25カ国・数千人のデータ調査の結果、抗HIV薬を服用している人は、一度ウイルス量が減れば、以後はセックスを介してウイルスを拡散させるリスクがほぼゼロであることが明らかになりました。

The risk of sexual transmission of HIV in individuals with low-level HIV viraemia: a systematic review - The Lancet

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)00877-2



People on HIV meds have 'almost zero' chance of spreading virus via sex once levels are low | Live Science

https://www.livescience.com/health/hiv/people-on-hiv-meds-have-almost-zero-chance-of-spreading-virus-via-sex-once-levels-are-low



複数の抗ウイルス剤を使用する「抗レトロウイルス療法(ART)」を受けている低レベルHIVウイルス血症患者からのHIV感染リスクは、血漿(けっしょう)ベースのウイルス量検査の代替手段を使用するリソースが限られた環境において、公衆衛生上、重要な影響を及ぼします。そこで、ジョージア州アトランタにあるグレイディ記念病院の感染症医であるローラ・N・ブロイルズ博士らは、さまざまなHIVレベルの人々の性感染にまつわる情報を集めました。

ブロイルズ博士らは2010年1月から2022年11月にかけて発表された、さまざまなレベルのウイルス血症や片方だけがHIVに感染しているカップル(血清不一致のカップル)の性感染に関する多くの研究を横断的に検索。244件の研究が見つかり、このうち、25カ国・7762組の血清不一致カップルに関する8件の研究を分析しました。

その結果、HIVに感染しているパートナーのウイルス量が1mlあたり200コピーを下回る場合、もう片方のパートナーにHIVをうつすことはないことが3つの研究で示されました。



また、4件の

プロスペクティブ研究においては322件の感染が確認されていますが、ARTで安定的にウイルス量が抑制されていると考えられる患者からの感染はみられませんでした。

すべての研究の中で、過去にHIVに感染したと診断された患者のうち、直近のウイルス量が1mlあたり1000コピー未満のケースは2例だったとのこと。

これらのことから、ブロイルズ博士らは、HIVウイルスの量が1mlあたり1000コピー未満であれば、誰かに感染させるリスクはほぼゼロであるという見解を示しました。

論文の共著者で世界保健機関のララ・ヴォジノフ博士は「この発見は、ウイルス量が低い場合に性行為によるHIV感染のリスクがほぼゼロであることを示す重要なものです。HIVに対する偏見を解消し、ARTを徹底することの利点を広め、HIVと共に生きる人々を支援する強力な機会を提供するものです」と述べました。

ブロイルズ博士らの成果は学術誌・The Lancetに掲載されたほか、第12回国際エイズ学会HIV科学会議でバーチャル発表されるとのことです。