日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「一人でやったんだなと思うとかわいそうで…」と語る主婦の里香さん(仮名・40代)。夫とのレスを解消したいという思いとは裏腹に、病んでしまった体と心はまだ回復しないまま。現在の率直な気持ちをお話してくださいました。

妻が体調を崩してから5年…

夫が長期の海外出張になってしまい、思うように不妊治療ができないなかで、ワンオペ育児をがんばっていた5年前。ノロウイルスの感染から長期間体調を崩し、ガリガリにやせてしまった里香さん。

●入退院を繰り返す日々「いちばんの悩みは子ども」

日常生活において最も課題になっているのはやはり食事。「元気だった頃に比べると15kgも落ちてしまったんです」と話す里香さんですが、今も体重は30kg台のまま。常に危険水域で、栄養失調で入院するたびに点滴で栄養を入れているといいます。

「2人の子どもは小学生と幼稚園。まだまだ母親が恋しいと思うしお世話の手もかけてあげたい時期。医師からは『もっと体重を増やすまで入院しましょう』と言われますが、私はできるだけ早く家に帰りたくて、前回も10日間で退院させてもらいました。ただ家に帰ってからも、胃が小さいままなので、量が食べられないんですよね。それでも在宅治療なら軽い家事はできるし、学校の宿題をみてあげたりすることもできます。自分の体調と気持ちのバランスをとりながら綱渡りをしているような日々です」と里香さん。

●子どもに迷惑をかけまくりなのがつらい

子どもの成長はあっという間。元気になったら、どんなことがしたいですか? と問いかけると、子どもたちへの思いがたくさんあふれ出してくる様子でした。

「私がこんな状態なので今、お出かけがなにもできていなくて。本当は一緒に公園へ行きたいし、上の子は小学生だから、キャンプや海などの旅行にも連れて行ってあげたい。けれど、それができなくてもどかしいです。胃が小さくなってしまって、食べられないまま動いたら体重が減るので、家にいるしかない。授業参観でさえ、45分立っていられなくて途中で退席したのですが、子どもに対してはずっと申し訳ない気持ちでいっぱいです」

病気になって気がついたのは、揺るがない夫への信頼

夫と「しない」生活になってからも5年。夫婦関係にはどのような変化があったのかも聞いてみました。

「夫は“誠実”という言葉がぴったりな人。絶対的な信頼感があって、結婚しました。それは今も変わりません。だから行為がなくても、浮気とか女性問題で悩まされる心配はなくて、そこはよかったなと思っています」と里香さん。

「けれど、家で夫と共有で使っているパソコンがあるんですけれど、履歴にそういう動画の検索を見つけてしまったんです。あぁ、私とできないから一人でしたんだなと思ったらかわいそうになってしまいました」

●お互いに分かっているから隠さなくなった

ネットを見ながら処理している夫に対して、どのような感情を持ちましたか? と聞くと、「手を出さなくなったので、あぁ、気遣ってくれているんだなと思うと申し訳ない気持ちもあります。けれど、『パパ、パソコン閉じるときは見られたくないものをちゃんと消してからにしてね』とダイレクトに言っちゃいました。そしたら向こうは『はーい』って明るく返事をしてましたが、私が分かっていると知ったからか、いろいろ隠さなくなりましたね」と意外なほど明るい反応の里香さん。

ひとりで処理をして、不満もこぼさない夫に対して、行為はできないながらも、手をつないだりハグをしたりと、スキンシップを多めにとるようにし始めたそう。

●SNSで同じ境遇の人たちと励まし合う

現在はすでに3人目の子づくりを諦め、体調回復のため治療に専念しているという里香さん。不妊治療をストップした現在も、食事をしっかりとれず、1日1000カロリーすら摂取できません。

「うちは夫と男の子2人という男所帯だから、普段の食事もガッツリ系メニューが多いんです。そうすると私は食べられないので別メニュー。でも子どもたちが『お母さん、
このエビフライおいしいよ、一口食べてみる?』と言ってくれたりして、ちょっとだけ食べて『おいしいね』って。そんな様子を見ながら、夫も以前のように無理に『食べろ、食べろ』とは言わなくなりました。家族みんなが『食べられるときに、食べられるものを食べればいいよ』っていうスタンスに変わったら、プレッシャーも減ってきて。そういう体験談をSNSで同じ病気で悩んでいる人たちのコミュニティでシェアしたりして、励まし合っています」

●夫のそばにいるだけでポジティブになれる

食欲がゼロになったのと同時に、性欲までなくなってしまった里香さんでしたが、5年の闘病を経て、夫との絆は深まったと感じているそう。

「夫は、自由気ままでマイペースな人。お金も大切にする人なので、一緒にいて安心感があります。それとすごくポジティブ。海外の長期出張で離れて暮らしたときは本当につらかったけれど、今は一緒にいられるし、そばにいると、あのポジティブさに引っ張られて、私もプラス思考でいられるんです。この病気はストレスが引き金だったから、夫の出張が減った今、体をしっかり治せたらいいなと思っています。行為は体がしっかり治ってから。その次の段階にどうなるのかはまだわからないけれど、今は家族みんなで笑って暮らせることを大切にしたいです」