信号のない円形の交差点「ラウンドアバウト」を、非常に見通しの良い、田園地帯のど真んなかの交差点に導入されるケースが存在します。どういった理由からなのでしょうか。

超コントロールしやすい「田園地帯の交差点」なのに

 日本語で「環状交差点」と訳される信号のない円形の交差点「ラウンドアバウト」。これが、非常に見通しの良い、田園地帯のど真んなかの交差点に導入されるケースがあります。どういった理由からなのでしょうか。


愛知県愛西市のラウンドアバウト(画像:愛知県)。

 たとえば愛知県愛西市の田園地帯で、2本の県道がまっすぐ交わる信号のない十字路をわざわざ改築し、ラウンドアバウトを設置した事例があります。

 ラウンドアバウトは、交差点の中心に「中央島」と呼ばれるスペースがあり、その外周を取り囲むドーナツ型の通行路「環道」から放射状に道路が伸びる、というのが基本的な構造。
環道へ入る際は左折で進入し、時計回り(右回り)で進み、左折で流出するというルールがあります。

 導入のメリットとしては、信号がないことから維持管理の面でも経済的、災害時にも対応できるほか、いくつもの道路が交わる交差点も制御しやすいといった点が挙げられます。

しかし、前出した愛西市の交差点は、もともと信号がないうえ、遮るものも特にない十字の交差点。同様の事例は他の地域でもあります。なぜわざわざ単純な交差点を改築するのでしょうか。

田園地帯のど真ん中にラウンドアバウト設置の意図

 愛西市の交差点では、信号の導入も検討されましたが、100m以内の位置に別の信号交差点があり、間隔が近すぎ車両が詰まる恐れがあることから、ラウンドアバウトを導入しました。

 愛知県によると、その大きな狙いは事故防止。さらにいえば、重大事故につながりかねない「コリジョンコース現象」の防止にあるといいます。

「コリジョンコース現象」について、JAF(日本自動車連盟)は次のように説明しています。

 直角に交わる見通しのよい交差点に、同じ速度で同時に接近する2台のクルマがあったとすると、相手のクルマは常に斜め45度で進み続けます。するとドライバーは、近づいてくるクルマを「止まっている」と錯覚し、注意を払わなくなり、危険を認識できなくなることがあるのです。これを「コリジョンコース現象」といい、結果としてお互いに交差点へ進入し、衝突に至ります。

 これは、横から近づくクルマを、物の色や形をはっきり認識できる「中心視野」から外れた「周辺視野」でとらえやすいことから起こる、目の錯覚だそうです。


海外では一般的なラウンドアバウト。画像はイギリス・ロンドンシティ空港近辺。

 交差点を直進したい場合も、いったん左折して環道を経由しなければならないラウンドアバウトであれば、そのような事故を防止できるというわけです。

 またこの交差点では、ラウンドアバウト化以前、一時停止の規制が守られずに事故につながっていたケースもあるとのこと。信号でも一時停止の規制でもなく、「必ず環道に入る」という通行方法によって、スピードの抑制効果も期待できるでしょう。