2020年5月、単身赴任中の夫(当時56歳)が突然死するという経験をしたESSEオンラインライター(当時52歳)。死因は「致死性不整脈の疑い」でした。夫婦2人家族で、前触れもなく夫が亡くなり、急にひとり遺されるという想像もしない事態から4年。時が経つにつれ実感する心境の変化や、今だからわかることを率直に語ります。

死別後3年で、ようやく感じた「時間薬」

夫が単身赴任先の自宅にて56歳と2か月で突然死してから丸4年が経ち、4歳年上だった夫と同じ年齢になりました。夫が生きていたら60歳なので、もう定年です。

この4年間は、突然の死別に加え、異例のコロナ対策、更年期の不調と気持ちがふさぐことばかり。ストレスMAXになりながらも、どうにか今日までしのいでこられました。時間はいろいろなことを教えてくれます。

世にいう「時間薬」は、いったいいつ効くのか。

夫を亡くして1〜2年は、そんなことばかり考えていました。なにを見ても夫を思い出し、涙ぐむ日々。でも、時間がたつほどに人には泣き言を言えず、平静を装う日が続きました。仕事をしたり、友達と会って一瞬忘れるけれど、なかなか抜け出せた気がしません。

喪失感が少し和らいだと思えたのは、死別から3年経った頃です。気がつくと、涙はほとんど出なくなっていました。

毎日毎日仏壇に向かって心で会話(夫の声は脳内変換)でしているうちに、夫の存在を近く感じるようになっていたのです。夢にもよく登場するのですが、最近はごく普通にスーツ姿で玄関から帰ってきて驚かされたこともありました。あまりに自然なものだから、私は夢の中でびっくりして…「アンタ、死んだんじゃなかったの!?」と聞いたら、「いいんだよ!」と夫。

あれほど忘れるのが怖かった夫の声、リアクション。なにひとつ忘れてないどころか、今もありありと思い出せるのです。

夫の友人や会社の方々も同じだったと思います。亡くなって3年以上たってもしのぶ会を開いてくれたり、忙しいなかお墓参りに来てくれたり。ずっと夫を忘れずにいてくれました。

死んで終わりじゃない。みんなの心の中にちゃんと生きている。そう思えるようになって、やっと時間薬は効き目をあらわしたように感じます。

就職した頃、「3日もてば3か月もち、3か月もてば3年もつぞ」と父親に発破をかけられたのですが、「三日三月三年(みっか、みつき、さんねん)」という言葉通り、寂しさも苦しさも、3年間耐えたら耐性がついたのかもしれませんね。

「ソロ活」を楽しむ気力が出てきた

夫が元気だったとき、仕事をがんばって、2人で年末年始やGWにパーッと旅行で散財するのが大きな楽しみでした。その頃は「2人もいいけれどひとり旅もしてみたいなぁ」なんて思っていましたが、本当にひとりになったらそんな気にもなりません。

背中を押してくれる子どもはおらず、仕事も趣味も充足感なく、時間をつぶしているだけ。そんな鬱々とした気持ちに喝を入れてくれたのが、“ソロ活”をテーマにした江口のりこさん主演の某ドラマです。

いろいろなことに挑戦しながらひとりの余暇を楽しむ淡々とした様子がとてもいい。「そうだ、私も残りの人生をこの人みたいにやってみよう」と思って、好きな俳優のファンクラブに入会し、人生初の推し活&エンタメライフがスタートしました!

初めてのひとりライブ参戦。小劇場での観劇。それから、ドラマのエキストラにも参加してみたり。改めてソロ活してみると、世の中ひとりで楽しんでいる人ってたくさんいるのです。

50〜60代ともなると体調が万全でなかったり、人知れず悩みもあると思うのですが、ささやかな楽しみを励みに積極的に動いている。仕事とは違う刺激を大いにもらいました。

無縁ではない「おひとりさまになる日」

世の中には、私のように配偶者に突然先立たれる人もたくさんいるでしょう。「おひとりさまになる日」は、だれにとっても無縁ではありません。

この寂しさや苦しみ、不安はいつまで続くんだろう、と考えると思うのですが、経験者としては、少なくとも、3年経ったら少しはマシになると言いたいです。これが自分の運命なんだと、多少受け入れる覚悟ができるというか。

人生、この先もなにがあるかわからないけど、自分で自分を励ましつつ、一緒にしのいでいきましょう。同じ思いの人はたくさんいますから。