Image: Bloomberg / Contributor (Getty Images)

株主とか社会への脅しでもあるような。

2024年も何かとお騒がせなイーロン・マスク氏、Teslaでは株の持ち分比率と自身の報酬をめぐってバトル中です。今週、Tesla株の持ち分を現在の13%から25%に増やせなければ、AI・ロボティクス系事業は他でやった方がマシ、と脅しをかけてきました。

マスク氏はTeslaから給与の代わりに株式を報酬として受け取っているので、言い換えれば取締役会に対し「もっと給料くれ」と言ってるのです。

「私が25%の議決権を持たないまま、TeslaAIとロボティクスのリーダーへと育てることには納得いかない。影響力を持つのに十分だが、覆せないほどではない」とマスク氏はツイート。「そうじゃない限り、Teslaの外でプロダクトを作るほうがいいだろう」。

報酬をめぐる裁判の最中

マスク氏は他のTesla株主から「報酬が高すぎる」として裁判を起こされてます。マスク氏としては、今後成長が見込めるAIやロボットを人質にすることで、裁判を有利に進めようとしてるように見えます。

報酬に関する裁判はふたつあって、うちひとつに関しては2023年7月、マスク氏と他のTeslaの取締役が7億3500万ドル(約110億円)を会社に返納することで和解しました。Teslaの取締役会は、2021年から2023年は役員報酬を受け取らないことにも合意しました。

ただもうひとつの裁判はまだ判決が出ていません。マスク氏は以下のようにポストしています。

ただしTeslaの取締役会は素晴らしいと言っておきたい。新たな「報酬プラン」が存在しない理由は、デラウェアでの役員報酬を巡る判断を待っているからだ。裁判は2022年だったが、判決はまだ出ていない。

言い換えれば、株をくれるかくれないかが決まらないのはTeslaの取締役会のせいじゃなく、裁判のせい、早くしろってことなんでしょうか。裁判の原告は別のTesla株主なので、TeslaがAIから撤退することになって株価が下がったり利益を逃したりするのは本意じゃないはずです。マスク氏の脅しに屈して、和解を急いだりするんでしょうか。

ただマスク氏のTesla株が(彼にとって)不十分なのは、本人の責任でもあります。Twitterを買収するとき、世界一のビリオネアといっても440億ドル(約6.5兆円)の買収額はさすがに大金だったので、Tesla株を売らなきゃいけなかったんですね。それでもマスク氏は今もTesla株の13%を保持していて、最大の株主です。

ちなみにこのマスク氏発言の前からTeslaの株価は下がり基調だったんですが、記事翻訳時点では暴落もしなければ上昇に転じてもいないようです。この件に関し、米GizmodoからTeslaにコメントを求めましたが、すぐには回答がありませんでした。

次なる柱はAIに

Teslaの中でAIはすでに大きな部分を締めていて、マスク氏は自動車事業を超えるだろうと予測しています。AIの一番わかりやすい例が、Tesla車の自動運転機能です。でもマスク氏の言葉を信じるならば、今後は自動車だけじゃなくロボット事業もどんどん伸びていくことになってます。

上のツイートに先立って、マスク氏はTeslaの人型ロボット、Optimusがシャツをたたんでいる動画をポストしていました。ただその動画、ぱっと見ではわかりにくいんですが、Optimusは自律的に動いてるんじゃなく、後ろで操作してる人がいます。マスク氏自身もあとからそれを認めてはいますが、ちょっと盛り気味ですね。

そもそもOptimusは、2021年にデビューしたときから本気なのかどうか不安なロボットでした。全身タイツの人間にロボットのフリをさせて、ロボットと言い張ってたんですから。

でもその後は、千鳥足だけど二足歩行してたり、より繊細な動作もできるようになったり、開発は進んでいるようです。マスク氏は、Optimusが「最終的には自動車事業よりも、完全自動運転よりも価値が高まる」とビジョンを語っています。

マスク氏がTeslaのAI・ロボット事業撤退をちらつかせたことは、CEOとして法的責任を問われる可能性もありますが、X上のマスク氏ファンたちはおおむね好意的。マスク氏が扇動する新自由主義的な集団は、AIの意識高くなりすぎて彼らの思想を排除するのではと恐れているのです。マスク氏はTeslaの支配を強めて、ますます自身の思想に染めていきたいんでしょうか…。