北陸新幹線の金沢〜敦賀間が延伸開業すると、並行するJR北陸本線は第三セクターに転換されます。福井県内には新たに「ハピラインふくい」が誕生しますが、旧・北陸本線はいったいどんな形に分割されているのでしょうか。

北陸本線のほとんどが「JRではない鉄道」に転換

 関西と北陸をむすんでいた、JRの大幹線「北陸本線」。かつて米原〜直江津の全長353.8kmを誇っていましたが、北陸新幹線の開業とともに、次々と第三セクターに転換して「非JR路線」となっていきました。

 そして2024年3月16日には、北陸新幹線はさらに延伸開業し、福井県へ入って敦賀駅まで到達。それにともなって、並行するJR北陸本線もまた第三セクターに転換されます。

 いろいろな鉄道会社がひしめき合う「旧・北陸本線」。一体どこからどこまでが、どんな鉄道会社になっているのでしょうか。


石川県内のJR北陸本線を継承した「IRいしかわ鉄道」(画像:写真AC)。

【新潟県】えちごトキめき鉄道(直江津〜市振)

 新潟・富山県境に近い市振駅を境にして、新潟県側を受け持った第三セクターです。「日本海ひすいライン」という路線名があります。

 同時に直江津から長野方面へ南下するJR信越本線も第三セクター転換され、こちらは長野県境に近い妙高高原駅までが「妙高はねうまライン」となっています。旧・JR西日本と旧・JR東日本の路線がひとつの鉄道会社に引き継がれた、レアなケースです。

 市振駅が会社としての境界ですが、小さい駅であることから、富山県側の「あいの風とやま鉄道」も含め、富山県側に2駅先の泊駅が乗り換え駅となっています。

 全線電化されていますが、「えちごトキめき鉄道」の列車はディーゼル車が使われています。これは途中の糸魚川駅を境にして、北が直流、南が交流の電力を採用しているため、電車は「直流でも交流でも対応できる設備」が必要となり、コストが高くなるからです。JR西日本が姫新線で導入している「キハ127系」をベースにしており、見た目はJRの521系電車にそっくりです。

【富山県】あいの風とやま鉄道(市振〜倶利伽羅)

 途中に魚津・富山・高岡といった都市を抱え、富山県内の東西移動の要となっています。こちらは全て電車での運行で、JR西日本時代の521系が塗色を変えてそのまま使われています。

 石川県側との境は峠越えの途中にある倶利伽羅駅ですが、その先の金沢駅までわずか17.8kmしかないため、全列車が直通しています。多くの電車が富山や高岡を起点にしているなか、糸魚川〜金沢を約2時間かけて走る長距離列車もあります。

 朝夕に「あいの風ライナー」という全車指定席(料金300円)の快速列車が運行されています。なお県内には支線であるJR氷見線やJR城端線がありますが、こちらはJRのまま「飛び地路線」として残っていきます。

今回の延伸で「新開業」する第三セクターも

【石川県】IRいしかわ鉄道(倶利伽羅〜金沢〜大聖寺)

 北陸新幹線の金沢開業時に、富山県境の倶利伽羅駅から金沢駅までの区間をJRから引き継ぎました。先述のとおり、全列車が富山県側の「あいの風とやま鉄道」に直通しています。車両はこちらもJR西日本時代の521系を引き継いでいます。

 北陸新幹線の敦賀延伸にあわせて、南側の金沢〜大聖寺間もこの会社へ移管予定。JR北陸本線の石川県内の区間はすべてIRいしかわ鉄道になります。開業に合わせて、新駅「西松任駅」が設置される予定です。金沢以南のダイヤがどうなるのか、金沢駅を境にして直通する列車はあるのかなど、詳細は今後発表される見込みです。

【福井県】ハピラインふくい(大聖寺〜敦賀)

 今回の敦賀延伸ではじめて誕生する第三セクターです。福井県内の新幹線並行区間が、JRから引き継がれます。2019年に設立された際は「福井県並行在来線準備株式会社」という名前でしたが、2022年7月に正式な会社名「ハピラインふくい」が決定しました。

 車両はやはりJR西日本の521系が引き継がれ、カラーリングは会社イメージカラーどおりのピンクと黄緑が採用される予定です。

 金沢まで直通する列車はあるのかなどダイヤ詳細はまだ決定されていませんが、「サンダーバード」など特急が全廃となるため、かわりに朝夕を中心に快速列車が運行される見込みです。また、武生駅の南側に新駅が開業する見込みで、さらに県内2か所で新駅設置計画が進められています。

 なお、福井駅の南隣の越前花堂駅から分岐し大野方面へ向かうJR越美北線は、JRのまま「飛び地路線」として残されることになります。

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 なお、敦賀以南、米原駅までの45.9kmはJR西日本の「北陸本線」として残ります。
 第三セクター鉄道は、基本的に出資元の大半が地元自治体であるため、当然「他県の事業へお金を落とす」ことはなく、それが県ごとに会社が細かく分かれ、運営や料金体系も別々となる背景です。例外として、九州新幹線の開業でJR鹿児島本線の一部を引き継いだ「肥薩おれんじ鉄道」は、熊本県と鹿児島県が出資して、2県にまたがる第三セクター鉄道となっています。