体が斜陽化する可能性はあるのだろうか。

「健康志向の流れはまだ当分続くと予想されますので、早々にはフィットネス業界の市場的な衰退は起こらないでしょう。ただ一方で、消費者の節約志向も強まっています。そのためフィットネス業界は現在さらなる転換期にあるのかもしれません。小規模事業者は大手チェーン企業との明快な差別化がない限り、厳しい競争に直面するでしょう」

独自性の高い魅力を提供していかないと、倒産の危機と隣り合わせの状況が続いていくということなのかもしれない。

「現在、『コナミスポーツクラブ』や『セントラルスポーツ』などの大手企業で、フィットネスクラブ市場の約7割程度を占めています。小規模事業者の倒産が増加していることもあり、今後はさらに大手企業の寡占化が進むと推測できます。さらに最近では、“女性専用フィットネス”と一口に言っても、ホットヨガやピラティスなどサービスがさらに細分化され、他社との差別化を目指す動きが顕著になってきました。これからフィットネスサービスは、さらなる細分化が予想されるでしょう。

『国際ヘルス・ラケット&スポーツクラブ協会』の2018年の調査によれば、日本のフィットネス参加率は3.33%と低い水準にとどまりますが、アメリカは20.3%、イギリスは14.8%と欧米のフィットネス人口のほうが断然多いです。サービスの差別化や細分化はすでに限界に達したように感じられるかもしれませんが、フィットネスのトレンドは欧米から流れてくる傾向があり、日本にはまだない新業態や新興勢力が登場する余地は十分にあるのです」

市場規模の拡大と健康ブームの継続が予想されるなか、より低料金・短時間のサービスや、都度払いシステムのジムなど、新たなフィットネスのビジネスモデルが続々と出現するのかもしれない。

昨年度はフィットネスクラブの倒産件数は過去最多となったが、それは業界全体の斜陽傾向を意味しているのではなく、戦国時代的な競争の激化の末に起こった事態だったようだ。

(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)

『RIZAP』ブームで急増も…じつは、いま「フィットネスクラブ」の倒産が止まらない