日本人の9割が持っている「痩せ菌」って? “腸活”で痩せやすく太りにくい体質を作る方法を専門家が解説
“痩せ菌”や“デブ菌”という言葉を耳にしたことはありますか。これは体重に関わる「腸内細菌」のこと。ダイエットをしても「なかなか痩せられない…」と悩んでいる人は、“痩せ菌”がほしい! と思ったこともあるのでは。日本人の腸内環境にあった「腸活」をして、“痩せ菌”を増やすことができるかもしれません。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN/以下、ニビオン)の國澤純先生が解説します。
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多くの研究データは海外のもの、腸内細菌は人種によって異なるので、日本人には当てはまらないこともあると言われてきました。
「例えば、海外の研究データから、アッカーマンシア菌が肥満をコントロールできる菌として紹介されることがあります。しかし、腸内細菌のうち1%以上をこの菌が占める日本人は、わずか1割程度。もともと腸内にいない菌を、定着させ増やすのは現実的ではありません」(國澤先生/以下同)
そこで、NIBIOHN(ニビオン)が中心となった研究(※1)では、多くの日本人の腸内に存在する、日本人独自の“痩せ菌”を発見し、そのメカニズムを明らかにしました。
「私たちの調査によると、肥満でない、もしくは糖尿病でない日本人に多い菌として『ブラウティア ウェクセレラエ』(以下、ブラウティア菌)を発見しました。さらに、動物モデルを用いた研究から、ブラウティア菌が肥満や2型糖尿病を改善する可能性のある有用菌であることを明らかにしました」
「ブラウティア菌」は太りにくい体質を作る“痩せ菌”になる有用物質を作っていることも研究でわかってきました。具体的には、ブラウティア菌は代謝促進作用や炎症を抑制する効果がある物質をつくり、腸内環境を整える短鎖脂肪酸もつくり出します。これらが一緒になって働くことで、体重や血糖値の増加を抑えてくれるようになるそうです。
※1)Koji Hosomi et al.「Oral administration of Blautia wexlerae ameliorates obesity and type 2 diabetes via metabolic remodeling of the gut microbiota」(Nature Communications, 2022-08-18)
■話題の「糖質制限ダイエット」、そのやり方間違っているかも?
「腸内細菌も生き物ですので、エサがないときちんと働いてくれません」と國澤先生。では、痩せ菌であるブラウティア菌のエサはどんなものなのでしょうか。
「現在研究中ですが、どうもブラウティア菌は、炭水化物に含まれる食物繊維、難消化性でんぷん、難消化性オリゴ糖を好むようです」
炭水化物とは「糖質+食物繊維」のこと。近年、糖質制限ダイエットが人気を集めていますが、この糖質制限を“炭水化物を減らすダイエット”と誤解していると、かえって太りやすい体質をつくってしまう可能性もあると國澤先生は言います。
「減らすべきは糖質で、砂糖が入った甘いお菓子など。また、穀類の中でも精製度の高い白米や小麦は、ほぼ糖質なので少し控えめにするのが有効です。一方で、炭水化物でもブラウティア菌のエサとなる食物繊維を減らすことはおすすめできません」
糖質が良くないと思い、食物繊維を含む炭水化物まで少なくするダイエットは、日本人の体の仕組みに合っていないということです。きちんと食物繊維を含む穀類を摂ることが、効果的に健康で太りにくい体質につながるのです。
■痩せ菌を活性化するのは「穀物」に含まれる食物繊維
ブラウティア菌がつくり出すアミノ酸や短鎖脂肪酸が、太りにくい体質をつくることに働いていることがわかりました。
ブラウティア菌は穀物に含まれる“発酵性食物繊維”をエサにして短鎖脂肪酸を作り出します。“発酵性食物繊維”は、小麦の胚芽、オーツ麦、もち麦などに含まれているので、主食を最近話題を集めている小麦ブランシリアルやオートミール、もち麦、玄米などに変えてみるのがオススメだそう。
雑穀米や玄米を炊くのは面倒、時間がないという人もいるのでは。
「最近の研究で、ブラウティア菌とビフィズス菌は相性がいいことがわかっています。ビフィズス菌が生み出す物質がブラウティア菌の大好物のようです。腸内細菌は分業制で、助け合って生きています。様々な種類の菌が活性化するようにバランスがとれた食事を摂ることが大切です」
小麦ブランシリアルを牛乳に混ぜたり、ヨーグルトにかけたりするだけで腸内環境を整えるメニューに早変わり。
また、健康志向の人の間で話題のオートミールも有効です。オートミールには、βグルカンという発酵性食物繊維が豊富に含まれています。ご飯代わりにオートミールを利用してカレーやチャーハン、おにぎりなどにして食べるのがオススメです。
「ブラウティア菌をはじめ、共生する菌を活性化するには菌のエサを与えることが何よりも大切です。炭水化物は糖と食物繊維でできていて、白米で摂取できるのは主に糖であること、菌のエサになるのは食物繊維であることをお忘れなく」
●監修者/國澤純先生
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN(ニビオン)) センター長(ヘルス・メディカル連携研究センター)。大阪大学薬学部卒業、大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、東京大学医科学研究所准教授、独立行政法人医薬基盤研究所プロジェクトリーダーを経て現職。
多くの研究データは海外のもの、腸内細菌は人種によって異なるので、日本人には当てはまらないこともあると言われてきました。
「例えば、海外の研究データから、アッカーマンシア菌が肥満をコントロールできる菌として紹介されることがあります。しかし、腸内細菌のうち1%以上をこの菌が占める日本人は、わずか1割程度。もともと腸内にいない菌を、定着させ増やすのは現実的ではありません」(國澤先生/以下同)
そこで、NIBIOHN(ニビオン)が中心となった研究(※1)では、多くの日本人の腸内に存在する、日本人独自の“痩せ菌”を発見し、そのメカニズムを明らかにしました。
「私たちの調査によると、肥満でない、もしくは糖尿病でない日本人に多い菌として『ブラウティア ウェクセレラエ』(以下、ブラウティア菌)を発見しました。さらに、動物モデルを用いた研究から、ブラウティア菌が肥満や2型糖尿病を改善する可能性のある有用菌であることを明らかにしました」
「ブラウティア菌」は太りにくい体質を作る“痩せ菌”になる有用物質を作っていることも研究でわかってきました。具体的には、ブラウティア菌は代謝促進作用や炎症を抑制する効果がある物質をつくり、腸内環境を整える短鎖脂肪酸もつくり出します。これらが一緒になって働くことで、体重や血糖値の増加を抑えてくれるようになるそうです。
※1)Koji Hosomi et al.「Oral administration of Blautia wexlerae ameliorates obesity and type 2 diabetes via metabolic remodeling of the gut microbiota」(Nature Communications, 2022-08-18)
■話題の「糖質制限ダイエット」、そのやり方間違っているかも?
「腸内細菌も生き物ですので、エサがないときちんと働いてくれません」と國澤先生。では、痩せ菌であるブラウティア菌のエサはどんなものなのでしょうか。
「現在研究中ですが、どうもブラウティア菌は、炭水化物に含まれる食物繊維、難消化性でんぷん、難消化性オリゴ糖を好むようです」
炭水化物とは「糖質+食物繊維」のこと。近年、糖質制限ダイエットが人気を集めていますが、この糖質制限を“炭水化物を減らすダイエット”と誤解していると、かえって太りやすい体質をつくってしまう可能性もあると國澤先生は言います。
「減らすべきは糖質で、砂糖が入った甘いお菓子など。また、穀類の中でも精製度の高い白米や小麦は、ほぼ糖質なので少し控えめにするのが有効です。一方で、炭水化物でもブラウティア菌のエサとなる食物繊維を減らすことはおすすめできません」
糖質が良くないと思い、食物繊維を含む炭水化物まで少なくするダイエットは、日本人の体の仕組みに合っていないということです。きちんと食物繊維を含む穀類を摂ることが、効果的に健康で太りにくい体質につながるのです。
■痩せ菌を活性化するのは「穀物」に含まれる食物繊維
ブラウティア菌がつくり出すアミノ酸や短鎖脂肪酸が、太りにくい体質をつくることに働いていることがわかりました。
ブラウティア菌は穀物に含まれる“発酵性食物繊維”をエサにして短鎖脂肪酸を作り出します。“発酵性食物繊維”は、小麦の胚芽、オーツ麦、もち麦などに含まれているので、主食を最近話題を集めている小麦ブランシリアルやオートミール、もち麦、玄米などに変えてみるのがオススメだそう。
雑穀米や玄米を炊くのは面倒、時間がないという人もいるのでは。
「最近の研究で、ブラウティア菌とビフィズス菌は相性がいいことがわかっています。ビフィズス菌が生み出す物質がブラウティア菌の大好物のようです。腸内細菌は分業制で、助け合って生きています。様々な種類の菌が活性化するようにバランスがとれた食事を摂ることが大切です」
小麦ブランシリアルを牛乳に混ぜたり、ヨーグルトにかけたりするだけで腸内環境を整えるメニューに早変わり。
また、健康志向の人の間で話題のオートミールも有効です。オートミールには、βグルカンという発酵性食物繊維が豊富に含まれています。ご飯代わりにオートミールを利用してカレーやチャーハン、おにぎりなどにして食べるのがオススメです。
「ブラウティア菌をはじめ、共生する菌を活性化するには菌のエサを与えることが何よりも大切です。炭水化物は糖と食物繊維でできていて、白米で摂取できるのは主に糖であること、菌のエサになるのは食物繊維であることをお忘れなく」
●監修者/國澤純先生
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN(ニビオン)) センター長(ヘルス・メディカル連携研究センター)。大阪大学薬学部卒業、大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、東京大学医科学研究所准教授、独立行政法人医薬基盤研究所プロジェクトリーダーを経て現職。