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積算1万8003km 2025年から完全なBMW傘下へ

AUTOCAR英国編集部には、管理している車両へ誰が何日に乗ったのか、記入する表がある。スピード違反の反則金や、都市部などの通行料(通行税)の未払い請求が届く場合に備えて。

【画像】独立時代を締めくくる1台 アルピナD3 S ツーリング B3にB4、B5 GT BMW M3も 全154枚

もちろん、アルピナD3 S ツーリングの欄には筆者の名前が多い。長期テストの担当者だから。最新のBMW 3シリーズをベースに、アルピナが仕上げた最新版はどれほど素晴らしいのか、時間をかけて確かめる必要があった。


アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

ただし、初めの頃だけだ。ここ最近は、あまりステアリングホイールを握れていなかった。社内で向けられる視線は熱く、同僚が予定を抑えてしまうことが多かったのだ。

アルピナは、2025年から完全なBMW傘下のブランドになる。経営者のボーベンジーペン家は、電動化をはじめとする自動車技術の革新や、厳しさを増す環境規制と安全規制を考慮し、メリットとデメリットを天秤にかけ、BMWからのアプローチに決断を下した。

2025年以降のアルピナがどのようなビジネスを展開するのか、まだ具体的な発表はない。現在のモデルと同水準で特別な仕上がりになるのなら、偉業といえる結果になるだろう。少なくない同僚が、今のアルピナに乗っておきたいと考えても、当然といえる。

ゴムの薄さを考えれば、乗り心地は想像以上

D3 S ツーリングの土台には、BMW 3シリーズ・ツーリング、M340dがある。アルピナ独自の技術で、3.0L直列6気筒エンジンは15ps増しの360psへ上昇。最大トルクは、74.2kg-mへ高められている。

トランスミッションは、トルクコンバーター式の8速オートマチック。四輪駆動で、確実なトラクションを得ている。


アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

英国価格は、素の状態で6万6000ポンド(約1247万円)だが、長期テスト車には複数のオプションが載り、8万8265ポンド(約1668万円)になっていた。ミドルサイズのステーションワゴンとしてはかなり高額だが、それを納得させる内容にはある。

追加装備の中でも、95ポンド(約1万8000円)するインテリアのガルバニック仕上げと、290ポンド(約5万5000円)のアルミ製シフトパドルはとても好ましい。クラシカルなマルチスポーク・アルミホイールは、3420ポンド(約64万6000円)する。

このホイールは20インチと大きく、タイヤの扁平率は30と、信じられないくらい薄い。この足が、特有のドライビング・キャラクターを生む要素の1つになっている。

サスペンション・スプリングは硬めで、姿勢制御はタイト。ゴムの薄さを考えれば、乗り心地は想像以上に優れている。それでも、アスファルトの剥がれた穴や、センターラインのキャッツアイを踏むと、厳しい衝撃が伝わってくるけれど。

筆者はうかつにも、路面へ出来た穴を、これまで2度も通過している。一方は、鍛造ホイールのリムに傷を与えるほど強烈だった。タイヤがバーストしなかったのは、奇跡かもしれない。

ホームグラウンドのドイツで極上体験

D3 S ツーリングは、ドイツの滑らかなアウトバーンなら、270km/hでの疾走も快適にこなす。国内線の飛行機に乗る手間を省くために開発された、高性能ステーションワゴンだ。そもそも、英国の管理状態の悪い舗装を想定はしていない。

とある新モデルへの試乗が目的で向かった、ホームグラウンドといえるドイツでは、極上体験を与えてくれた。ニュルブルクリンク・サーキット方面へ伸びるアウトバーンには、速度制限のない区間がある。


アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

追い越し車線を250km/hで巡航しても、安定感は揺るぎない。遅い車両が視界に入ったら、一切の不安なしに速度を調整できる。そして、250km/hへ歯切れよく加速する。こんな走り方でも、燃費は平均で14.0km/L。圧巻の能力をまじまじと実感した。

陸上での長距離移動を、最小限に休憩を抑えつつ、最短時間でこなしたいなら、アルピナは最適だろう。どんな例より、理想的なモデルといえる。

やっぱりアルピナは、とてつもない

ドイツ以外の環境でも、D3 S ツーリングは素晴らしかった。フロントに大きなディーゼルエンジンを積み、車重は2020kgもあるが、その能力を最大限に引き出す方法を理解する、BMWとアルピナの技術によって生み出されている。

グレートブリテン島を走るなら、タイヤの空気圧は2.8barから2.4barへ落とした方が良いだろう。この空気圧なら、乗り心地の落ち着きは多少向上する。ステアリングのレスポンスも、僅かに下るのだが。ホイールへのダメージは、注意深く避けなければならない。


アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

シートは非常に快適。ダッシュボードなど、インターフェースのデザインも望ましい。ロータリー・コントローラーのほか、沢山のハードボタンが、運転中でも手の届きやすいポジションにレイアウトされている。

今回の長期テストでは、1万4500kmほど走行距離を伸ばした。アドブルーを1度補充したものの、エンジンオイルの補充は不要だった。平均燃費は17.5km/Lと、見事な数字を残してくれた。

最後まで、ストレスフリーだったといっていい。強いていえば、魅力のあまり、キーが自分の手元へあった時間が少なかったことくらい。やっぱりアルピナは、とてつもない。

セカンドオピニオン

正直なところ、自分はD3 S ツーリングへそこまで感動はしなかった。すこぶる速く安定していて、実用的ではあるものの、乗り心地は少々荒っぽい。

BMW M340dとの、明確な違いも感じられなかった。比較のため、B3 ツーリングを試乗してみたいと思った。 フェリックス・ペイジ(Felix Page)


アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)

テストデータ

気に入っているトコロ

ハードボタン:本物のボタンが随所にある。ダッシュボードだけでなく、ステアリングホイールにも。シートヒーターやエアコン、オーディオも、それで操作できる。
快適性:オプションの上質なレザーシートは、丁寧なステッチで素晴らしく快適。ランバーサポートもオプションだが。
ガラスハッチ:3シリーズ・ツーリングの特長はそのまま。リアシートと荷室は広く、テールゲートのガラスハッチが便利。
航続距離:ディーゼルエンジンは時代遅れかもしれないが、気を使えば燃費は18.0km/L。無給油で1000kmは走れる。

気に入らないトコロ

ブラック・コーディネート:ボディもホイールも黒。筆者の好みより、ダークすぎた。

走行距離


アルピナD3 S ツーリングと、担当者のマット・プライヤー

テスト開始時:3870km
テスト終了時:1万8003km

価格

モデル名:アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
開始時の価格:6万6000ポンド(約1247万円)
現行の価格:6万6000ポンド(約1247万円)
テスト車の価格:8万8265ポンド(約1668万円)

オプション装備

メリノ・レザー・インテリア:3800ポンド(約71万8000円)
20インチ鍛造ホイール:3420ポンド(約64万6000円)
レーザー・ヘッドライト:1870ポンド(約35万3000円)
ドライビングアシスタント・プロフェッショナル:1870ポンド(約35万3000円)
パフォーマンス・ブレーキ:1770ポンド(約33万4000円)
パノラミックサンルーフ:1550ポンド(約29万3000円)
パワーシート:1120ポンド(約21万1000円)
電動牽引バー:960ポンド(約18万1000円)
ハーマン・カードン・オーディオ:820ポンド(約15万5000円)
ブラック・サファイア塗装:800ポンド(約15万1000円)
駐車アシスタント・プラス:650ポンド(約12万3000円)
コンフォート・アクセス:560ポンド(約10万6000円)

カーボンファイバー・インテリアトリム:500ポンド(約9万4000円)
デカールセット:420ポンド(約7万9000円)
サンプロテクション・ガラス:380ポンド(約7万1000円)
自動防眩ミラー:310ポンド(約5万9000円)
シャドーライン・ライト:300ポンド(約5万7000円)
アルミニウム・シフトパドル:290ポンド(約5万5000円)
ハイグロス・インテリア:205ポンド(約3万9000円)
ランバーサポート:195ポンド(約3万7000円)
ドライブレコーダー:190ポンド(約3万6000円)
アコースティック・ガラス:190ポンド(約3万6000円)
ガルバニック仕上げコントロール:95ポンド(約1万8000円)

燃費&航続距離

公称燃費:14.5km/L
タンク容量:59L
平均燃費:17.1km/L
最高燃費:19.6km/L
最低燃費:15.2km/L
航続可能距離:1010km

長期テスト車のスペック

全長:4719mm
全幅:1827mm
全高:1440mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.8秒
CO2排出量:198g/km
車両重量:2020kg
パワートレイン:直列6気筒2993cc ターボチャージャー+ISG
使用燃料:軽油
最高出力:360ps/4000-4200rpm
最大トルク:74.2kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
トランク容量:500-1510L
ホイールサイズ:8.5Jx20インチ(フロント)/9.5Jx20インチ(リア)
タイヤ:ピレリPゼロ 255/30 R20(フロント)/265/30 R20(リア)

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:1100ポンド/月(約20万7000円/月)
CO2 排出量:182g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:16ポンド(約3000円/アドブルー)
燃料コスト:1361ポンド(約25万7000円/軽油)
燃料含めたランニングコスト:1377ポンド(約26万円)
1マイル当りコスト:0.16ポンド(約30円)
不具合:なし