人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気の発症を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている54歳のRitaさん。今回はスペインのマドリードで過ごす年末年始の楽しみ方について教えてもらいました。

スペインの年末年始の楽しみ方6選

今年初めて過ごすスペイン・マドリードの冬。最低気温1〜2℃の毎日がどんなに辛いものなのか正直ビクビクしていましたが「スペインでいちばんおすすめな季節は冬かも」と思えるほど、連日魅力的な場面に遭遇しています。

街はすべてがクリスマス仕様となり、あふれるほどの光が一晩中交差。そして気温がいくら下がっても、心から冬を楽しもうとしている人たちが楽しげに行き交い、その活気ある姿は寒さを忘れさせてくれる光景です。
そんなスペインの冬の楽しみ方を紹介します。

●1:夜散歩を楽しむ

11月に入るとクリスマスマーケットやアイススケート場が仮設され、そしてイルミネーションのスタートは11月下旬です。市内の光は芸術家や建築家の意見が取り入れられたデザインで、夜景を巡るための専用バス「Navi Luz」が走るほど。このバスは、イルミネーションが始まった翌日から運行を開始し年明けまで続きます。18:00〜21:50の間に10分間隔で出発し、大人1名7€(約1100円)で所要時間50分程のルートを満喫できます。既にこの冬何度も見かけていますが、いつも満席で人気です。

メイン通りの混雑に疲れたら、脇道に入っても落ち着いた光は続き、まるですっぽりと星の国に入った感覚になれるのが、夜散歩の魅力です。

●2:アートを楽しむ

マドリードには美術館・博物館などの文化施設が1500館あると言われていますが、冬は入場者が少ないため、いつもは屋外に長蛇の列ができる有名美術館も、比較的スムーズに入ることができます。館内はもちろん暖房完備。混雑時だと人気の絵画前は大勢の人が集まりますが、世界有数のコレクションでも自分のペースで想いを寄せることができます。クリスマスモードに飾りつけられた施設も多く、この時期ならではの美しさが感じられます。

●3:冬ならではの食事を楽しむ

スペイン料理は体の温まるメニューも多く、コシード・マドリレーニョ(煮込み料理)、カルロッソ(ネギ焼き)など、冷えた身体だからこそ食べたくなるものがそろいます。そして冬限定の屋台は気温が下がれば下がるほど、長蛇の列。焼き栗、焼きイモ、トウモロコシ…冬しか見かけない食べ物にひとつずつチャレンジするのも楽しみ。寒がりな私が「もうちょっと寒くなったら食べよう!」と寒さを待ちわびるようになりました。

●4:南方面へ小旅行を楽しむ

寒さから逃げたい方は、スペイン南部への旅行もおすすめです。南側のアンダルシア州は、地域差があるにしても12月の平均気温は12〜15℃ほどで、過ごしやすい気候です。私も昨年までは、アンダルシア州のマラガに在住し、冬の間はアンダルシア州より北には行かないように過ごしました。そして年末年始には更に南下したカナリア諸島へ足を伸ばし、半袖で年越しをすることに。カナリア諸島はアフリカ北西部に位置し12月でも海水浴が可能で、各国から避暑地として訪れた人達で大にぎわいでした。寒さで縮んだ背中も夏の日差しですっかりリフレッシュできます。

●5:年末のイベントを楽しむ

12月24日〜25日は「家族が集まる日」。日本のように恋人同士で過ごす日ではなく、家族優先で大人数でテーブルを囲む日です。

また、大みそかの12月31日には、日付の変わる0時に鳴る12回の鐘の音に合わせてブドウを食べ、全部食べきると縁起がよいとされています。この「12」という数字は新年の12か月を表しています。
習慣の由来は2つあり、1つめは、1909年、アリカンテでブドウが大豊作で余り、生産者が売り込むために「大みそかにブドウを食べると幸運になる」とプロモーションをしたという説。2つめは、上流階級にブドウとシャンパンで年末年始を祝う習慣があり、徐々に一般的に広がったという説です。

一見簡単そうですが実際試してみると、3秒に1度鳴る鐘の音が想像以上に速いのです! そのため食べきるのは至難の業。小さめのブドウを用意したり、タネなしを用意したり、食べきれるように工夫をする人もいるようです。皆でキャーキャーしながら頬張ることがビッグイベントとなります。

●6:クリスマスより盛り上がる「東方三賢人」の日を楽しむ

冬イベントの最後は1月6日の東方三賢人の日(Los Reyes Magos/東の占星術師3人がキリストの誕生時にラクダで現れ、黄金、乳香、没薬を贈ったとされる日)。1月5日はパレードが行われ、夜は三賢人がサンタクロースのように子どもたちへプレゼントを配る催しです。スペインではクリスマスよりこの東方三賢人の日が重要とも言われ、イルミネーションもこの日まで続きます。プレゼントも12月25日ではなく、この東方三賢人の日にあげることが一般的。つまりクリスマスプレゼントは、サンタクロースではなく東方三賢人が持って来てくれるという考え方になります。

寒空で気温が下がっても、楽観的な国民性のおかげで、暗さも辛さも感じないのがスペインの冬の特徴です。そして太陽と外が大好きで、どんなに寒くても遅い時間でもテラス席でワイワイ。毎年冬はできるだけ動かずに、おとなしく過ごすのが定番だった私。それが今年は、通りを見に…笑い声を聞きに…冬のマドリードをしっかり楽しまなくては! と、重ね着をしながら毎日出かけているのですから不思議なものです。