【福井 求】あまりの快感に「感動」…TENGAの日英ハーフ社員が語る欧米展開で立ちはだかった「壁」

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「ハイテク」「高性能」「信頼できる」。そんなイメージが定着しているメイド・イン・ジャパン。テレビやエアコンをはじめとした電化製品をはじめ、さまざまなプロダクトが世界中の人々から高評価を集めて久しい。そんな日本製ブランドは、マスターベーションのシーンでも愛されている。

2024年現在、海外におけるTENGAカンパニー全アイテムの累計出荷数は約3400万個、最も有名なプロダクトである「TENGAオリジナルバキュームカップ」は140万本売れているという、セルフプレジャーグッズでは類を見ない売り上げを世界中で叩き出している。その要因は、もちろん品質の高さゆえだ。

では、実際にTENGAは海外ではどのような形で使用され・愛されているのだろうか。今回はTENGA株式会社(以下、TENGA社) 執行役員 兼 マーケティング本部 本部長のエディー・マークリューさんに、TENGAの海外進出とその実態についてお話を聞いた。

TENGAの気持ちよさに惚れ、入社を決意

エディーさんは来日18年目のイギリス育ち日英ハーフで、入社15年目のベテラン社員だ。日本に来日してしばらくした後、当時のTENGA社から翻訳業務を請け負うことになり、その際に初めてTENGAを手にしたそうだ。その時に、あまりの気持ち良さに感動してTENGA社に入社を決心したという。

「来日当初はTENGAのことをまったく知らなかったのですが、仕事を請け負うにあたって担当者より製品を頂いたので一度使ってみようというと思い、試してみました。それまでピンときてなかったプレジャーアイテムですが、あまりの快感に『なるほど!これは売れる!』と納得しました。その後、入社してからは翻訳業務と営業アシスタントから始まり、アメリカやヨーロッパを中心に宣伝やPRをするようになりました」

TENGAシリーズの海外輸出が始まったのは、創業3年目の2007年。創業すぐに海外展開をしなかったのには、日本での爆発的人気があったからだ。当時、アダルトグッズは5000個売り上げたら大ヒットと言われていたなか、TENGAは1年で売上100万本という偉業を達成。そこで「まずは日本での安定供給を図ろう」ということになり、日本で安定的に生産・販売できる体制を整えた。

また、海外にグッズを販売するときに課題となるのが、日本との法規制の違いだ。特に、肌に触れる極めてデリケートエリアにいる製品である以上、安全性の試験を繰り返したり、安全な製品であることの証明書を取得したりするなどしてメイド・イン・ジャパンの品質を担保し、さまざまな国への対応を行って海外進出を開始した。

TENGA社が2007年、タイへの輸出を皮切りに海外進出を始めて17年。2024年現在では世界73の国と地域で販売される大人気のプロダクトにになった。また、海外売り上げはTENGA社の全社売上高の半分を占めているなど、海外市場がTENGA社を支えていると言っても過言ではない状況だ。

欧米の「男らしさ」思想が大きな壁に

さまざまな国と地域でファンを獲得しているTENGAブランドだが、市場開拓における展開方法は国によって違うという。特に、欧米諸国ではマスターベーションへの固定概念が強いために市場の開拓が非常に難しかったのだとか。

2020年のTENGA社の調査では、アメリカの20〜30代男性の認知度がおよそ20〜25%、欧州各国の20〜30代男性の認知度が10〜15%と、現在でもまだまだ開拓の余地があるのが現状だ。

10年以上遡りますが当時欧米では、男らしさを重んじる思想“マッチョイムズ”が一般的な国が多く、マスターベーションはセックスができない“陰キャ”なダサい人間がすることという偏見が強かったです。おかげでPRをする上でも男性向けのメディアは強い抵抗感を示し、PRに非常に苦労したのが実情ですね。

男性は保守的な人が多いので、『マスターベーションをすることは普通のことだよ』という認識を改めるところから始めないといけないのが、拡大において苦労した点でした」

マスターベーションのマイナスイメージから男性向けメディアからの掲載を断られた一方、TENGAにいち早く注目したのは、意外にも女性向けのメディアだった。

後編『大ヒット「TENGA」が欧米で意外な使われ方をしていた…日英ハーフ社員に聞く、世界各国の「オナニー事情」』につづく。

大ヒット「TENGA」が欧米で意外な使われ方をしていた…日英ハーフ社員に聞く、世界各国の「オナニー事情」