首都高へ誤進入した自転車に乗っていた人がクルマにひかれて死亡する事故が発生しました。後を絶たない首都高への誤進入、対策の難しさも浮き彫りになりました。

亡くなったのは世界的サイクリスト

 2023年9月25日未明の首都高で起こった、誤進入の自転車とクルマによる死亡事故。首都高速道路の前田信弘社長は27日の定例会見でこの件について振り返り、誤進入だったとはいえ「(自転車に乗っていた人が)首都高上でお亡くなりになったのは残念でならない」と話しました。


首都高への自転車の誤進入事例。今回の事故とは無関係(画像:首都高速道路)。

 事故が起こったのは午前3時過ぎ。自転車に乗った男性が、K3三ッ沢線の三ッ沢入口から首都高へ入り、横浜駅方面へ走行、K1横羽線と交わる金港JCTで乗用車にはねられ死亡しました。この事故で金港JCT付近は約8時間にわたり通行止めとなっています。

 亡くなったのは外国人、横浜市内で開催されていたサイクルメッセンジャーの世界大会「CMWC2023 Yokohama」に出場するため来日していたアメリカ出身のパトリック・デュー選手です。同大会実行委員会のプレスリリースによると、「大会のレースは事故発生のタイミングではすでに終了しており、ホテルへの帰宅途中などに事故に遭遇したと推測しております」としています。

 首都高の前田社長は会見で、自転車などによる誤進入の対策について説明しました。首都高では106か所の出入口に、カメラで誤進入者を感知し必要な手配をとるための「立入検知システム」を導入しており、このときもシステムが作動。パトロールカーが急行したほか、道路情報板で一般車へ向け誤進入車両への注意喚起も行っていたといいます。しかし、その先の横羽線下りへ向かう箇所で、事故が起こりました。

 入口からの進入の場合、通常は料金所で誤進入者を止める措置を取るといいます。しかし、今回は自転車であったうえ、進入した三ッ沢入口は料金所がなく、その先の三ッ沢本線料金所で徴収する方式であるため、ある意味、“すんなり入れる”場所でした。

後を絶たない誤進入 対策の難しさ

 これを受け、前田社長は三ッ沢入口の誤進入防止の表示などをより明確にする工事の準備をすでに進めていると表明。今回は首都高で2023年度に入って2件目の死亡事故だったそうですが、誤進入の自転車が2件のうちの1件になってしまったことから、「こういうことを繰り返さないためにも必要な対策をとっていく」と決意を新たにしました。

 ただ、首都高への誤進入は後を絶ちません。2020年の時点で、ここ数年は年間400〜450件(あくまで認知件数)で推移しているとしていましたが、そこから減ってはいないようです。

「誤進入は、ナビアプリの案内に従い入ってしまったというケース、それと酒酔い、認知症の高齢者が多いです。ナビアプリに従い入るケースは自転車に多く、コロナ禍で配達の自転車が増えたとき、(アプリ提供者などへ)自動車用ではなく自転車用のナビを作ってほしいと働きかけを行って、件数も減少しました」(前田社長)


会見する前田社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 対して酒酔い、認知症は、進入自体を事前に止めるのが難しいといいます。前出した立入検知システムのほか、一部の入口では誤進入者に対しマイクで呼びかけを実施。これで引き返すケースはかなりあるとのこと。

 一方、やはり自転車などが故意に入ってくることも一定数あるそうです。この場合は出口から入って逆走するパターンの方が対処しやすく、今回のように入口から順走するケースの方が停めるのが難しいとか。今回のケースについては、警察の調べを待って対処する構えです。

【あ…こりゃ入っちゃうわ】自転車が誤進入した入口(画像)