核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメディアコーディネーターのアリスター・バーネット氏(左)がG7首脳に求める4つのポイントを説明した

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2023年5月19日に被爆地・広島で開幕する主要7カ国首脳会議(G7サミット)の焦点のひとつが、核軍縮のあり方だ。17年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)も5月18日に記者会見を開き、G7首脳に求める4つのポイントを説明した。

ただ、途中参加して途中退出した記者1人を除けば、最初から最後まで参加したのはJ-CASTニュース記者のみ。国際的にも知名度が高い団体の会見で、なぜこんな珍事が起きたのか。

G7首脳に向けた4つの「ICANの要求」を解説

記者会見が開かれたのは、国際メディアセンター(IMC)から徒歩10分ほどの雑居ビルにある会議室。約30分間にわたって、メディアコーディネーターのアリスター・バーネット氏がG7に向けたICANの取り組みを説明した。

取り組みの柱が、5月15日付で発表した声明「ICANの要求」だ。要求は(1)核兵器を使用するいかなる脅威も明確に非難すること(2)被爆者と面会したり平和記念資料館を訪問したりすることで、核兵器の使用が人道的に破滅的な結果をもたらすことを明確に認識すること(3)ロシアがベラルーシに核兵器を設置する計画を発表したことを受け、すべての核保有国が他国に核兵器を設置することをやめ、ロシアにその計画を中止するよう働きかけることで合意すること(4) すべての核兵器保有国と核軍縮交渉を行い、核兵器禁止条約に加盟するための計画を提示することで、ロシアの核の脅威と核対立のリスクの高まりに対応すること、の大きく4点。バーネット氏は次のように訴えた。

「G7首脳が、これまでと同様の中身のない約束で(サミット後に広島を)離れてしまうようなことがあれば、明らかに広島開催のG7サミットの失敗だし、歴史的にも、これまでにない機会が失われたと考えるべきだ。これまでも既存の条約への言及はあったが、そういったもののみにとどまり、具体的に核軍縮への前進を示すという文言が入らなければ、私たちとしてはG7サミットで果たされるべき責任が果たされたとは言えないと思っている」

会見はユーチューブでも同時配信されたが、視聴者は3人で、そのうち1人は現場から見ていたJ-CASTニュース記者だった。なぜ会見に注目が集まらなかったのか。市民の関心が低い可能性には、次のように反論した。

「世界的に言うと世論調査でも核兵器の使用、あるいは使用の威嚇について非常に懸念しているという意味で、関心を持っている市民はかなり増えているのは明らか。ロシア大統領や高官の発言で、そういった危機感が高まっているのは間違いない」

個別取材があるので「活動に対する関心はメディアからも寄せられている」

メディアが来なかった背景は、次のようにみている。

「この数日、かなりICANメンバーは各メディアの個別取材に答えている。国際メディアもそうだし、川崎(ICANの国際運営委員を務める川崎哲(あきら)氏)は国内のメディアの取材もかなり受けている。その意味では、ICANの活動に対する関心はメディアからも寄せられていると理解している」

5月17日夕には、同じ場所で川崎氏も共同代表を務める「核兵器廃絶日本NGO連絡会」が記者会見したばかり。18日の会見スタッフのひとりは、登壇した人は異なるがテーマが近かったとして、差別化が難しかった可能性を指摘していた。17日の会見の模様はNHK、時事通信などが報じ、東京新聞は18日に川崎氏のインタビュー記事を配信している。

ICANでは今後少なくとも2回は記者会見を開く予定。19日夜に被爆者代表が会見し、21日夕にカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(91)やICANの川崎氏らが会見する。それ以外にも幹部が随時取材に応じる、としている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)