うるさくバズワードが飛び交う世界で、ChromeのサードパーティCookieがまもなく終焉を迎える。この波乱の海を航行することは、壊れたコンパスひとつを頼りに濃い霧のなかで進路を定めることに似ている。そこは言葉が「文字通り」の意味を持たない世界だ。「テスト」や「計画」はしばしばホワイトボードに書かれた精緻な落書きにすぎないし、「真剣に取り組む」と言ったところで、会議室で数人が単に眉根を寄せて見せるだけの話である。親愛なる読者の皆さん、デジタル版婉曲表現の世界へようこそ。誰かが口にするサードパーティCookieに関する発言は、額面通りに受け取らない方がいい。その「真意」をご紹介しよう。

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誰かの発言
我々はChromeをあまりにも長く、あまりにも重く用いすぎた。
その意味は:我々はサードパーティCookie依存症だ。あたかもそれが究極の解決策であるかのように扱ってきた。いまこそその結果である目の前の現実と向き合い、この悪弊と決別するときだ。誰かの発言
サードパーティCookieの代替技術のテストに関しては、多様なアプローチを試みている。
その意味は:何がうまくいくのか分からないので、とりあえずあれこれ試行錯誤している。しかしそれも仕方のないことだ。なにしろサードパーティCookieに代わる魔法のようなソリューションを見つけることは、砂の山から一粒の金を探し出すようなものなのかだら。誰かの発言
サンドボックスのテストはもどかしい。
その意味は:サンドボックスのテストは持ち手が半分欠けたシャベルで砂の城を作るようなものだ。誰かの発言
Cookie廃止後のトラッキングソリューションについては、さまざまな選択肢を検討している。
その意味は:駄菓子屋を集団でうろつきながら、虫歯にならない飴はないものかといろいろな味のキャンディを試す子どもたちとなんら変わらない。誰かの発言
広告主たちはサードパーティCookie廃止の深刻さをようやく理解しはじめた。
その意味は:広告主たちは洞窟のなかから外をのぞき見て、「とうとう変化の流星群が降ってくる。雨の日のパレードみたいに何もかもが台無しだ」と、いまさらながらに実感している。誰かの発言
そもそも、サードパーティCookieはそれほどたいしたものではなかった。
その意味は:我々はサードパーティCookieにしがみつく。テーブルに残されたピザの最後のひと切れにしがみつくように。しかし、そのひと切れはもう何時間もそこに放置され、ほかの人々の関心はすでに新しく運ばれてきた別の皿に移っている。誰かの発言
我々は多くの問いを抱えたまま、未知の世界に飛び込もうとしている。
その意味は:基本的に、頭を使う仕事はエージェンシーに丸投げする。天才的な解決策を持ってこなければ、彼らの首を切るだけだ。誰かの発言
プライバシーサンドボックスは外部サイトへの広告配信で競争上の優位性となるデータを排除することにより、競争条件を公平化する。
その意味は:プライバシーサンドボックスはきれいにラッピングされたGoogleへの贈り物だ。あの煩わしいサードパーティCookieがなくなれば、Chromeブラウザを支配するGoogleの言うなりだ。誰かの発言
広く普及したサードパーティアドレサビリティにとって、2024年はひとつの転換点となる。
その意味は:今年もまた、混沌と混乱の年、そしてデッドラインが自由意志を持つかのように動く年になるだろう。誰かの発言
Cookieはほろほろと崩れつつある。
その意味は:「Cookie」は瓶(びん)の底に残ったクッキー同然だ。そもそも堅実な技術でも信頼できる技術でもなかった。現代のウェブ計測の要求を支えるにはあまりに脆(もろ)く、むしろパンくずに近い代物だ。誰かの発言
我々は特定のIDに依存しない。
その意味は:我々は特定のIDを特別扱いしない。それは馬を見ずに馬券を買うようなもので、リスクが高すぎる。代わりに、トーストの隅々までピーナツバターを塗るように賭け金を広く分散して、そのうちどれかが当たればよいと期待している。誰かの発言
プライバシーサンドボックスはすべてのユースケースに対応しているわけではない。
その意味は:怪しげなプロファイリング術やターゲティング術がぎっしり詰まった古い「戦術袋」が死ぬほど懐かしい。誰かの発言
真の問題はサードパーティCookie不在の効果測定であって、ターゲティングではない。
その意味は:サードパーティCookieの黙示録的終末が迫るいま、マルチタッチアトリビューションも風前の灯火と言っていい。誰かの発言
Googleはプログラマティック広告のオークションをブラウザに移行しようとしている。
その意味は:基本的に、Googleは自社のブラウザの運命と広告業界の激変を一蓮托生にしようとしている。誰かの発言
サードパーティCookieに関する限り、Googleから率直な回答を得るのは現時点では難しい。
その意味は:Googleのブラウザチームとビジネスチームのあいだの地雷原を進むようなものだ。それは一種の縄張り争いで、透明性が巻き添えを食ったかに見える。[原文:Chrome chaos: Unraveling the language of the third-party cookie demise]Seb Joseph(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)