日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「もっとお互いの望みが通じるように話し合いがもてれば違う結果になっていたかも」と話すのは、景子さん(仮名・50代)です。3人の子宝にも恵まれて、傍からみるとすごく仲がよさそうなご夫婦ですが、じつは10年もレス状態。その原因は夫の酒ぐせでした。

お酒を飲むと人柄が激変。若いから仕方ない?

穏やかな瀬戸内海を望む広島県某市の一戸建てにお住いの景子さん夫婦には、現在22歳、17歳、12歳になる3人の男の子がいます。自動車メーカーに勤務する夫は、営業職。忙しいながらも休日に子どもたちを連れてキャンプへ出かけることも多いといいます。

「行動力があって、ポジティブなところが好きだった」と過去形で話す景子さん。じつは結婚した25年前からずっと悩んでいたことがあるといいます。それは夫のお酒の問題です。

●寝不足でも夫の求めに応じた日々

「完全にストレスのはけ口が性欲になってしまうタイプなんですよね。お酒を飲むとそれが一気にひどくなる感じ。若いときは、そういうものかと思って受け入れていたんですが、職場のポジションや責任が重くなるにつれて、どんどん飲酒量が増えていきました。お酒の勢いに任せて求めてこられることが増えたんですけれど、それが本当にいやで…」とうつむく景子さん。

新婚当初は夫婦生活が週に1、2度はありました。子どもは自然な流れで5年おきに3人生まれ、幸せいっぱいに見えましたが、夫の仕事は超激務。おまけに接待も多く、帰りは深夜。平日はほぼワンオペ状態。長男が下の子たちの面倒を積極的にみてくれるタイプだったことに救われたといいます。

●翌朝、なにも覚えていないと言われ…

「夫は子ども好きではあるけれど、乳幼児期のお世話はほとんどできない人でした。だから私は慢性的に寝不足。それなのにお酒を飲んで帰ってくると、夜中の2時とか3時でも強引にしようとしてきて『いやだ』と言っても聞き入れてくれなかったんです。しても最後までできないこともあって、すごい中途半端。それなのに自分が満足すると『じゃ』と言って寝てしまうんです。一度、『もう少ししたい』と勇気を出していったこともあったんです。でも『時間かかるからもう無理』って言われて。すごく独りよがりな行為が続いて、私にとってストレスになっていきました」

朝になり、夫に文句を言うと毎回「酔っていて覚えていない」と困り顔をしながら言い訳されてしまいました。呆れを通り越して、冷めてしまったと振り返る景子さん。

夫婦の価値観がズレていったきっかけ

夫との行為を苦痛だと感じるようになってから数年経ったある日のこと。夫の会社から転勤の話が舞い込んできました。

●広島から東京への転勤。家族はどうする?

「下の子が幼稚園へ入るくらいのタイミングだったと思います。急に転勤の話があって、『来月から東京へ行くことになりそうだ』と言われました。私はてっきり家族帯同を想定していたので、準備に3週間ちょっとしかないから、とにかく引っ越し先の学校とかを調べなきゃ! って慌てたのですが、夫の第一声は『俺はみんなのことまでかまっていられないよ。来るのはいいけど、仕事があるから、なにか困ったことが起きたときに俺をあてにされても困る』と。かなり突き放した感じで言われて、言葉を失いました」

話し合いというよりも、一方的に「帯同は無理」「なにかあっても面倒は見られない」と宣告されてしまったのです。夫も自分の仕事のことでいっぱいいっぱいだったのかもしれませんが、その冷たい言い方が、景子さんにとっては「この人、家族のことが嫌いなのかな?」と感じてしまいました。

●所詮、夫婦は他人。距離が開けば心も離れる

「私は子どもとは血のつながりがあるけれど、夫婦は他人なので、物理的な距離が広がれば心の距離も開いてしまうという考えでした。だから、家族一緒に東京へ引っ越すものだと思っていたので、夫からの一方的な物言いにはショックでしたね」

もともと夫の会社は東京へ転勤する人が多かったそう。景子さんの機嫌が悪くなったことを察した夫は、広島とは環境が違いすぎるため、奥さんがなじめなかったり、子どもも不登校になったりしてしまうケースが立て続いていて問題になっているという理由もつけたしてきたのですが、時すでに遅し。

「最初の話し合いのときに“単身赴任”を決定事項として伝えてきて、話し合いにすらならなかったわけです。あとからごちゃごちゃ理由をくっつけてきても、なにも響きませんでした。すでにこの家も買っちゃっていたし、人に貸すのも大変だから『単身赴任するなら勝手に行けば』ってこっちも突き放した感じで別居することになったんです」

こうして、夫婦が東京と広島で離ればなれで暮らすことになった結果、レスはさらに深刻化。そんななか景子さんが「レスでいるほうが100倍マシ」と宣言するほどの大事件が起きたのです。