胸が熱くなる…よかったね道綱!急な無茶ぶりに見事応えた、残念な子・藤原道綱と母のエピソード【光る君へ】

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「何を言っても通じない」「自分の名前しか書けない」などボロッカスに酷評され、大河ドラマ「光る君へ」でも残念な子として描かれている藤原道綱。

上地雄輔が演じる藤原道綱 ©NHK

妾腹とは言え、藤原兼家の子だからということでそれなりに扱われてはいるものの、他の兄弟姉妹に比べればその残念さは否めません。

その扱いには兼家と母(右大将道綱母。役名は藤原寧子)との夫婦仲も影響しており、新婚間もないころから寵愛を失っていたことも無関係ではないでしょう。

彼女と兼家の残念な結婚生活については『蜻蛉日記(かげろうにっき)』に詳しく書かれており、「偉い人になんか嫁ぐもんじゃない」と全編にわたって愚痴が繰り広げられています。

しかし、時には兼家が優しくしてくれたこともあり、道綱にもスポットライトが当たることもあったのでした。

母として、子供の晴れ舞台ほど嬉しいものはありません。

そこで今回は、道綱が晴れ舞台を飾ったエピソードを紹介したいと思います。

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本番はあさって。どうする道綱?

舞人(イメージ)

「え、明後日ですか?」

11月21日、道綱母子の元へ一件のオファーが舞い込みました。

賀茂の祭礼で舞を奉納する舞人(まいびと)として、参加してくれと言うのです。

聞けば舞人予定者がいきなり出演できなくなったとのこと。ケガレにでも触れてしまったのでしょうか。

誰か代わりを探していたところ、道綱に白羽の矢が立ったという訳です。

祭礼は11月23日。もう二日しか猶予がありません。

道綱「そんなの無r……もがもが」

母「お役目、喜んで承ります!ねっ、道綱?」

母としては、滅多にないお役目を引き受けて父・兼家の目に留まるまたとないチャンスです。

舞を恵子する時間が十分とれないとか、舞に着用する衣装がないとか問題は山積み。

それでもリスクを取らねばリターンは得られません。母は覚悟を決めて、道綱に舞人を引き受けさせたのでした。

諦めかけたその時!

右大将道綱母(画像:Wikipedia)

とは言え、なにぶん急すぎることで、舞も衣装も用意ができません。

道綱「どうしよう……」

母「何を弱気な!しっかりなさい。最後まで諦めなければ、必ずお天道様が見ています!」

気丈に息子を奮い立たせる母でしたが、舞はともかく衣装を用意する資金をどうしたものでしょうか。

困り果てていると、何と兼家から贈り物がありました。

兼家の書状「此度の大任につき、当家に恥をかかせぬように(意訳)」

相変わらず素っ気ない文章でしたが、書状には麗々しい舞人の衣装が添えられています。

これを見た母子は大喜び。もはや離婚状態に冷え切っていた夫婦仲でしたが、やはりどこかで好きだったようです。

書状の続き「当日は付き人なども手配してあるので、万事抜かりないように……(意訳)」

さぁ、ここまで気をかけてくれたなら、その期待に応えぬ訳には行きません。道綱は必死に舞を稽古し、人事尽くして天命を待つのでした。

エピローグ

こうして当日。道綱は美々しい衣装に輝きながら、舞人の大役を見事に果たしたのでした。

母「道綱、サイコーっ!」

当日は祖父・藤原倫寧(ともやす)も参列。普段なら身分が低すぎて相手にもされない彼が父兄枠で招待され、孫の晴れ姿に感激したことでしょう。

いつもみんなからバカにされていた息子が、あんな立派に立ち居振る舞い、みんなから憧れの眼差しを注がれている。母親ならば、涙せぬ者はいないはずです。

よかったね道綱。よかったね母上……他人事ながら胸が熱くなる一幕でした。

NHK大河ドラマ「光る君へ」でも、カッコよく舞人を務める道綱の姿を見られないものでしょうか。

このままでなくても、これをモチーフとしたエピソードを、とても楽しみにしています!

※参考文献:

川村裕子『平安男子の元気な!生活』岩波書店、2021年2月

トップ画像:大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより