経営難に陥っているヘアケア企業であるオラプレックス(Olaplex)の新CEOアマンダ・ボールドウィン氏は、2月29日に行われた2023年度第4四半期決算説明会にて、新たなビジョンと軌道修正戦略について語った。

同社前CEOであるジュイ・ウォン氏が2023年10月に退任したあと、スーパーグープ(Supergoop)の前CEOであるボールドウィン氏が同年12月中旬に最高経営責任者に就任した。ボールドウィン氏が、在任中の同社の状況や、自身のアプローチと計画について決算説明会で公に語ったのは今回が初めてだ。

全体として、2023年度第4四半期の純売上高は前年同期比14.5%減の1億1170万ドル(約167.7億円)で、プロフェッショナルチャネルは22.7%減の4250万ドル(約63.8億円)、D2Cチャネルは2.8%減の4200万ドル(約63億円)、専門小売チャネルは16.3%減の2730万ドル(約41億円)だった。2023年度の売上高は4億5800万ドル(約687.5億円)で、前年比で約35%減少している。

決算説明会でボールドウィン氏は「逆風は、ビジネスがあまりにも急成長しすぎたことで実行ミスに苦しみ、プロスタイリストのコミュニティへのサポートや優れた能力とブランドマーケティングの開発、カテゴリークリエイターに起こりがちな現実、すなわち競争の激化に備えるために必要とされていたリソースに対して適切に投資しなかった結果だと考えている」と語った。

再建のための3つの優先事項



ボールドウィン氏は3つの優先事項を挙げた。まず、需要を喚起するためにオラプレックスの販売、マーケティング、教育への投資効果を最大化すること。次に、将来を支える能力と文化の強化。そして3つ目は、ブランドの長期的なロードマップと将来ビジョンの策定である。そのために、オラプレックスはプロフェッショナル流通に向けたサロンでのサポートを強化し、より多くの対面展示会に参加、スタイリストへの新しい教育ツールを発表した。また、専門小売店のビジュアルマーチャンダイジングを強化し、新たな小売店との提携を制限するほか、横流し商品を扱う小売業者を厳しく取り締まる計画もある。

オラプレックスはセフォラ(Sephora)、アルタビューティ(Ulta Beauty)、ブルーマーキュリー(Bluemercury)、Amazonで販売されている。2023年12月にパイパーサンドラー(Piper Sandler)が発表したプロスタイリストの調査によると、正式な販売提携がないにもかかわらずオラプレックスの商品が置かれているウォルマート(Walmart)やウォルグリーン(Walgreens)のような小売店は、ブランドの評判に影響を及ぼしており、サロンで提供されるよりも手頃な価格で商品を購入したいという顧客の欲求をかき立てていると、スタイリストらは話す。

さらにボールドウィン氏によると、オラプレックスは市場機会を明確にし、プロのスタイリストに焦点を当てたブランドアイデンティティを洗練させ、プロダクトイノベーションで需要と市場シェアを獲得し、さらにグローバル展開の機会を追求することを望んでいるという。注目すべきは、オラプレックスが2月下旬にニコール・ハンディ氏を新たなイノベーション担当バイスプレジデントに採用したことだ。決算説明会でボールドウィン氏は、潜在的な商品の品揃えや価格戦略、カテゴリーの強化や拡張の可能性についてアナリストから質問されたが、それに対しては口を閉ざしたままだった。

「目標は、長期的な戦略計画と財務的な枠組みを確立することであり、詳細については適切な時期にお知らせできることを楽しみにしている」とボールドウィン氏は語った。

ブランドアンバサダー拡充や挑戦的なソーシャルキャンペーンを実施



オラプレックスの売上高は減少を続けており、このボンドビルディング(毛髪内部の壊れた結合を修復する)分野のプレステージブランドがまだ底を打っていないことを示すとともに、これまでの努力が売上減少を食い止めることがほぼできていないことを物語っている。直近では、2月上旬に同社はブランドアンバサダーを拡充し、4人の新人を起用、ブランドとプロスタイリストコミュニティとの関係を軌道修正しようと試みている。

2023年9月には、オラデュープ(Oladupe)という挑戦的なソーシャルキャンペーンを開始。オラプレックス独自の処方とプロダクトイノベーションに真の類似品は存在しないということを人々に思い出させることで「デュープ(コピー品)を推奨する人を出し抜く(dupe the dupers)」ことを目指した。その前年、オラプレックスはメタバースプラットフォームのディセントラランド(Decentraland)に参加し、前CEOのウォン氏は「私たちのコミュニティを表現し、つなぎ、拡大する」とGlossyに語っている。

2024年のマーケティング予算は、2023年の6050万ドル(約90.7億円)から増加し、6600万ドル(約99億円)から7000万ドル(約105億円)に拡大。2024年度決算の売上高予想は4億3500万ドル(約652.4億円)から4億6300万ドル(約694.4億円)で、前年比で5%の減収から1%の増収となる。

すべての施策が完全に機能するには時間を要する



J.P.モルガン(J.P. Morgan)のアナリストであるアンドレア・テイシェイラ氏は「経営陣は2024年度通期の見通しを発表したが、情報が公にされる前の予想レンジの上限がストリート予想を下回ったことに失望した。弱気な見通しが発表されることは我々も事前に予想していたが、その規模は想像以上だった。ほとんどの投資家が、次期CEOのアマンダ・ボールドウィン氏がビジョンを実行することで、業績がリセットされることを期待していたにもかかわらず、である」と話した。

オラプレックスのCFOを務めるエリック・ティツィアーニ氏は決算発表会で、この見通しは商品需要の安定化、ブランドの長期的強化、売上高成長への回帰という目的に沿ったものであると説明した。この見通しは、年末の新商品発売、新しいブランド施策とマーケティングキャンペーン、ホリデー商戦の上昇に関連し、「今年のバランス」のなかでそれが実現することを示唆していると同氏は続けた。

「私は、ブランドがどうあるべきかについて非常に楽観的であると同時に、我々の日々の活動を改善させることについては、とてつもない危機感を持っている。だが実際には、すべての詳細を正しく理解するためには、慎重かつ体系的なアプローチを取ることが重要であり、それには時間がかかる。可能な限り迅速に取り組んでいることを確かめるのは重要だが、すべての施策が完全に軌道に乗るまでには少し時間がかかる」とボールドウィン氏は話した。

[原文:New Olaplex CEO Amanda Baldwin shares turnaround strategy as 2023 net sales decline 35%]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida、編集:都築成果)