「50代女性の薄毛」の原因はご存知ですか?薄毛への対策も解説!

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近年、加齢に伴う頭髪の減少や薄毛に悩みを抱える女性が増えてきています。男性と女性では、薄毛になる原因や対策は同じなのでしょうか。

髪のボリュームが減った・分け目の頭皮が目立ってきた・髪の毛のコシがなく細い・洗髪時などに毛が抜け落ちる量が増えたといった症状に気づいたら、薄毛のサインかもしれません。

薄毛は治療ができる時代です。薄毛に悩まれている方や将来が少し不安な方にも、治療や予防についてこの記事がお役に立てましたら幸いです。

50代女性の薄毛の原因は?


薄毛には大きく2つの原因に分けられひとつは毛包内に、もうひとつは体の健康状態に問題がある場合です。中でも女性が抱える薄毛の原因として多くみられる6つの原因をご紹介していきます。

女性ホルモンの減少

女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、髪の毛の成長を促す作用と深く関わりがあります。
卵胞ホルモンとも呼ばれ思春期が近づくころから分泌量が増え、肌ツヤが良くなる・骨密度が高まるといった作用があり、エストロゲンが活発に分泌されることで髪の毛はコシやハリのある状態になります。
このホルモンは産後・閉経後・40代から減少する傾向があり、毛量の減少・髪の毛が細く弱々しいといった変化を感じるようになるのです。日本人の閉経の平均年齢が50歳ですので、50代に入り女性ホルモンの減少による薄毛の症状が出始める方が多くなります。

加齢

50歳以上になると毛包がミニチュア化し、次第に小さくなることにも原因があります。
年齢を重ねるごとに、毛髪を作る毛包幹細胞を基底膜に繋ぎとめる役割の17型コラーゲンが失われます。すると毛包幹細胞は繋ぎとめられずにそのままフケとなり毛穴から排出され、これにより毛髪を作る細胞がなくなり、徐々に毛包自体が小さくなり毛量が減少していくのです。
17型コラーゲンが減少する原因は、加齢などにより毛髪幹細胞内のDNAが傷ついた際に起こるストレスに対して細胞が反応するためと考えられます。17型コラーゲンを維持するためにも、高脂質な食事やストレスを避けることが必要です。

ストレス

ストレスホルモンをご存知でしょうか。コルチゾールのことでストレスを受けると脳下垂体から副腎皮質ホルモンが分泌され、そこからコルチゾールが放出されるのですが、この際に体を防御する反応が働き発毛作用を阻害します。
心理的・身体的ストレスを受けるとコルチゾールの血中濃度が上昇します。毛髪や爪に含まれるこのストレスホルモンの値は数か月前からのストレスが反映されるため、慢性的ストレスがあることを示す指標になるのです。

頭皮への負担

頭皮を極端にケアしすぎるのも良くありません。例えば1日に2回以上洗髪すると、シャンプーに含まれる界面活性剤やドライヤーの熱が頭皮に負担をかけてしまいます。ブラッシングする際も、ブラシの素材や使い方でダメージになることが多いです。
泡状整髪剤・ワックス・ヘアスプレーなどのスタイリング剤やヘアカラーも、頭皮にとってはダメージになりますので、過度な使用とすすぎ残しには気をつけましょう。

病気や疾患

膠原病や橋本病(慢性甲状腺炎)に伴い脱毛が起きることがあります。これらは自己免疫疾患で、本来は細菌やウイルスなど外部からの侵入者と戦うべき免疫機能が暴走し、自分の体を攻撃する病気です。
円形脱毛症は毛球部に対する自己免疫疾患で、老若男女が罹患する可能性があり、小型の脱毛班が1個のみのものから頭髪だけでなく全身の毛が抜ける重症型のタイプまで様々な症状があります。亜鉛・鉄などのミネラルが欠乏していたり、梅毒などの感染症だったりと、病気が原因の場合は病原を絶たないと脱毛の症状は改善されません。
また、がん治療などに使われるTNF-α阻害薬・免疫チェックポイント阻害薬などによる薬の副作用で脱毛症が生じる場合もあります。

FAGA

Female(女性)AGAの略で女性型脱毛症のことをFAGAと呼び、女性に起きる脱毛症のことをいいます。男性の場合M字型・前頭部から頭頂部にかけて症状が出始めるのに対し、女性は前頭部よりも頭頂部をメインに閉経後に症状が出る傾向があります。
ホルモンバランスの変化や細胞の老化により、休止期の期間が長くなり成長期の毛包が充分に成長できず小さくなり、次第に毛髪が細く薄毛の症状になりやすいです。

50代女性の薄毛の対策は?


薄毛は遺伝するかもしれないと諦める必要はありません。日常生活の一部を見直すことで対策ができ、ある程度は予防も可能なのです。ヘアケア方法・食事・睡眠について解説します。

洗髪方法を見直す

洗髪は大切な頭皮ケアです。正しい洗髪方法は薄毛の対策はもちろん、綺麗な髪を保つためのケアになりますので是非普段のシャンプーの参考にしてみてください。

ぬるま湯で2分予洗いする

アミノ酸系など低刺激性のシャンプーを選ぶ

シャンプーはよく泡立てて指の腹で優しく洗う

すすぎ残しがないようにする

コンディショナー(トリートメント)を頭皮につけない

タオルドライは水分を優しく押さえる

初めの予洗いが実は重要で、シャワー2分で頭皮と髪に付着した汚れを70%も落とせるのです。これにより、この後のシャンプーの量を減らして頭皮への負担を極力減らせます。
シャンプーの際も爪を立てないように注意し、頭皮の皮脂を優しくもみ出すように洗います。皮膚や毛髪は摩擦に弱いため、タオルでゴシゴシ拭かずポンポンと優しく水分を吸わせ、ドライヤーはなるべく送風口から離すようにして最後は冷風で乾かしましょう。

バランスのいい食事を心がける

毎日栄養バランスの整った食事を摂ることも、薄毛対策には必要不可欠です。特に気を付けたいのは高脂質な食事です。
高齢マウスの実験では1ヵ月だけ高脂肪食を与えたところ毛が再生しにくくなり、若いマウスに3ヵ月以上同じ実験をしたところ毛が薄くなりました。これは毛包幹細胞内に脂肪が溜まり、細胞分裂の過程で幹細胞が枯渇し、毛包がミニチュア化することが原因と考えられています。
脂質の摂りすぎは内側から毛穴を詰まらせ、毛の成長に必要な栄養が供給されないのです。また、飲酒・喫煙は血液循環を妨げ髪の新陳代謝を遅らせ、ダイエットなど偏った食生活は毛の組織も栄養失調になります。
大豆や魚などに多く含まれるケラチンは、髪に必要なタンパク質ですので意識して摂ることをおすすめします。

睡眠不足を解消する

睡眠と薄毛の関係について、あまり認識されていないのが現状です。髪の毛が成長するのは主に睡眠中です。睡眠時間が短いと、髪に栄養が送られる時間がその分短くなり成長が妨げられます。
特に髪と深い関係があるのが成長ホルモンで、分泌量が多いほど丈夫で健康的な髪質になり、薄毛にもなりにくくなります。髪が成長しやすい時間帯があり、午後10時~午前2時の時間に眠っているとより多くの成長ホルモンが分泌されますので、なるべくこの時間を意識して睡眠をとると良いでしょう。
眠りの質も大切で、寝る直前までスマートフォンやテレビを見てしまうと交感神経が高ぶり、上質な睡眠をとることが難しくなります。薄毛の予防のためにも、質の良い睡眠は大切です。

薄毛で悩む50代女性は医療機関での薬物療法も検討しよう


薄毛は男性だけでなく女性も同じように悩む方が増えています。症状が進行してからだと回復が困難になる場合がありますので、早めの治療をしていきましょう。
医療機関での薬物療法には、ステロイド治療があります。外用薬は副作用が少ない特徴があります。脱毛箇所に直接ステロイド注射をする方法もあり、痛みを伴いますが効果を実感しやすい治療法です。
また、症状が急速に進んだ際はステロイドの全身投与を行う場合があり、こちらは副作用に注意をしていく必要があります。2022年6月に承認された新薬のJAK阻害薬は、ステロイド全身投与に比べ副作用が少なく長期使用が可能です。

50代女性の薄毛の治療薬


薄毛の治療薬には男女兼用のものや女性向けに処方されるものがあります。効果がある治療薬には副作用も少なからずありますので、きちんと医師に相談した上で処方してもらいましょう。
今回は以下の3つの治療薬をご紹介していきます。

ミノキシジル

育毛剤として聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。1979年にアメリカのFDAで経口降圧薬として承認された薬剤で、ミノキシジルには内服薬と外用薬があります。海外で降圧剤として使用した患者に、多毛という副作用が認められていました。
これは血管拡張作用のある薬剤で、毛包上皮の増殖を促す効果があり、日本皮膚科学会ガイドラインでもその有効性が明らかになっています。

スピロノラクトン

利尿作用による降圧剤で男性ホルモンを抑制する働きがあり、FAGA治療に有効です。ヘアサイクルを正常化して毛量を増やし、薄毛の進行を抑制し発毛を促進します。
また、男性ホルモンを抑制することで、過剰な皮脂分泌が抑えられニキビや毛穴の広がりの改善も期待できますが、高カリウム血症・急性腎不全など処方できない疾患があります。

パントガール

世界で初めて女性の薄毛改善効果が認められた治療薬です。パントガールは全身疾患に伴う脱毛以外に有効性があり、パントテン酸カルシウム・ケラチン・シスチンといった栄養素を頭皮に行き渡らせて、頭皮の環境を整えて薄毛を改善していきます。

50代女性が薄毛の治療を受けるクリニックを選ぶポイントは?


クリニックは治療の経過を見るためにも何度か足を運ぶ場所になります。担当の医師にきちんと症状や健康状態を伝える必要がありますので、何かあった際も相談しやすい人を選ぶと良いでしょう。
そして、自分が理解できなければ意味がありませんので、専門用語なども分かりやすく説明してくれるかもポイントです。ご自宅や職場の近くなど、通いやすい距離にあるかかりつけのクリニックを選びましょう。

編集部まとめ


薄毛は様々な原因で発症することが分かっていますが、1日100本以上毛髪が抜けるようでしたら皮膚科を受診する目安にしてみましょう。

対策としてマッサージなどで頭皮を柔らかくして、血行を促進することもおすすめです。精神的ストレスもダメージになりますので、上手に発散しましょう。

なかなか他人に相談しづらいデリケートなお悩みかと思いますが、気づいたら早めに医師に相談し、今すぐ対策できることがあれば是非取り入れてみてください。

参考文献

女性の薄毛とアデノシンによる改善効果

FAGA(女性男性型脱毛症)の症状分類(日本臨床医学発毛協会)

「かかりつけ医」の見つけ方・探し方|厚生労働省