Dynabookの「dynabook GS5/W」は、13.3型ディスプレイを搭載したクラムシェルスタイルのノートPCだ。

……と書き出すと、記憶力に長けた読者から「ん! なんか似たような出だしのレビュー記事を以前読んだような覚えが」と突っ込まれるかもしれない。さすが! そのとおりで、dynabook G8/Wのレビュー記事を2023年7月13日に掲載している。

その見た目はdynabook Gシリーズと変わらない「dynabook GS5/W」

dynabook GSシリーズ、どんな位置付けのPC?

今回取り上げる、dynabook GSシリーズの2023年“秋モデル”として登場した「GS5/W」(P1S5WPBL)は、dynabook Gシリーズと同じ13.3型で、モバイル利用を主体と想定したモバイルノートPCラインナップの1つだ。

dynabook Gシリーズとの相違点として、Dynabookでは、dynabook Gシリーズを14型ディスプレイ搭載モバイルノートPC「dynabook R」シリーズと同じ「プレミアムモバイルノート」というカテゴリーに分類している。これに対し、dynabook GSシリーズは「スタンダートモバイルノート」というカテゴリーだ。

本体カラーは2023年11月時点でオニキスブルーの一択

プレミアムモバイルノートのキャッチコピー「どこへでも持ち出せる軽さと長時間駆動。先進の速さ、強さも求めるなら」に対して、スタンダードモバイルノートは「あらゆるシーンで頼れる軽さ、強さ、速さを求めるなら」。

「えー、どっちも選んでいいんじゃないの? いやむしろ“あらゆるシーン”でつかえるGSシリーズのほうが安心かも」と思わせてしまうが(そういう意味では巧みなコピー)、スタンダードモバイルノートは価格抑えめで購入しやすいモデルという位置づけになる。

ちなみに、GSシリーズのキャッチコピー冒頭には「ゼミで、サークルで、就活で」とあるが、同じ13.3型ディスプレイ搭載のスタンダードモバイルノートカテゴリーに属する「dynabook S」シリーズのキャッチコピー冒頭に「ゼミの資料作りや調べ物に」とあるのを見ると、「はっ! このSはスタンダードではなくてスチューデントのS」となる人も少なくないだろう

dynabook Gとdynabook GSのそれぞれ最新モデルで発売当初の実売価格を比べてみると、CPUにCore i5-1340Pと搭載した下位モデルのdynabook G6/W(P1G6WPBL)で23万円台半ばだったのに対して、dynabook GS5/W(P1S5WPBL)は20万円台半ばとされている。それぞれの本体サイズはdynabook G6/Wもdynabook GS5/Wも幅306.0×D210.0×H17.9mmと同じで、本体搭載インタフェースのレイアウトも共通するため、その見た目はほぼ同じだ。

左側面には、2基のThunderbolt 4(USB4 Type-C)にHDMI出力、USB 3.2 Gen1 Type-A、ヘッドフォン&マイクコンボ端子を備える

右側面には、microSDスロットにUSB 3.2 Gen1 Type-A、有線LAN用RJ-45を用意する

正面

背面。左寄りにクーラーファンから排出される排気用スリットが見える

ラフに扱っても大丈夫、タフを確保した本体

キャッチコピーの紹介でも言及したように、dynabook GSシリーズは学生の利用も想定している(それはdynabook GSシリーズに限らずDynabook全体として注力しているところでもある)が、PCの存在が当たり前の若い世代のユーザーは、往々にしてPCの扱いがラフになりがちだ。dynabookのモバイルノートPCは早い段階から(それこそ前身の“東芝”の時代から)、堅牢性能に確保に注力してきた。

dynabook GS5/Wでは、堅牢性の指標としてMIL-STD-810Hの9項目(落下、粉塵、高度、高温、低温、温度変化、振動、衝撃、太陽光照射)に準拠した耐久テストを工場出荷時に実施してクリアしている。

加えて、Dynabookによる独自試験も20項目にわたって実施。MIL-STD-810Hの9項目のうち、特にモバイル利用で関係してくる「落下」「衝撃」のテスト内容は次の通りだ。

落下試験:高さ76cmから本体26方向で床面に落下

衝撃試験:40Gの衝撃を正面背面左右側面天面底面6方向で3回ずつ計18回与える

また、Dynabook独自試験において“ラフな利用”を想定した項目としては、面加圧試験、キーボード耐久試験、キーボードトランポリン試験、ディスプレイ衝撃試験、ヒンジ開閉試験、コネクタこじり試験、パームレスト加圧試験、マスク押圧試験、一点加圧試験にくわえて、「片手で本体の一角“だけ”をつかんで持ち上げる」といった、よくある行為で起こりがちな「PCBひずみ試験」までカバーしている。

このような“ラフな扱い”に耐えうるため、dynabook GS5/Wでは、ボディパネル部材を場所ごとに変えている。LCDカバー面(天面)や底面といった携行時に外装となる部分には耐衝撃性に優れたマグネシウム合金のプレス部材を利用する一方、ディスプレイベゼル側やキーボード側といった携行時内装部分にはマグネシウム合金ダイカスト部材を採用して、堅牢性と軽量化を両立させている。

リモートワークや作業向けの機能は上位機種とほぼ共通

そんな“スタンダードなモバイルノートPC”であるdynabook GS5/Wだが、ここまで見てきたように、本体搭載インタフェースや内蔵Webカメラやアレイマイク、そして「AIノイズキャンセラー」といったリモートワークで求められる性能は、プレミアムモバイルノートのdynabook Gシリーズとほぼ共通する。

ディスプレイ上部に配置した有効画素数約92万画素のカメラ

レンズシャッターを備えている

作業効率に大きく影響するキーボードに関しても、キーピッチが19mmでストローク長が1.5mmとこちらも同等だ。ディスプレイ関連の仕様も解像度は1,920×1,080ドットと変わらない。先ほどまで長々と紹介した堅牢性も、実はdynabook Gシリーズと共通する。

軽めのタッチだが、タイプした力を確実に支えるキーボード。タッチパッドのサイズは100×69ミリで、左上に指紋センサーを備える

キーピッチは19mm、ストロークは1.5ミリを確保している

ディスプレイ画質は落ち着いた感じの色調に。表面は非光沢処理で見やすい

しかし、そこはやっぱり価格が異なるだけあって、中身はこまごまと異なってくる。

まず本体の重さが、dynabook G6/Wの約875gから、dynabook GS5/Wでは約956gと79グラム重くなる。とはいえ、13.3型ディスプレイ搭載ノートPCとして1kgを切る軽さは、2023年の末に近いこの時期でも十分に軽い。カバンに放り込んで“さっ”と持ち出せる気軽さはdynabook GS5/Wでも変わらない。

本体が重くなったのにバッテリー駆動時間(カタログ公称値・JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver.2.0に準拠した方法で測定した値)は、dynabook G6/Wが約24時間だったのに対して、約14時間となる。

また、dynabook G6/WではディスプレイにIGZO液晶を採用していたが、dynabook GS5/WはTFT方式の液晶パネルになる。それゆえに画質もIGZOの明瞭な鮮やかさと比べると、やや落ち着いたトーンになる(これはこれで刺激が少なくて目に優しいと評価する意見もあるだろう)。

さらに大きな相違点としては、搭載するCPUがdynabook G6/WではTDP28ワットのCoreプロセッサー“P”シリーズなのに対して、dynabook GS5/WではTDP15ワットのCoreプロセッサー“U”シリーズを採用したことだ。

なお、dynabook GS5/Wの公式ページにある「GS5同等のWebオリジナルモデル GZシリーズはこちら」のリンクをたどって表示されるWeb直販モデル(dynabook GZのGZ/HW)は、全てCPUがGシリーズで搭載するTDP28Wの“P”シリーズのみ。2023年11月中旬時点においてdynabook GS5/Wに相当するWeb直販モデルは確認できていない。

この違い、実際に使ってみるとどこまで認識することになるだろうか。

Core i5-1334U搭載、ベンチマークで性能チェック!

GS5/Wでは、CPUに第13世代Intel Coreプロセッサー「Core i5-1334U」を採用した。Core i5-1334Uは処理能力優先のPコアを2基、省電力を重視したコアを8基組み込んでいる。Pコアはハイパースレッディングに対応しているので、CPU全体としては10コア12スレッドだ。

定格動作時の動作クロックはPコアで1.3GHz、Eコアで0.9GHz。ターボ・ブースト利用時の動作クロックはPコアで4.6GHz、Eコアで3.4GHzまで利用可能。

TDPはベースで15W〜55Wとなる。グラフィックス処理にはCPU統合のIris Xe Graphicsを利用し、演算ユニットは80基で動作クロックは1.25GHz。

処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5-4800を採用していた。容量は8GBでデュアルチャネル対応。ユーザーによる増設はできない。

ストレージは容量256GBのSSDで試用機にはSamsungのMZVLQ256HBJDを搭載していた。接続バスはNVM Express 1.4(PCI Express 3.0 x4)だ。

GS5/Wの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Night Raid、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:暁月のフィナーレを実施した。

なお、比較対象としてCPUにCore i7-1260Pを搭載し、ディスプレイ解像度が2,560×1,600ドット、システムメモリがLPDDR5-5200 16GB、ストレージがSSD 1TB(PCI Express 4.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。

結果を見ていくと、第12世代Coreプロセッサーを載せた比較対象ノートPCと比べ、全ての項目において順当に高いスコアが出ていることがわかる。

特にコンテンツ制作に関連した処理能力スコア、3DMark Night Raidといったゲームベンチマークテストで大きくスコアを向上させている。

ただし今回の評価機が採用しているSSDがSamsungのミドルレンジモデルであったことから、CrystalDiskMarkのスコアは比較対象と比べて半分程度の値となった(実をいうと比較対象のノートPCとはdynabook G8/Vであったりする)。

バッテリー駆動時間を評価するPCMark 10 Battery Life Benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは12時間6分(Performance 4901)となった。ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスに、それぞれ設定している。なお、PCMark 10のSystem informationで検出した内蔵するバッテリーの容量は53130mAhだった。

このほか、外出先で使うときに気になる騒音と、薄型モバイルノートPCで注意したい表面温度を把握するために、電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行。

CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パークレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになった。

底面のスリットから内部に1基備えたクーラーファンを確認できる

内部で発生した熱はスリットから排出されてディスプレイ表面を駆け上っていく

ACアダプタは左側面奥に位置するThunderbolt 4に接続する。標準付属のACアダプタのサイズは60×60×27mm。重さはコード込みで実測246g。出力は20Vで3.25Aだ

上位機比でちょい重・駆動時間短いけど、コスパに優れる1台

dynabook GS/Wは“プレミア”なdynabook G6/Wと比べて、ちょっとだけ重くてちょっとだけバッテリーが持たない。しかし、それ以外の部分、サイズやインタフェース、画面解像度といった機能面においてはほとんど同等で、CPUが異なる点においても第12世代Coreプロセッサー搭載モデルの“G”の上位モデルを上回る。そのコストパフォーマンスはとても優れているといえるだろう。

信頼できる、そして、少々雑な扱いにもけなげに耐えてくれるモバイルノートPCを探しているならば、dynabook GS/Wは検討必須のマシンとなるはずだ。