えっ…トヨタ「アルファード」に激似!? 謎の高級ミニバン「デンザ・D9」は何者? 現地で見たスゴさとは

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高級ミニバン「D9」とはどんなモデルなのか

 BYDのプレミアムブランド「デンザ(騰勢)」の電動ミニバン「D9」とはどのようなモデルなのでしょうか。
 
 中国・北京にて実車を体感しました。

高級ミニバン!? BYDのプレミアムブランド・デンザの「D9」とは(撮影:加藤博人)

 デンザは2010年、BYDが独・ダイムラーと50:50で出資をおこなって誕生しました。

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 2014年に発売された初の車種「デンザ EV」はメルセデス・ベンツ「Bクラス」がベースで、当時としてはまだマイナーだったBEVでした。

 BYDはパワートレインやバッテリーを、ダイムラーが内外装のスタイリングを担当。

 まだデザイン的に洗練されていない中国ブランドの車が多かった中、異彩を放つ1台でもありました。

 ただ、デンザが歩んできた道のりは楽なものではありません。

 新型車のリリースはまったく無く、ずっと最初のモデルのマイナーチェンジでお茶を濁してきた経緯があります。

「デンザ EV」改め「デンザ 500」は2019年にようやく終売し、同じ年にBYDのSUV「唐」をベースとした「デンザ X」を発売しました。

 こちらも第1弾モデル同様にスタイリングをメルセデス・ベンツが担当していました。

 しかし、2021年にダイムラーはデンザに対する出資を10%にまで引き下げ、メルセデス・ベンツ色のあるモデルとしては最後のモデルとなってます。

 そのため、毎年誕生する有象無象の後発EVブランドに埋もれてしまうかのようにも思われましたが、2022年にBYDはデンザブランドの再始動を宣言します。

 新たに整理されたラインナップは「デンザ」の「D」「E」「N」「Z」「A」をボディタイプ別に振り分け、その第1弾として電動ミニバン「D9」が投入されました。

デンザ D9はPHEV(プラグインハイブリッド)とBEV(電気自動車)、2通りのパワートレインを揃えています。

 PHEVは「驍雲」と名づけられたBYD製BYD476ZQC型1.5リッター直列4気筒直噴ターボエンジンをベースに、電気式無段変速機(E-CVT)と電動モータ、BYDが得意とするリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載する仕様です。

 前輪駆動と四輪駆動の2種類を設定し、前者はシステム総合出力296hp、後者は400hpとなります。

 搭載バッテリーは容量11.06kWhと40.06kWhが選択可能、航続距離(NEDC方式)は前輪駆動のみ選択可能の11.06kWhモデルが945km。

 そして前輪駆動と四輪駆動の両方を用意する40.06kWhモデルがそれぞれ970kmと1040kmを誇ります。

 一方で、BEVは容量103.36kWhのバッテリーのみ、航続距離(CLTC方式)が前輪駆動で620km、四輪駆動で600kmという仕様です。

 ボディサイズは全長5250mm×全幅1960mm×全高1920mmと、日本で販売されているミニバンの感覚から見れば非常にボリューミーであると感じます。

 中国では高級ミニバンに対する需要が高まっており、日本でも人気の高いトヨタ「アルファード」「クラウンヴェルファイア」をはじめ、中国メーカーも続々と新型ミニバンをリリースしている状況です。

 ガソリン車のみならずPHEVやBEVも多く、日本勢のミニバンも競争力維持のためには電動化が必須と言えるでしょう。

見た目は先代アルファードに似てるが…D9の実力は?

 今回試乗したのはPHEVモデルの「DM-i」、四輪駆動モデルです。

 ちなみに「DM」とはBYDがPHEVモデルに付与している名称で「デュアルモード」を意味します。

 経済性重視の「DM-i」とパフォーマンス重視の「DM-p」の二種類が存在しますが、多くの車種は前者のみ設定されている場合が多いです。

 エクステリアはBEVとPHEVで区別されており、PHEVはブロック状に分割されたフロントグリルが特徴的です。

 高級感を演出する一方、処理はメッキではなくつや消しのシルバーとなっており、少しばかりの安っぽさは否めません。

 インテリアは簡素すぎず複雑すぎずといったところで、見た目の印象が落ち着いた雰囲気を醸し出します。

 ウッド調のパネルもとてもおしゃれですが、エアコンのルーバーなどの細部における表面処理は少々荒いと感じました。

 また、セレクターやその周辺のボタン類は通常のBYDとまったく同一で、差別化が図れていない、もしくは差別化を図るつもりがないのではという印象を受けました。

 乗り味は高級ミニバンらしく上々で、不快な感じはまったくありませんでした。

 ですが、その直後に試乗したジーリーのEVブランド「ジーカー」の「009」と比較してしまうと、かなりの物足りなさを正直感じてしまいます。

 乗り心地のみならず、内装設計の美しさやインフォテインメントシステムの充実度、そしてディスプレイのUIなど、すべてにおいてジーカー 009のほうが上です。

デンザ D9のインテリア(撮影:加藤博人)

 ただ、これは価格帯を考えたら当然の結果とも言えます。

 デンザ D9はPHEVモデルが33万5800元(邦貨換算:約667万9000円)から、BEVモデルは39万5800元(約787万2000円)となります。

 一方でジーカー 009はBEVのみ、価格は49万9000元(約992万5000円)から58万8000元(約1169万6000円)です。

 航続距離(CLTC)もジーカー 009は702km/822kmとはるかに上なので、あとは消費者が各々に合った選択肢を選ぶ形になるでしょう。

 総じて見ればデンザ D9も十分に満足の行く内容で、価格を考えたらコストパフォーマンスに優れているクルマであると感じました。

デンザはD9に続くモデルとしてコンパクトSUV「N7」を2023年4月の上海モーターショーで発表、予約の受付を開始しました。

 N7は販売価格が明かされていない状況でも予約開始6時間で約5500件の注文を受けたとしており、期待度の高さがうかがえます。