ESSEonlineで2023年11月に公開された記事のなかから、ランキングTOP10入りした記事のひとつを紹介します。

いくつになっても人間関係は難しいと思うことは多いもの。とくに、家族という関係性においてもあらゆる感情が湧いてます。そこで、50代60代の女性の生き方に関する著書を上梓し、トップブロガーでもある中道あんさんに、自身の体験から得た「家族との関係を良好にするために心がけていること」を教えてもらいました。

記事の初出は2023年11月。内容は取材時の状況です。

大人の家族関係で怒りが湧いたときに「まずやること」

身近な存在である家族に対して腹が立ってきたらどうするのか、その怒りの処理をどうしていますか?

●同居する息子に対してイライラ…

26歳で結婚し、40代後半から夫と別居中の私には成人した娘が1人、息子が2人います。別居後は長男と2人で暮らしていたのですが、娘がひとり暮らしをやめて家に戻ってきたので、3人暮らしへと華やかになりました。娘は料理はしませんが、そのほかの家事は率先して負担してくれ、かなり助かっています。一方で息子はというと相変わらずのマイぺース。早く帰ってきても一緒の夕飯を食べようとはしません。

親としてはできたてを食べてもらいたいし、キッチンが片づかないのはいやなもの。「早く食べてほしい…」と言ってもも「わかった」というだけで食べようとはしない。だんだんイライラがつのってつい、小言のひとつやふたつ言いたくもなります。あげくに余計な一言を言ったがために、「そこまで言うならもう食べない」という反応も。昔の私なら「せっかくつくったのになんですと!」と怒っていたでしょうが、息子とはいえいい大人です。大人同士のけんかほどみっともないものはありません。

●怒りが湧いたら、まず黙る。そして冷静に理由を考える

そこで、怒りがわき起こってきたら、まずは黙ることにしました。怒りの感情をコントロールするのはいったん黙って一呼吸置くことで冷静になれます。つくったものをすべて下げてキッチンの営業時間を終了。そして、自分はなぜ怒っているのか、怒りの原因を探ってみることにしたのです。

なんでもおいしいと喜んで食べてくれる娘に食事をつくって、息子につくらないのは、どうも気が引ける。親心からしていることでつくってほしいと頼まれたわけじゃない。

彼には彼の食べたいタイミングがあるのでしょう。私には、食べることは生きることという価値観を持っています。なので、食は楽しむもので、食を大切に扱わないのをよしとしないという自分の中での決めごとがあります。一方、息子はゲームをしながら食べたり、スマホ片手に食べている。つまり食事が“作業”になっているのです。

これが怒りの原因でした。自分がつくったものをぞんざいに扱われている、と。それがわかったので、その翌日から息子に「ごはんを食べや」と言わないことにしました。そこで彼から「ごはんある?」と聞かれれば答えることにしょう、と決めたのです。これで怒りの原因は1つ消えました。息子のごはんなんて知らんがなです。

親子関係こそ相手への「期待」を手放すことでラクに

これをやってあげたら喜んでくれるだろう、というのは相手に対する期待でしかありません。こちらがよかれと思ってしたことを、まるで当然のように扱われてしまうと自分の存在価値が低く感じてしまいます。

とくに親子関係では「期待」することが、思わぬ影響を及ぼすと実感しています。

●母を喜ばせたくて尽くしてきたことが思わぬ結果に

私は、高校生くらいから、母親になんとか喜んでほしくてアルバイトで貯めたお金で服をプレゼントしたり、喫茶店で延々と愚痴を聞いてあげたりいろいろとしてきました。初めは喜んでくれたのですが、いつかしかそれが当たり前になってしまいます。「長女なんだからして当たり前」「それくらいできるでしょう」と、こちらが期待に応えるほど、段々とハードルがあがっていき、一時が万事…そうなります。

忘れもしないのが、父の還暦祝いで夫婦旅行をプレゼントすると「お父さんと2人で行ってなにがおもしろいのよ!」と怒鳴られてしまったことです。これには本当に悲しくて、心が傷つきました。私たち世代はまだまだ親の介護は子どもがするものだという概念があります。

なかには自分を犠牲にしてまで介護に奔走しているのに「ありがとう」の一言すらもらえない人だって少なくありません。「ここまでやっているのにどうして…」と悲しい気持ちや腹立たしい気持ちになるのは当然だと思います。

●相手には「期待しない」と決めることでラクに

これも、相手に対する「期待」から生じる感情です。なにをやっても感謝の言葉すら返ってこない、ややもすると不満が返ってくるような相手には「期待しない」と決めることがいちばん。私は、母への期待を一切手放したおかげですごくラクな気持ちになれました。

その代わりに母を連れて旅行や母の日のプレゼントを「してあげられた自分」に喜びを感じるようにしたのです。すると幸福度は自然に上がります。

親子関係に限らずモヤモヤしたりイライラしたりすると、「そうだ! 相手には期待しないんだった」と思い直せば、相手を悪く思う気待ちも和らぎますし、なにより自分を整えられるのです。

息子に対しては「私も好きにするから、あなたも好きにしてね」で良好な関係性を築いていけるでしょう。いつまでもあると思うな親と金。父の座右の銘が心に響きます。