日本一売れてる!? ホンダ「新型軽ワゴン」なぜ不動の1位? 大人気すぎる「N-BOX」12年間支持される理由とは

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3世代の「N-BOX」に共通するイメージは「何でもできる箱」

 2011年の初代発表から約12年が経過した2023年10月、ホンダは3代目となる新型「N-BOX」を発売し、デビュー早々から好評な販売状況を示しています。
 
 これまでもN-BOXは、各社からライバルモデルが次々と登場するなかで長年にわたり軽No.1の人気を維持してきましたが、変わらずに愛され続ける理由は一体どこにあるのでしょうか。

写真は2023年10月に発売を開始した3代目のホンダ 新型「N-BOX」

 ホンダの「N」シリーズは、歴史をたどれば1967年に登場したホンダ初の量産軽乗用車「N360」から連綿と続く、ホンダ4輪車の第一歩のようなものです。

【画像】「えっ…!」これが新旧「N-BOX」の違いです! 画像で見る(50枚以上)

 改めてホンダのウェブサイトをのぞいてみると、元々のホンダのNは「NORIMONO(ノリモノ)」の「N」なんだとか。

 それが時代を経て「New」「NEXT」「NIPPON」「NORIMONO」と、いろんな“N”の意味付けがなされ、初代N-BOX登場時のキャッチフレーズとして使われました。

 これ、なかなかのインパクトの高さでしたよね。

 元々ホンダというメーカーは「ないものを作ろう!」という、チャレンジングな精神が真骨頂なのではないかと、昔から勝手に思っているのですが、かつての昭和の「N」シリーズも、平成の「N」シリーズも、まさにそんなエネルギーがみなぎった存在なのではないでしょうか。

 というわけで平成のNシリーズですが、「N-WGN」や「N-ONE」「N-VAN」など、かなりのバリエーションが存在します。

 その中で最初に登場したのが、2011年12月発売の初代N-BOX。そしてこのパイオニアこそが、Nシリーズの中でもいちばん存在感が高いように思います。

 形状は、今や軽自動車の中でいちばん人気が高い「スーパーハイトワゴン」カテゴリーに属します。

 ライバルが多い中でも、初代N-BOXは飛びぬけて四角さが強調されているのが最大の特徴です。

 イメージは「何でもできる箱」という感じでしょうか。

イメージは「何でもできる箱」! 強烈なインパクトを残した初代ホンダ「N-BOX」(2011年-2017年)

 初代は特に上方までキッチリと四角さが強調されていて、全幅に制約のある軽自動車の割に安定感がきちんと表現された鮮烈なデザインだったのを今でも覚えています。

 もしかすると、箱型のミニバンをたくさんリリースしているホンダデザインならではの秘密が詰め込まれているのかもしれませんね。

 そしてこの外観のデザインは今回の新型(3代目)に至るまで、そんなに大きな変化がないのもまた特徴なんです。

見た目は「キープコンセプト」でも「乗るとベツモノ」な新型N-BOXの秘密とは

 特に2代目(先代)と3代目N-BOXは、大げさにいえばほぼ「間違い探し状態」というくらいにイメージを受け継いでいます。

 でも人気があるデザインだったら、とりわけ変える必要がないともいえます。

 事実、N-BOXは2代目のモデル末期でも、販売の勢いがあまり落ちていませんでしたから、あえて変える必要はない、というのも納得の話です。

 さらに3代目は、インパネまわりがグッとすっきりした以外、インテリアもビックリするほどの大きな変更がないのも特徴と言っても良いのかもしれません。

左が2代目「N-BOX」(2017年-2023年)、右が3代目の新型「N-BOX」(2023年-)

 通常、軽自動車のフルモデルチェンジともなると、なにかしら新しい装備が登場することが多く、中には、確かにこれって今まで考えつかなかったけど「あったら便利かも!」というような、飛び道具的な新装備が盛り込まれてきたりするのを見るのも、楽しいものなんです。

 ところが、3代目N-BOXはそういうものを一切盛り込んでこなかったので、これもある意味「新しい形のフルモデルチェンジ」といってもいいのかもしれません。

 とはいえ、見た目はほぼ同じ、プラットフォームもパワートレインも同じで「いったいどこが変わったの?」と突っ込みたくなるくらいですが、実際に新型N-BOXへ乗ってみると、これがまったくの別物なことに驚かされます。

 どうやら、工場の組み立てレーンレベルで行うような、基本中のキの字のようなところ、要は組み立ての仕方のようなものが進化しているらしいのですが、やはり根幹(体幹?)が安定するとクルマって違うものなんだということを、まざまざと見せつけられたような気がしました。

 よく「〇〇と△△はプラットフォームが同じなのに何が違うのよ?」的な話がありますが、実はいちばん違いが現れるのはボディの「下ごしらえ」だと聞いたことがあります。

 共通のホワイトボディを受け取ってから、スポット増しなどで強化するなど、いかに仕上げていくかで出来上がりがまったく変わってくるそうなんです。

 これって例えば、肉じゃがを作るのにただ皮をむいて煮込めば煮崩れてしまうのを、キッチリ面取りして煮込めば、料亭で出てくるようなまったく煮崩れていない肉じゃがができる、なんていう「丁寧な下ごしらえ」と同様なのかもしれません。

 N-BOXの売れてる秘密って、実はそこにあるんじゃないのかと思う訳です。

 ふと冷静に考えると、他の軽自動車にできなくて新型N-BOXにしかできないことといえば、センタータンクレイアウトの採用による、リアシートの座面チップアップ機構くらいなんですから。

 他は各社が切磋琢磨を繰り返しながら、限られたサイズの中で使い勝手のブラッシュアップを常に重ね続けている状態。

 それよりも「とりあえず箱」、ユーザーさんが自由にアレンジできる“箱”を提供しますから、皆さん自由に遊んでくださいと、投げかけられている気がするのです。

 そして、ホンダ側ではきちんと走らせることと安全性は担保しますから、あとはご自由にどうぞ……というような「あえて狙った緩さ」が、ユーザーからウケているんじゃないかと思うんです。

 こうした狙いの成否については、これから1年後くらいに3代目N-BOXの販売結果が示されることで、再びはっきりと見せてくれることでしょう。