人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている54歳のRitaさん。SNSでも留学生活を紹介し、人気です。そんなRitaさんが、スペインで過ごしてみて、日本とは違うと思った「電車内」での行動やルールについて教えてくれました。

スペインの公共の場で感じた日本と違うところ

スペインで生活を始めてから、ところどころで感じる「日本と違う習慣」。最初はたまたま見かけたその人だけの個性かと思っていたものも、次々同じようなシチュエーションに出会い、国民性による違いであることに気づいてきました。電車やバスの乗物でも、日本の当たり前はスペインではあてはまらず、お互い快適に過ごすために気持ちのり替えも必要です。

【写真】スペインの電車内の様子

スペインでは電車内でも自由気ままに過ごす

スペインの公共の場では、日本のような「周りの人に迷惑をかけないように静かに過ごす」よりも「各々が快適に今を楽しむ」ことが優先されているように思います。地下鉄やバスでも、電話をしながら乗る人、音量高く音楽を楽しむ人、モグモグと食べる人、読書する人…と自由度満載です。

例え、電話の会話が丸聞こえでもだれも不愉快な顔はせず、また話している本人も恥ずかしがらずにその場で泣いたり笑ったり。そしてとても賑やかに会話しているので友達なのかと思ったら、たまたま隣の席に座った人だったという光景も。とにかく人懐っこいスペイン人の気質がどの車内にも溢れています。

また、地下鉄内にはアマチュアパフォーマーも多くおり、マイクとスピーカーを持参して電車に乗り込み本格的に歌う人、ギターや民族楽器を奏でる人、ダンスやラップを披露する人など、次々と賑やかなパフォーマンスが見られます。治安を気にしてかもしれませんが、賑やかさも相まって、日本の電車内のように眠っている人はほとんどいません。

電車のドアは自動的に開かない

地下鉄(メトロ)も国営鉄道(レンフェ)も、乗り降りする扉は自動的には開きません。利用者が扉にあるボタンを押すかレバーを引き上げることで、1つずつ開きます。

私は慣れるまではボーっと立ち尽くしてしまい、後ろの乗客が手を伸ばして開けてくれたことが何度もありました。子どもがボタンを押したがるのをみんなで待っていたり、レバーが硬めの時は乗客が代わる代わる試すことも良くある光景です。

寒さ対策・防犯対策とも聞きますが、地元のコミュニケーションが垣間見れる一瞬で、ほのぼのした気持ちになります。ちなみに、閉める時は手動ではなく車掌室の操作で一斉に閉まります。

電車の混雑時は降りることをしっかり意思表示する

通勤時間帯やイベント時などの電車・バスの扉近くは大変混雑します。そのため、自分が降りたい駅が近づいてきたら「あなたは降りますか?」と周りの人に確認をして、次に降りる予定であることをしっかり意思表示しないと、だれも動いてくれずに降り損ねてしまうことがあります。

仮に「私降ります!」と伝えても「はい、どうぞ」と思われるのみなので、「降りますか?」と周りに聞いてあげる方が「自分は降りないから場所をあけなければ」と思ってもらえて効果大なのだそうです。

日本のようにドア近辺にいる人は一度降りて、降りる人が全員降り終わったらまた乗るという習慣はありません。

乗車料金は地域ごとに一律で決まっている

マドリードの地下鉄13路線は一つの会社が運営し、同じ地域内ならば1駅乗っても10駅乗っても同じ料金です。観光名所が集まる中心地はAゾーンと呼ばれ、このAゾーン内ならばどこで何番線に何回乗り換えても料金は変わりません。

日本のように路線ごとに事業者が変更しないため、1回入場した後の乗り換えはすべて改札内です。そのため、駅ごとに料金が指定される切符ではなく、Aゾーン乗り放題のチャージカードを利用することになります(1回券、10回券、1か月券等)。このカードは、地下鉄(メトロ)・国営鉄道(レンフェ)・公共バスが共通で乗車できる種類もあり、現在は1か月乗り放題で21.8ユーロ(3,490円程)です。

金額はコロナ救済措置以来通常の半額設定となっており、毎日利用する人達にはお得感があります。なお、同ゾーン内は乗り放題で「〇〇駅からXX駅まで」という料金体系がないマドリードには通学・通勤定期券の概念がないため、通勤費が支給される話はほとんど聞きません。

時刻表は「間隔」表示のみ

地下鉄もバスも運営時間は朝6時ごろから深夜1時半ごろまでです。そこは日本と近いです。ただ、時刻表はざっくりとしていて、例えば10時〜12時は4分〜5分間隔、16時〜21時は3分〜4分間隔など簡単な一覧表があるのみです。

駅のホームや大きめのバス停には「あと〇分で到着」という電光掲示板があり、これはほぼ正確のようです。地下鉄の隣駅は比較的近く、乗車時間は2分程度です。

スペインは地域により地下は遺跡の宝庫で、地下鉄を掘り起こすことすらできないところがあると聞きます。世界遺産大国ならでは、残された史跡を守りながら築き上げていく近代の交通網。この新旧融合した環境に、いつの時代でも自由奔放でゆったりした気質のスペイン人が、快適に過ごせる習慣が根づいています。