『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』ケネス・ブラナー流ポアロで譲れなかった2つのこだわり

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“ミステリーの女王”アガサ・クリスティが生んだ、世界で最も有名な探偵の一人であるエルキュール・ポアロ。『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』に続いてケネス・ブラナーの監督・製作・主演で贈る人気シリーズの最新作『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』が劇場公開中だ。ケネスがポアロを演じる上でこだわった2つの点についてご紹介しよう。

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口ヒゲとベルギー訛りにこだわりまくり

ポアロは、特徴的な大きな口ヒゲと寸分の隙もなく着こなしたスーツ、そして“灰色の脳細胞”を持ちながらも、潔癖症なくらいの綺麗好きという一癖ある性格。どんな相手からでもうまく情報を引き出せる巧みな話術と鋭い観察眼、人間心理に対する深い理解をもって相手の本心を見抜き、数々の犯罪を解決へと導く名探偵だ。

1920年に発表されたクリスティの処女作「スタイルズ荘の怪事件」で初めてその姿を見せて以来、ポアロは長編33作・短編50作以上に登場。彼が難事件に挑む姿は、これまで何度も映画やドラマ、舞台、ラジオドラマなどになり、デヴィッド・スーシェ、ピーター・ユスティノフ、アルバート・フィニー、ジョン・マルコヴィッチといった名立たる俳優が演じてきた。

ウィリアム・シェイクスピア作品で何度も主演し、俳優として英アカデミー賞(BAFTA賞)を受賞、アカデミー賞やエミー賞の候補になっているケネス。世界中で知られているキャラクターを演じる上で「共感できるキャラクターを演じるためには、キャラクターと真の絆がなくてはなりません。ポアロと感情的に寄り添うことを大切にしました」と語っており、ポアロの心情を深く理解するため、彼が登場する原作をすべて読破して役作りに励んだという。

原作者クリスティの曾孫であり、本作で製作総指揮を務めるジェームズ・プリチャードが、ケネスがこだわった2点を紹介。「ケネスは私に、『ポアロを演じる上で、非常に大切な絶対条件が2つある。一つは彼が口ヒゲを蓄えていること、そしてもう一つは彼がベルギー訛りであることだ』と言いました」

“ケネス流ポアロ”の大きな口ヒゲは、歴代のポアロ俳優と比べてもひときわ大きく、唇の下にもヒゲが生やしてある独特なスタイル。ヒゲについてケネスは「ポアロのヒゲはバカバカしいと言われることもあるけど、彼は人と同じではいたくない性格だから、非常に目立つ口ヒゲを生やしているという理屈なんだ」と語る。監督も兼任する彼らしい発想で、ポアロの内面も映し出すデザインとなっていることを明かしており、納得いく形に仕上がるまでに試行錯誤を繰り返した結果、9ヵ月もの時間を要したと、以前の直撃インタビューで語っている。クリスティは生前、ポアロの映像化作品を見た時に「ヒゲが(原作のように)大きくない」と不満を漏らしたこともあったそうだが、歴代俳優と比べても特に大きいと言えるケネスのヒゲであれば合格点をもらえるだろう。

プリチャードによればそんなケネス版ポアロのヒゲは“進化”しているのだとか。「実はあのヒゲは、シリーズを追うごとに変化していて、これまでに見たことのない手法でのポアロの内面の描き方がほかの俳優たちと大きく違うポイントです」とも語っている。

もう一つのこだわり、ベルギー訛りについてもケネスは並々ならぬ意欲をもって臨んだことが判明。1998年の映画『セレブリティ』で監督ウディ・アレンの分身のような主人公を演じた際に、ウディの特徴的な口調を完璧に真似するなど、もともとそうした発音やアクセントも巧みなケネスだが、このシリーズでは英国在住のベルギー人という原作のポアロを忠実に再現するため、ポアロと同世代のベルギー人が話す27種類ものベルギー訛りの英語の録音を聴き、週3回コーチングを受けたという。舞台経験も豊富なケネスが披露する、犯人を追い詰める際のお馴染みの長台詞は、彼が描き出すポアロの個性にもなっている。

そんなケネス流のポアロの描き方についてプリチャードは「ケネスがポアロというキャラクターを実に見事に考察し、掘り下げたことを心から称賛します」と賛辞の言葉を送っている。

『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)は大ヒット公開中。(海外ドラマNAVI)

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