Photo: Amazon

宇宙では仲良く…?

市場でパイを奪い合い、熾烈な競争を展開するライバル企業たち。ところが、思わぬところで歩み寄り、協力し合うことってあるものですよね。いま米国では、あのイーロン・マスク氏と、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が手を握っただなんて話題になってるみたいです。

犬猿の仲だった

ちなみにマスク氏とベゾス氏といいますと、訴訟でにらみ合うバトルを繰り広げてきた犬猿の仲。マスク氏が率いるSpaceXは、NASAの有人月面着陸計画の「アルテミス」ミッションで、着陸船として「スターシップ」を活用する契約を結び、全力で開発を続けています。でも、NASAは、最初からSpaceXと組むと決めていたわけではありません。

ベゾス氏は、Blue Originを立ち上げ、さまざまな宇宙計画を推進してきました。当然ながら、SpaceXとは、正面切って競争するシーンも多々あります。先のアルテミスのミッションでも、Blue Originこそが月面着陸船を開発してNASAと提携する計画がありました。SpaceXに、この計画を持っていかれたBlue Originは、なんと法廷でNASAを提訴! ですが、あえなくBlue Originが敗れ去ったなんてことまでありましたよ。

まさかの歩み寄りの背景

いまAmazonは、世界のどこにいても衛星インターネットができる新サービスを立ち上げるべく、Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)の準備を進めています。そして、これと似たサービスを、すでにマスク氏は「Starlink」の衛星通信で展開中。

驚くべきことに、このほどAmazonは、Project Kuiperの要となる通信衛星の「KuiperSat」シリーズの一部を、SpaceXの「Falcon 9」ロケットで打ち上げる計画を発表。えっ、Starlinkと正面から競合するProject Kuiperを、SpaceXが支援? もしや将来的にStarlinkのサービスを脅かされ、Amazonに首を絞められることになっても?

どうやらAmazonとしては、本来ならBlue Originで、自前の打ち上げ環境からProject Kuiperを成功させたかったようです。ただこれだと米連邦通信委員会(FCC)から得られているライセンスに間に合わないことがわかったみたい。Project Kuiperのサービスには、3236個の衛星を打ち上げる計画が含まれますが、そのうち半分を2026年までに宇宙で展開する契約内容のようです。これに間に合わなければ、サービス展開どころか、ライセンス剥奪の憂き目にあってビジネスが白紙に戻る恐れが〜。

なんとしてもライセンス維持のためには打ち上げを進めなければいけないAmazon。ここは仇敵となるSpaceXの手を借りてでも、計画成功への道を優先させたようです。現在はStarlinkが、ほぼ独占している衛星インターネットサービス。もし競合のAmazonのサービスが軌道に乗り、さらなる低価格化の波なんて訪れれば、ユーザーにとっては大歓迎でしょうけどね。

Source: Amazon