同性でも共有できない「更年期」や「生理」のつらさ…認知に努めた『命の母』の120年 より深い“理解促進”が次なる一手
生理前〜生理中、更年期の不調など、女性の体や心の悩みの強い味方として知られる「命の母」ブランド。昨年、主にPMS(月経前症候群)に対応する『命の母ホワイト』のCMキャラクターに指原莉乃を起用したことで、若年層にも認知が拡大。更年期へ向けた『命の母A』と共に、幅広い層への認知拡大に努めています。しかし一方で、「我慢するもの」という意識から、実際に手に取るハードルは高い側面も。その実情と今後の展望について、販売元の小林製薬に聞きました。
【意識調査】「生理について異性に話しにくい」が9割! 10〜20代女性で意外な結果も
■母のために「何かしたい」から開発 症状の“明確化”で売上50億にまで伸長
初代『命の母』が誕生したのは、120年前の1903年。女性の多くは大家族の中で家事や育児に、労働と、過酷な環境で生活していました。まだ「更年期」という言葉もない時代、笹岡薬品創業者の笹岡省三氏が、“体の弱い母親や、同じように困っている女性のために何かしたい”と考え、開発したのが『命の母』でした。
その後、2005年に販売権は笹岡薬品から現在の小林製薬へ。“更年期障害”の薬と明確にパッケージに表記し、リニューアル。
「小林製薬の全ての商品に通じるのは、わかりやすさ。困っている人にしっかりお届けできるよう、店頭で、ひと目で自分のための商品だとわかるパッケージデザインを意識しています」(『命の母』ブランドマネージャー・佐中みぎわさん/以下同)
“生命の母”という意味で笹岡省三がつけられた『命の母』というネーミングと、小林製薬が重視する症状への“わかりやすさ”。両社の想いを合わせた同商品は、名前を定着させたことで認知度も高まり、2005年に約10億円だった売り上げは、その後右肩上がりに推移。現在は、約5倍の50億円まで、順調に売り上げを伸ばしています。
■加速するフェムテック市場 更年期の不調は「我慢するもの」というイメージからの脱却が命題
女性を取り巻く環境も年を追うごとに大きく変化。それまで口に出して言うことが恥ずかしいと思われがちだった「生理」や「更年期」も、徐々にではあるものの、オープンに話題に出しやすい環境が形成されつつあります。
2010年代以降、「生理、PMS(月経前症候群)」、「妊活、不妊」、「更年期」といった女性特有の課題を、テクノロジーを駆使して解決しようとする製品やサービス全般を指す「フェムテック」という言葉が徐々に浸透。フェムテック市場に参入する企業が大幅に増えた2020年は、「フェムテック元年」と呼ばれています。
同社でも、テレビ番組で「PMSで『命の母』を愛用している」と発言したことをきっかけに、2022年から指原莉乃を『命の母ホワイト』のCMキャラクターに起用。更年期の『命の母A』とともに、生理中の不調へ向けた『命の母ホワイト』の認知度も高まっています。
「指原さんのCMがスタートしてから1年ほど経ちますが、“指原さんが飲んでいるんだったら飲んでみよう”であったり、“私たち向けの商品もあるんだ”ということを知っていただき、若年層の方への認知が広がったと思います。様々なメディアでも女性ホルモントラブルの特集が組まれていますし、弊社で行なっている調査でも、PMSの認知率や自覚率は高まっていると感じています。毎年行なっている調査でも、PMSへの認知や自覚が上がっていると感じています」
世の中の流れと共に一歩前進したものの、個人差のある「生理」や「更年期」の不調は、なかなか周囲の理解を得られない難しさも。同じ世代や同性でもそれぞれに症状は異なり、“我慢するもの”というネガティブな認識はいまだ根強く残っています。
実際に同社が行なった調査でも、生理や更年期の悩み事で多かったのは、「周囲の理解が得られない」という意見。「それぞれに重み(つらさ)の違いや異なった状況が起こりえることの認知を、もっと広げていけたら」と、佐中さんは今後の課題について語ります。
■「更年期離職」という現実&浸透しない「生理休暇」…企業単位での理解が収益向上にも比例
近年は、女性の更年期による離職率も大きな問題に。更年期離職による経済損失は約4200億円にのぼり(※1)、同じく月経随伴症状(腹痛、腰痛、眠気、イライラ、便秘など)による労働損失(欠勤、労働量や質の低下)は約4911億円(※2)と試算されるほど。こういった状況に一石を投じるべく、同社はフェムテックカンパニーTRULYとの取り組みを開始。2024年春に向けて、更年期や生理に悩む女性従業員へ向けたサービスの開発に取り組んでいます。
例えば、会社に設けられている「生理休暇」の制度も、実際に利用している人は10%にも満たない状況だと言います。「異性の上司に申請をするのは、自分が生理であることを宣言しているようで言いづらい」という意見も多く、活用されていないのが実情。
「女性ホルモンの変動によって起こりえる症状や、それらには個人差があることを、性別年齢関係なく理解し、全員が働きやすい環境にするにはどうしたらいいかを考えられるサービスにしたいと考えています」
また、同社では昨年から、PMSなどの整理の諸症状や更年期の症状へのお問合せ対応システム『命の母AIお悩み相談』の提供をスタート。個人差のある症状について、対応策を含め様々な相談ができる仕組みを整えています。最も利用率が高いのは、更年期に差し掛かる40代の女性で、月に約3万人、のべ45万人が使用しており、最も利用者が多い年代が、更年期に差し掛かる40代だそう。
「症状やその出方、感じ方は人それぞれなので、同年代でも理解されにくいもの。共感や安心を得たいという気持ちに寄り添えたらと、レーダーチャートで同年代の人のお悩みと比較できるようにしました。自分が人より症状が重いと知れば、対処するきっかけにもなるのではと思っています」
初潮の低年齢化や更年期後の悩みなど、女性の体を取り巻く悩みは幅広く、症状も人それぞれ。症状をより理解し、うまくつき合っていくことが必要ではあるものの、とかく“自分を責めてしまう”ことが多いはずです。
「女性ホルモンの影響で生じる症状は、自分の意思ではコントロールすることが難しいことがあります。そんな女性ホルモンに影響されずに、自分のやりたいことを全力でやったり、気持ちよく過ごすために、命の母に頼っていただけたらと思います」
明治時代から変わらぬ女性の体と心の悩み。「フェムテック元年」から3年が過ぎ認知が広がってきた今、女性がより生きやすくなるための試みは、新たなステージにさしかかっているのかもしれません。
※1:NHK「更年期と仕事に関する調査2021」
※2:2019年3月経済産業省発表
■母のために「何かしたい」から開発 症状の“明確化”で売上50億にまで伸長
初代『命の母』が誕生したのは、120年前の1903年。女性の多くは大家族の中で家事や育児に、労働と、過酷な環境で生活していました。まだ「更年期」という言葉もない時代、笹岡薬品創業者の笹岡省三氏が、“体の弱い母親や、同じように困っている女性のために何かしたい”と考え、開発したのが『命の母』でした。
その後、2005年に販売権は笹岡薬品から現在の小林製薬へ。“更年期障害”の薬と明確にパッケージに表記し、リニューアル。
「小林製薬の全ての商品に通じるのは、わかりやすさ。困っている人にしっかりお届けできるよう、店頭で、ひと目で自分のための商品だとわかるパッケージデザインを意識しています」(『命の母』ブランドマネージャー・佐中みぎわさん/以下同)
“生命の母”という意味で笹岡省三がつけられた『命の母』というネーミングと、小林製薬が重視する症状への“わかりやすさ”。両社の想いを合わせた同商品は、名前を定着させたことで認知度も高まり、2005年に約10億円だった売り上げは、その後右肩上がりに推移。現在は、約5倍の50億円まで、順調に売り上げを伸ばしています。
■加速するフェムテック市場 更年期の不調は「我慢するもの」というイメージからの脱却が命題
女性を取り巻く環境も年を追うごとに大きく変化。それまで口に出して言うことが恥ずかしいと思われがちだった「生理」や「更年期」も、徐々にではあるものの、オープンに話題に出しやすい環境が形成されつつあります。
2010年代以降、「生理、PMS(月経前症候群)」、「妊活、不妊」、「更年期」といった女性特有の課題を、テクノロジーを駆使して解決しようとする製品やサービス全般を指す「フェムテック」という言葉が徐々に浸透。フェムテック市場に参入する企業が大幅に増えた2020年は、「フェムテック元年」と呼ばれています。
同社でも、テレビ番組で「PMSで『命の母』を愛用している」と発言したことをきっかけに、2022年から指原莉乃を『命の母ホワイト』のCMキャラクターに起用。更年期の『命の母A』とともに、生理中の不調へ向けた『命の母ホワイト』の認知度も高まっています。
「指原さんのCMがスタートしてから1年ほど経ちますが、“指原さんが飲んでいるんだったら飲んでみよう”であったり、“私たち向けの商品もあるんだ”ということを知っていただき、若年層の方への認知が広がったと思います。様々なメディアでも女性ホルモントラブルの特集が組まれていますし、弊社で行なっている調査でも、PMSの認知率や自覚率は高まっていると感じています。毎年行なっている調査でも、PMSへの認知や自覚が上がっていると感じています」
世の中の流れと共に一歩前進したものの、個人差のある「生理」や「更年期」の不調は、なかなか周囲の理解を得られない難しさも。同じ世代や同性でもそれぞれに症状は異なり、“我慢するもの”というネガティブな認識はいまだ根強く残っています。
実際に同社が行なった調査でも、生理や更年期の悩み事で多かったのは、「周囲の理解が得られない」という意見。「それぞれに重み(つらさ)の違いや異なった状況が起こりえることの認知を、もっと広げていけたら」と、佐中さんは今後の課題について語ります。
■「更年期離職」という現実&浸透しない「生理休暇」…企業単位での理解が収益向上にも比例
近年は、女性の更年期による離職率も大きな問題に。更年期離職による経済損失は約4200億円にのぼり(※1)、同じく月経随伴症状(腹痛、腰痛、眠気、イライラ、便秘など)による労働損失(欠勤、労働量や質の低下)は約4911億円(※2)と試算されるほど。こういった状況に一石を投じるべく、同社はフェムテックカンパニーTRULYとの取り組みを開始。2024年春に向けて、更年期や生理に悩む女性従業員へ向けたサービスの開発に取り組んでいます。
例えば、会社に設けられている「生理休暇」の制度も、実際に利用している人は10%にも満たない状況だと言います。「異性の上司に申請をするのは、自分が生理であることを宣言しているようで言いづらい」という意見も多く、活用されていないのが実情。
「女性ホルモンの変動によって起こりえる症状や、それらには個人差があることを、性別年齢関係なく理解し、全員が働きやすい環境にするにはどうしたらいいかを考えられるサービスにしたいと考えています」
また、同社では昨年から、PMSなどの整理の諸症状や更年期の症状へのお問合せ対応システム『命の母AIお悩み相談』の提供をスタート。個人差のある症状について、対応策を含め様々な相談ができる仕組みを整えています。最も利用率が高いのは、更年期に差し掛かる40代の女性で、月に約3万人、のべ45万人が使用しており、最も利用者が多い年代が、更年期に差し掛かる40代だそう。
「症状やその出方、感じ方は人それぞれなので、同年代でも理解されにくいもの。共感や安心を得たいという気持ちに寄り添えたらと、レーダーチャートで同年代の人のお悩みと比較できるようにしました。自分が人より症状が重いと知れば、対処するきっかけにもなるのではと思っています」
初潮の低年齢化や更年期後の悩みなど、女性の体を取り巻く悩みは幅広く、症状も人それぞれ。症状をより理解し、うまくつき合っていくことが必要ではあるものの、とかく“自分を責めてしまう”ことが多いはずです。
「女性ホルモンの影響で生じる症状は、自分の意思ではコントロールすることが難しいことがあります。そんな女性ホルモンに影響されずに、自分のやりたいことを全力でやったり、気持ちよく過ごすために、命の母に頼っていただけたらと思います」
明治時代から変わらぬ女性の体と心の悩み。「フェムテック元年」から3年が過ぎ認知が広がってきた今、女性がより生きやすくなるための試みは、新たなステージにさしかかっているのかもしれません。
※1:NHK「更年期と仕事に関する調査2021」
※2:2019年3月経済産業省発表