―全国の5分の1の水道管が法定耐用年数超え、老朽化深刻で耐震化が急務―

 1月1日に発生した能登半島地震では、石川県や富山県で断水が発生した。被害の大きかった石川県では一時、最大で約11万3000戸が断水。その後復旧が進み、3月末までにほぼ解消されると言われているが、復旧まで多くの家庭で不自由を強いられることになった。

 水道は人々の生活に欠かせないライフラインだが、地震により継ぎ手で抜けてしまい断水が発生することがある。また、全国の水道管の5分の1が法定耐用年数の40年を超えているとされ老朽化も深刻だ。

 そうしたなか、2023年5月に厚生労働省の一部業務を他省庁に移管する厚生労働省設置法などの改正法が可決されたことを受けて、今年4月からは水道の整備が国土交通省に移管される。国交省は下水道を所管していることから、上下水道を一体的に担うことで、老朽化対策の改善が進めやすくなることが期待されており、水道インフラ関連にとっては商機拡大のチャンスとなりそうだ。

●日本の水道の現状

 現在、日本の水道普及率は98%を超えている。山地の多い国土の津々浦々に水道管網が張り巡らされており、その総延長は74万キロメートルに及ぶ。地球約18周半に相当する水道管が日本の地中に埋まっていることになる。

 一方、水道管路は法定耐用年数が40年とされ、法定耐用年数に達した水道管路の延長を表す管路経年化率(老朽化率)は全国平均で20%を超えている。その半面、水道管路の更新率は近年減少傾向にあり、20年度時点で0.65%にまで低下している。

 高度経済成長期に整備された水道管路が多く、その更新に遅れが生じていることや、多くの水道事業者は市町村が経営しているため小規模で経営基盤が脆弱であること、更に団塊世代の退職などによる職員数の減少などが理由とされている。これらは一朝一夕には解消されるものではなく、そのために更新が進まないとみられており、水道管路の老朽化は更に進むと懸念されている。

●耐震適合率42%にすぎず耐震化は急務

 今回の能登半島地震では、大規模な断水が長期化した。11年の東日本大震災では1週間で約5割が復旧、16年の熊本地震では1週間で約9割が復旧したのに対して、遅れが目立った。

 中山間地と都市部の違いもあるが、耐震化の遅れを指摘する声もある。厚労省が3月22日に発表した「水道事業における耐震化の状況」によると、全国の基幹的な水道管の耐震適合率は22年度末時点で全国平均は42.3%だった。能登半島地震で被害の大きかった石川県は37.9%だが、金沢市が61.1%と高いためで、例えば断水被害の大きかった七尾市は21.6%に過ぎない。厚労省では「地震に強い水道」を目指し、水道施設の耐震化の取り組みを進めているが、全国平均で半分に満たないのが現状であり、地震による断水は決して他人ごとではない。

●国交省への移管で更新加速に期待

 こうした状況に大きな変化を与えると期待されているのが、今回の国交省への上水道の整備や管理の移管だ。

 上水道の建設・管理に限らず、厚労省が所管する公衆衛生の施策は自治体を介して事務が執行されてきたため、厚労省の地方厚生局は、多くの道路や河川を直轄で管理する国交省の出先機関である地方整備局に比べて力不足との見方がある。これが移管により、国交省のインフラ整備のノウハウを生かし、また上下水道を管理する市町村に対して一元的に支援できるようになれば、老朽化対策も加速しそうだ。

 更に、政府が昨年6月に決定した「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)」による効果も期待されている。同プランでは、「ウォーターPPP」など多様な官民連携方式の導入を強く打ち出しており、官民連携による公共投資であるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)の拡大が期待されている。移管により、上下水道一体でのウォーターPPPが拡大すれば、関連企業のビジネスチャンスは広がろう。