大谷の新たな盟友となるベッツ(左)とフリーマン

最強チーム”ドジャースへ移籍した大谷翔平。注目はムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンとの「MVPトリオ」による史上最強打線。果たして大谷の「最適打順」は2番なのか、3番なのか?

半世紀以上にわたったMLBを見続けてきた大リーグ評論家・福島良一氏、日本語版公式「MLB.JP」の村田洋輔編集長、MLB中継の実況担当・DJケチャップ氏3人の共著『ドジャース大谷翔平を徹底解剖! MLBを100倍楽しむ本 2024年版』から一部引用・再編集して、大谷の「最適打順」について解説します。

大谷の打順は2番、それとも3番?

村田洋輔(以下、村田) 大谷選手の打順はおそらく2番。ベッツとフリーマンの間に入ると思います。

DJケチャップ(以下、ケチャップ) 僕も2番だと思います。大谷選手は走力がありますから、3番にする必要はないでしょう。

福島良一(以下、福島) いやいや、最初は1番・ベッツ、2番・フリーマンだと思いますよ。

ベッツは球界屈指のリードオフマンで、2018年レッドソックス時代に「30本塁打・30盗塁」を達成。ア・リーグ首位打者、MVPにも輝き、チームの世界一に貢献しました。

2020年ドジャース移籍後も、いきなりチームに世界一をもたらし、昨年はナ・リーグMVP投票2位でしたが、自己最多の39本塁打をマークしています。

守備でも、ゴールドグラブ賞に6度も輝いていて、外野以外に二塁、遊撃も守れる。まさに大谷選手も憧れるほどのオールラウンドプレーヤーです。

フリーマンは、パワーと走塁術を兼備する超一流の左打者。2020年はナ・リーグMVPに輝き、翌2021年にはブレーブスの世界一に貢献。昨年はドジャースで2番打者として打率3割3分1厘、球団新記録の59二塁打をマークしました。

打点は「キャリアハイ」も視野に入ってくる

この2人はメジャー最強の1・2番コンビです。だから、まずは「3番・大谷」にして、エンゼルス時代のように四球で歩かされることが多くなってきたときに、ベッツとフリーマンの間に入れるんじゃないかな。

いずれにしても、メジャー最強の1・2・3番。全員がMVP受賞歴のある選手ですから。

村田 3番を打つとしたら、出塁率の高いベッツとフリーマンが前にいますからね。2番だったとしても、打点は余裕で100を超えるでしょう。

福島 2023年のドジャースには、球団史上初の「100打点カルテット」が誕生したでしょう? だから、大谷選手もキャリアハイの打点(※1)は十分可能だと思いますよ。

※1……大谷の自己最多打点は2021年の100打点

村田 僕は、1番・ベッツ、2番・大谷、3番・フリーマンと予想しているので、後ろにフリーマンがいることによって、大谷選手への四球は格段に減る。そうすると、塁上にベッツを置いて、大谷選手が打つという場面が増えるでしょう。

ケチャップ やっぱり2番ですよ。フリーマンはギャップヒッター(※2)だから、二塁打をよく打つ。フリーマンが打席にいるときに、一塁走者に大谷選手がいれば、二塁打1本でホームに還ってくるもん(笑)。

※2……外野手の間(ギャップ)を抜く長打を放つ選手。本塁打の数と比較し、二塁打以上の安打数が多い

福島 いやあ、でも、やっぱりベッツとフリーマンの1・2番コンビはいいんだよなあ。打率的にいいんですよ。

ベッツは2018年に3割4分6厘で首位打者に輝き、昨年だって3割7厘。フリーマンはここ8シーズンのうち7シーズンが3割超えで、昨年は3割3分1厘ですよ。

ポイントは「左投手」に対する長打力

ケチャップ 打率のスタッツでいえば、まだ大谷選手はフリーマンの打率には及ばないかあ。

福島 加えてフリーマンは昨年、左投手に対し打率3割3分5厘、長打率6割9厘。大谷選手は多少、左投手に対しては長打力が落ちるんです。

ケチャップ じゃあ、投手の左右を気にしないフリーマンが3番でいいじゃないですか(一同笑)。

福島 いや、フリーマンには走塁も並外れた巧さがあるんですよ。大谷選手はスピードがありますが、フリーマンは昨季23盗塁して失敗は1つだけでした。

村田 足は全然速くないけれど、昨季のフリーマンは走塁のテクニックが上手でした。高確率でセーフになるシチュエーションを選んで走るタイプの走者ですね。

福島 やっぱり1番・ベッツ、2番・フリーマン、そして大谷選手の3ランで勝つ、というのが2024年のドジャースだと思いますよ。

メジャーでは過去に、チームにMVP4選手が居並ぶ「MVPカルテット」が誕生したことがありました。

たとえば、ドジャースでは2021年にプホルスが加入した際は、左の長距離砲で2019年MVPのコディ・ベリンジャー(※3)(カブスFA)、エースのカーショウ(ドジャースFA)らとともに4人のMVP選手がいました。

※3……2022年にドジャースから放出されたが、昨季はカブスで打率3割7厘、26本塁打、97打点。選手間投票のカムバック賞を受賞

プホルスが古巣カージナルスへ移籍した2022年にはフリーマンが加入して「カルテット」を形成しています。

しかし、今回のベッツ、フリーマン、大谷のように、前年にそれぞれア・リーグ、ナ・リーグのMVP投票で全員が3位以内(※4)に入った3選手が、同じチームで不動の1、2、3番を務めるなんて、前代未聞ですよ。

※4……ア・リーグでは大谷がMVPを獲得。ナ・リーグではアクーニャJr.がMVPを獲得し、2位がベッツ、3位がフリーマン

気になる本塁打数の予想と手術の影響は?

ケチャップ 大谷選手は今季、本塁打を何本打てると思いますか? 僕は40本だと思います。

福島 やっぱり、超一流スラッガーの証しである50本は狙うでしょうね。

村田 僕は右肘のトミー・ジョン手術のリハビリと並行してることを考慮して、術後1年目はあまり期待し過ぎないほうがいいと思います。

2018年に最初のトミー・ジョン手術を受けて、翌2019年の成績(※5)が目安になるのではないかと。

※5……打者としては106試合出場で打率2割8分6厘、18本塁打、62打点。投手としては2試合登板のみ

福島 当時に比べてバッティングの技術もパワーも向上しています。

ケチャップ いやいや、2019年は18本塁打でしょう。さすがに20本くらいでは終わらないよ。

村田 そうですね。2019年当時とはまったく別モノの打者になっているから、20本ということではないですが、30本でOPSが.900を超えれば、手術明け1年目としては十分じゃないかな。

ケチャップ あのドジャース打線に入ったら、打ちやすくはなる。ただ、ドジャー・スタジアムはピッチャーズパラダイス。ボールが飛ばないんですよ。

左打者に不利なドジャー・スタジアム

村田 いい打者が揃って点を取りまくっているから、あまりそういうイメージはないと思いますが、基本的には投手有利な球場です。


福島 そうそう。とくに左打者はね。右翼への場外本塁打は、スタジアムの開場以来1本しかないんですよ。

ケチャップ 右打者が左翼へガツーンとデカい本塁打を放り込んでいるイメージはあるけれど、右翼へデカい「ガツーン」はなかなか見られない球場ですね。ナイトゲームではとくに飛ばない。

福島 これまでドジャースでシーズン50本塁打をマークした選手は誰もいない。2001年ショーン・グリーン(※6)の49本が最多です。

だから、大谷選手には球団史上初の50本を打ってほしいんです。大谷選手のパワーなら、投手有利の球場でも関係ないと思います。

以前、ヤンキースのジャッジと話したとき、「自分はどこの球場でも本塁打を打てる」と言っていました。それがパワーヒッターの自信と誇りです。

※6……2000〜05年までドジャースに在籍した強打者。2001年に49本塁打を記録。4球団で15年間プレー。通算328本塁打、2003安打、OPS.850

(福島 良一 : 大リーグ評論家)
(村田 洋輔 : MLB.JP編集長)
(DJケチャップ : スポーツDJ)