「胃腺腫」の症状や原因はご存知ですか?胃ポリープとの違いについても解説!

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定期的に行うことが望まれる超音波検査・胃内視鏡検査で発見されるのが多いのが胃腺腫です。胃腺腫は、胃の粘膜内にできる良性の腫瘍です。

胃の検査で再検査などが提案されると心配してしまいますが、胃腺腫は良性の場合が多く、がん化することはあまりありません。しかし、絶対ではありませんので、発見した場合は、状態に応じた対応をする必要があります。

一般的には、経過観察の指示がことの多い胃腺腫ですが、どのような病気なのか検査方法・治療方法などを詳しく知ることで、より効果の高い的確な治療ができます。

胃腺腫とは?

胃腺腫はどのような病気でしょうか?

胃腺腫は、白色調の平坦な隆起が特徴的な腫瘍で、胃の粘膜に発生します。特に周りに浸潤することは少なく転移もしない腫瘍です。
しかし、胃腺腫はがん化のリスクがないわけではなく、研究によって幅はあるもののがん化率は約20%から50%といわれています。それだけでなく、胃腺腫は自覚症状がなく、胃カメラ・バリウムで発見されることがほとんどです。また、高齢者にみられる傾向が多い病気です。
発見できた場合は、2cm以下の腫瘍は経過観察を続け、2cmより大きいものは内視鏡で切除する場合が多いです。大きさだけでなく、陥凹(かんおう)を伴っていたり、赤く腫れていたりしているものについては、検査の上で積極的に治療をおこないます。また、内視鏡のNBI拡大観察で構造不整・血管不整を認めるものについても、積極的治療をします。

胃腺腫と胃ポリープの違いを教えてください。

胃腺腫と胃ポリープは同じように思われがちですが、若干の違いがあります。最も大きな違いは胃腺腫はほとんど良性の腫瘍で、まれに悪性に変わるものであるということです。
それに対して、胃ポリープの場合は、その中の一部が悪性に変わる可能性が高くなります。とはいえ、胃ポリープだからとそのまま悪性と判断する必要はありません。胃腺腫と比べた場合に悪性に変わる可能性が高いというだけです。
2つ目の違いは腫瘍のでき方の違いです。胃腺腫は、胃の粘膜内の腺細胞が過剰に増殖してできる腫瘍ですが、胃ポリープは、胃の粘膜内の組織がポリープ状に突出してできる腫瘍です。
最後に発見され方の違いがあり、胃腺腫の場合は、腫瘍が進行していたとしても自覚症状がありません。本人が全く気づかないため、検査などで偶然発見され、追加検査にて診断されます。一方胃ポリープは、小さいものは症状がありませんが、大きいポリープになると胃の不快感や出血伴い炎症を起こします。

胃腺腫にはどのような症状がみられますか?

胃腺腫は、症状がありません。そのため定期検査などで発見される場合がほとんどです。
しかし、人によっては、胃のムカつきや吐き気、場合によっては出血する場合がありますので注意が必要です。これらは胃の他の病気との区別がつきにくいため、早めの受診をおすすめします。

胃腺腫の原因を教えてください。

胃腺腫の原因はまだはっきりとはわかっていません。しかし、これまでに報告されている症例からいくつか原因を挙げられます。
まずは遺伝です。すべての胃腺腫ではありませんが、家族内に同じ胃腺腫の方がいた場合、胃腺腫になる傾向があります。次に常日頃から胃に負担をかけてしまうことが原因になる場合です。慢性胃炎のように慢性的に負担がかかるのも胃腺腫の原因のひとつでしょう。最後に、胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんといった胃にて発症するさまざまな病気の原因といわれているヘリコバクター・ピロリ菌という細菌によるものです。
これらの直接的な原因だけでなく、高齢者・喫煙・飲酒・食生活の乱れ・肥満などの環境要因も、胃腺腫の発生に影響を与える可能性があります。

どのような方が胃腺腫になりやすいのでしょうか?

遺伝的な要因から考えると家族に胃腺腫の方がいるようでしたら、発生リスクが高いとして普段から気をつけましょう。また、高齢者は、胃の粘膜が弱くなっていますので、発症リスクも高くなります。
普段から胃に負荷を与えている方・元々胃が弱い方・過去に胃腫瘍・胃ポリープなどは発症病歴がある方は、すでに胃の粘膜になんらかの障害があり細菌にも弱いので、注意が必要です。

胃腺腫の治療方法

胃腺腫はどのような検査で診断されますか?

胃腺腫は、一般的な胃の内部の検査に使われる方法で行われます。最も一般的なのが内視鏡検査です。胃の内部に内視鏡を挿入しカメラで胃の粘膜の様子を観察を行います。
カメラで見つけ出せるのは胃の粘膜の異常です。内視鏡には組織を採取する機能が備わっていますので、必要に応じて異常と思われる細胞を採取し生体検査を行います。また、X線検査も一般的です。バリウムを飲んだあと、X線で撮影を行うとバリウムの影響で腫瘍を発見できます。
そして、超音波検査は、胃の部分に超音波を外部から当ててその反射の様子で胃の内部の様子を判断します。
最後に、CTスキャンです。CTスキャンでは、複数の断層画像を撮影して立体的なイメージを撮影して、胃腺腫の正確な位置・大きさを測ります。MRIは、磁力をつかって磁場を形成し、胃の内部のイメージを詳細に再現します。

治療方法を教えてください。

胃腺腫の治療方法は、腫瘍の大きさ・位置・患者の症状によって異なります。小さな胃腺腫で症状がない場合は、定期的な経過観察で様子をみる方法です。次第に小さくなっていく場合もありますし、そのままを維持する場合もあります。
その場合はアプローチをする必要がありません。定期的な検査の結果、胃腺腫が大きくなるなどの変化が見られる場合には切除を検討します。切除方法は、ある程度小さいうちは内視鏡で行います。
大きな胃腺腫は、外科手術での切除です。切除された腫瘍は病理検査によってがん等の可能性がないかを確かめます。

どのような場合に経過観察となりますか?

胃腺腫で経過観察をするのか積極的な治療をするのかの判断は、胃腺腫のサイズ・症状などで決めます。胃腺腫が直径2cmに満たない小さな腫瘍の場合は、特に痛み・出血といった症状がなければ経過観察で様子をみます。
この状況は、胃腺腫が大きくなる傾向にない限り継続です。また、症状に関しては、無症候性で他に胃の異常がなく他の病気と関連していない場合に、経過観察が適用されます。
患者が特に症状を感じず不快感のようなものもなければ外科的処理で負担をかける必要がないからです。

胃腺腫の手術をした場合の入院期間はどのくらいでしょうか?

胃腺腫のどのような手術をしたかで入院期間は変わります。内視鏡での手術の場合は、合併症などがなければ1日から数日で退院です。外科手術で摘出をする場合は、どの程度の大きさのものを摘出するかによって手術の複雑さが変わります。
そして、手術後患者がすぐに回復したのか、あるいはリカバリーに時間がかかったのかによっても変わります。通常でも1週間以上は入院です。

胃腺腫の再発と予防

胃腺腫は悪性の場合が多いのでしょうか?

胃腺腫の場合は、悪性である可能性は極めて低いといわれています、まれに悪性になるケースがあるという程度です。

胃腺腫は再発するのでしょうか?

一般的に胃腺腫の再発の可能性はかなり低いといわれています。ただし、これらは胃腺腫のサイズ・症状・できた箇所・手術の方法などによって大きく変わってきます。

胃腺腫を予防する方法はありますか?

胃腺腫は遺伝的な観点からの発症もありますが、それ以外でも不規則な生活環境によって発症する場合もあります。そのため、喫煙・過度の飲食・肥満・不規則な生活・バランスの崩れた食事などを長期にわたって行うと発症リスクが高まります。そのため、規則正しい生活が大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

胃腺腫は、早めに発見されれば怖い病気ではありません。定期検査などで発見された場合はまず医師に相談して今後の治療プランを考えましょう。また経過観察の場合は必ず医師にいわれた期間で検査を受けるようにしてください。

編集部まとめ


定期検査で、胃の粘膜に関して異常を検知し再検査と診断されると不安が先にきてしまうかもしれません。しかし、胃腺腫のように早めの治療・経過観察で対応できる病気もありますので、まずはしっかりと状況を把握するようにしましょう。

常日頃から胃の調子を気にして、普段に比べ少しでも違和感を感じることが、あれば定期検診を待たず検査を受けることで、早期発見にも繋がりますし、問題がなければ安心を得られます。