今年の9月に歌手デビュー50周年を迎えた伊藤蘭さん。キャンディーズ解散後は、俳優としての活動が中心でしたが、2019年には歌手活動を再開。50周年イヤーの今年は、アルバムの発売、コンサートツアーと続き、第74回NHK紅白歌合戦への出場も決まりました。

そんな伊藤さんが芸能界に足を踏み入れたのは、中学3年生のとき。自身初となるエッセイ集『Over the Moon』(扶桑社刊)では、芸能界に入る前のこと、キャンディーズとしてデビューしてから現在に至るまでを、貴重な写真とエピソードとともにつづっています。今回は、デビューのきっかけとなった出来事などをご紹介します。

【写真】赤い華やかな衣装で歌う伊藤さん

引っ込み思案だった伊藤さん。芸能界入りのきっかけは、友人からの誘い

小学校では目立つことが苦手で引っ込み思案だったという伊藤さん。「そんな自分を変えたい」という気持ちもあり、中学校では演劇部に入ることにしたのだそうです。

「演劇部での活動は、とても楽しかったです。どんな話にしようかとみんなでストーリーを考え、それを台本に起こし、ガリを切って…。学校内のイベントや、区や東京都の大会で作品を発表するのが目標でした」

自分の殻を破るきっかけになったという演劇部での活動。そのときに一緒だった友人に「スクールメイツに応募しない?」と誘われたのが、芸能界入りのきっかけでした。

●スクールメイツからキャンディーズに

スクールメイツとは、渡辺プロダクションがスター発掘と育成をめざして設立した東京音楽学院の中の選抜メンバーです。

「おそろいのトレーナーに白いスコート、手にはポンポンを持ち、人気歌手のバックで踊る姿は、テレビで目にしていました。当時はまだ引っ込み思案だったのですが、華やかな世界への興味も少しあったのだと思います。演劇部の友人と一緒に応募し、中学3年生の春にふたりで東京音楽学院に合格しました」

スクールメイツになって3年ほどたった頃、新しく始まるNHKの音楽番組『歌謡グランドショー』のマスコットガールのオーディションが行われます。

「そのときに選ばれたのが、同じ年にスクールメイツに入ったスー(田中好子)さん、1年あとに入ったミキ(藤村美樹)さん、私の3人でした。番組に出るにあたってユニット名をつけようということになり、番組プロデューサーの発案で『キャンディーズ』になったんです」

その後、番組での人気が徐々に高まっていき、1973年9月1日に「あなたに夢中」でレコードデビュー。1978年4月に解散するまで、約4年半を駆け抜けます。

●ヘアもメイクも自分たちで

「当時はヘアもメイクもプロの方にお世話になることはなく、テレビ出演も雑誌の撮影も、すべて自分たちでやっていました。衣装ケースにその日着る衣装を数点入れ、ケースの下部には靴を収納。片手にメイクボックスを持ち、さらに私物を入れたショルダーバッグを肩からかけて、左右に揺れながら仕事場まで通っていました」

衣装は、専門につくってくださる方がいて、歌う曲が決まると「これがいいですね」「ではこんな感じで」などと打ち合わせをしながら、自分たちで決めていったのだそう。

「3人のなかでは、『キャンディーズはこうよね?』というイメージが少しずつできあがっていった気がします。ラストコンサートのときも『キャンディーズらしいのはこっちじゃない?』と言いながら衣装を決めました。大胆さもあるけれど、どこかかわいらしいイメージ。私たちにとっても、おそらくファンの方たちにとってもそうだったと思います」

40年ぶりの歌手活動に緊張。でも、やっぱり楽しい

そこから時を経て、2019年に歌手活動を再開した伊藤さん。デビュー50周年イヤーの今年は、3枚目のアルバム『LEVEL 9・9』を発売し、全国6都市でコンサートツアーを行いました。

「久しぶりにひとりでスタジオに入って、マイクの前に向かったときは、とても緊張しました。なんといっても、しっかり声を出すのは40年ぶりだったので、初めはやはり怖かったです。そのときの“自分”が包み隠さず録音されてしまうわけですから。最近やっとなじんできて、それもまた楽しいかなと思えるようになりました。今の私の精いっぱいのパフォーマンスで喜んでくださる方がいるのであれば、なんとか応えたいという気持ちでいます」