さらば森田“排水溝”と言われ、狙い通りの歯並びを手に入れた歯列矯正方法とは
新型コロナウイルス感染症の流行で、マスク着用が日常となったこともあり、歯列矯正に対する関心が高まったようです。それに加え、未知のウイルスの流行と在宅時間の増加は、健康について、改めて考えるきっかけにもなりました。コロナ禍を機に歯列矯正を始めた方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、実際の治療経験も踏まえて、さらば青春の光の森田哲矢さんと歯科医師の牧野正志先生に、歯列矯正の治療方法と適応パターンについて対談していただきました。
インタビュー:
森田哲矢(芸人)
お笑いコンビ「さらば青春の光」のメンバー。相方は東ブクロ。テレビ出演はTBSテレビ『水曜日のダウンタウン』、読売テレビ『ダウンタウンDX』、日本テレビ『ニノさん』、フジテレビ『IPPONグランプリ』ほか多数。テレビドラマ『猪又進と8人の喪女』(カンテレ)では、主演&脚本監修を務めるなど、活躍の場を広げている。初の主演映画『大阪古着日和』が4月21日より公開開始。
監修医師:
牧野正志(日本矯正歯科学会 臨床指導医/認定医)
2006年徳島大学歯学部卒業。東京歯科大学で矯正歯科の研鑽を積む。その後、千葉県八千代市で矯正専門のクリニックである「まきの歯列矯正クリニック」を開業。質の高い矯正治療の提供だけでなく、歯科医師向けセミナーなども積極的に行っている。日本矯正歯科学会 臨床指導医/認定医。
森田さん
先生、今日はよろしくお願いします。
牧野先生
お願いします。森田さんの治療経過がわかる写真があるので、まずはそれを見ながら、お話ししていきましょう。
森田さん
とにかくガッタガタだったので、麒麟の川島さんには「マチュピチュ」、有吉さんからは「排水溝」って言われていました。
牧野先生
この写真は、装具を付け始めた頃ですか?
森田さん
そうですね。付け始めて1カ月経った頃ですね。
牧野先生
治療前に一番気になっていたことは、何ですか?
森田さん
歯の間に何か詰まるのもありますけど、見た目が恥ずかしいというか、単純にコンプレックスでした。
牧野先生
矯正治療を始めようと思った、具体的なきっかけを聞かせてください。
森田さん
なんとなくお金にも余裕ができたので、一番コンプレックスだった歯に、お金をかけようと思ったことがきっかけです。芸人の先輩であるバイク川崎バイクさんが矯正すると言っていたことも、後押しになりましたね。
牧野先生
実際には、どのような治療を行いましたか?
森田さん
下の前歯4本だけ、ワイヤーを付けて矯正しました。
牧野先生
下の前歯だけ矯正した理由は、何かありますか?
森田さん
出っ歯がキャラで、顔を覚えてもらうための特徴でもあったので、それを残すような依頼にしました。
牧野先生
それで下の歯だけ矯正したのですね。
森田さん
そうですね。そういった方はほかにもいますか?
牧野先生
上の歯もしくは下の歯、片方だけ矯正する方法を部分矯正と言います。
森田さん
名前は聞いたことありますね。噛み合わせが悪くなるから、やらない方がいいとも言われたのですが、本当ですか?
牧野先生
部分矯正は、噛み合わせを治すことができないので、噛み合わせに問題のない方、もしくは噛み合わせを気にしない方が治療する方法ではありますね。
森田さん
僕は下の前歯4本を、食べる時に使った覚えがないのでいいかなと思ったんですよね。
牧野先生
患者さんの希望に沿った治療であれば、そういった方法もいいと思いますね。
森田さん
実際に僕の治療状況はどうでしょうか?
牧野先生
すごく整っていると思います。森田さんは、どれぐらいの期間、治療されたのですか?
森田さん
今ちょうど1年経ったぐらいですかね。ワイヤーでの矯正が終わり、今はマウスピースを使っています。マウスピースの矯正についても教えてください。
牧野先生
マウスピースの矯正は、自己管理が苦手な人には向いていなかったりします。
森田さん
マウスピースは、自己管理が大事ですよね。
牧野先生
食事の時は、その都度外さなければいけないですからね。
森田さん
分かる。僕も食事の時に外したまま忘れて、もう2個失くしていますね。食事の時は、マウスピースを取るように言われたのですが、なぜ取らないとだめなのでしょうか?
牧野先生
マウスピースには、噛む能力がないからです。また、飲み物の熱の影響でマウスピースが変形してしまう可能性もあるからですね。
森田さん
破れる可能性もありますか?
牧野先生
破れることはないですが、飴玉を舐めて、ベタベタになる例は多いですね。
森田さん
そうかそうか。やっぱり食べる時は、よくないのですね。
牧野先生
はい。唾液の流れも悪くなって、虫歯の原因となるプラークが溜まりやすくなるので、食べたり飲んだりする時は外した方がいいです。
森田さん
なるほど。聞けてよかったです。
牧野先生
森田さんが使っているマウスピースは、矯正用ではなく、後戻り予防のためのリテーナーだと思うのですが、マウスピースは一日中入れていますか?
森田さん
瞬発力がいるような、ここぞと言う仕事の時は付けていないですが、普段は仕事の時も付けるようにしています。
牧野先生
えらいですね。結構サボっちゃう方が多いので。
森田さん
その気持ち分かります。確かに、気付いたら12時間ぐらい外したままの時もありますね。
牧野先生
久しぶりに入れると、結構きつくないですか?
森田さん
確かに違和感はあります。何か理由があるのですか?
牧野先生
実はちょっと動いて、戻ってしまっているのですよ。
森田さん
めっちゃ怖いやん。そうなんや。
牧野先生
矯正している方もしていない方も、基本的に歯って一生動き続けるものなのですよ。
森田さん
元の位置に戻ろうとしているってことですよね。
牧野先生
そうなのです。なので、せっかく綺麗にしてもリテーナーをサボると、少しずつ歯が動いてしまう可能性があるので注意が必要です。
森田さん
じゃあ、付けておく方がいいですね。
牧野先生
付けておいた方がいいと思います。
森田さん
今は歯の裏側に針金みたいなものだけあるのですけど、これはなんですか?
牧野先生
固定式のリテーナーだと思います。
森田さん
リテーナーにも種類があるのですね。
牧野先生
はい。リテーナーには取り外し式と、固定式のタイプがあります。固定式は、歯の裏側に細いワイヤーを接着して歯の後戻りを予防するものです。森田さんの場合、固定式に加えて、取り外し式のリテーナーも使っているのだと思います。
森田さん
両方使うメリットはあるのですか?
牧野先生
固定式のリテーナーは、取り外し式のリテーナーをサボった時の保険です。
森田さん
確かに、安心感が違いますね。リテーナーを含め、マウスピースは取り外しのタイミングとか、自己管理が重要だということですね。ありがとうございました。
牧野先生
矯正治療中に辛かったことや良かったことなど教えてください。
森田さん
ワイヤーの金具が下唇の裏側に当たって、めっちゃ痛かったです。
牧野先生
口内炎にもなるくらいですからね。
森田さん
ネタ番組のコント中に、血まみれになったこともありました。先生に相談したら、義歯具の処方やコーティングをしてくれたので、そこからは楽になりました。
牧野先生
食事のしづらさとかはありましたか?
森田さん
そこまで関係なかったです。
牧野先生
歯磨きはどうでしたか?
森田さん
食べかすがワイヤーに詰まるのも嫌だったので、入念にやりましたね。
牧野先生
矯正治療を始めると、歯のことが気になるようになるのは大事なポイントですね。矯正する前は歯のことを意識していなかった人も、歯を守らなきゃいけないという、意識に変わる人が多いです。
森田さん
僕も銀歯を白くしたいとか、意識するようになりましたね。
牧野先生
最近はミドルエイジの男性でも、コンプレックスの克服やアンチエイジングを目的に、矯正治療をする方が結構増えていますよ。
森田さん
良い傾向ですね。
牧野先生
森田さんは、喫煙はされますか?
森田さん
喫煙はめちゃくちゃします。
牧野先生
矯正治療中って、本数は減りましたか?
森田さん
先生からも減らすように言われたのですが、そこだけは我慢できず減らせていないです。
牧野先生
喫煙は体に悪いだけでなく、歯の健康にも良くないので、できれば少しずつ減らしていただけると良いと思いますね。
森田さん
減らさないと、どのようなリスクがあるのですか?
牧野先生
喫煙すると、血管が収縮して血行が悪くなります。結果的に歯周病の悪化や、矯正中の歯の動きの悪化に繋がると言われています。
森田さん
そういうことが、あるのですね。
牧野先生
はい。矯正治療を受ける医院は、どうやって決められたのですか?
森田さん
通っていた歯医者の先生に、矯正専門の医院を紹介してもらいました。
牧野先生
矯正歯科の専門のほうが、安心できましたか?
森田さん
そうですね。何かあったらすぐ相談できたので、安心でした。
牧野先生
矯正治療は長期的な付き合いになるので、医師とのコミュニケーションがすごく大切です。治療へのモチベーションにも、直結しますからね。
森田さん
僕の場合は、信頼する先生からの紹介だったので、そこは安心でしたね。出っ歯を残すという無茶な依頼にも協力的だったのが、大きかったです。治療のメリット・デメリットについて、ちゃんと説明してくれたことも安心に繋がりました。
牧野先生
説明をしっかり聞けるのって、大事ですよね。
森田さん
治療方法も、バレにくいという理由で、マウスピース矯正にしようかと思ったんですよ。でも、僕の場合はマウスピース矯正だと時間がかかると言われたので、最終的にはワイヤー矯正を選択しました。
牧野先生
森田さんの先生は、ライフスタイルを考えてくれる先生なので、森田さんが目立たない方を重視すると言っていたら、マウスピース矯正になっていたかもしれないですね。
森田さん
先生もおすすめするとしたら、ワイヤーでの矯正ですか?
牧野先生
ライフスタイルや、その人の管理能力によって変わりますね。マウスピース矯正に向いている歯並びと、ワイヤー矯正に向いている歯並びもあるので、それを提案した上で、選んでもらっています。
森田さん
裏側のワイヤー矯正は、どうなのでしょうか?
牧野先生
裏側のワイヤー矯正は、口を開けている時間や処置時間が長くなるので、処置自体が大変ですね。
森田さん
歯の裏側を見ないとだめですもんね。
牧野先生
そうなのです。治療期間自体は、ほかの治療と大きな変わりはないです。ただ、処置時間を長く確保できる人じゃないと、継続した治療が難しい点には注意が必要ですね。
森田さん
マウスピース矯正やワイヤー矯正、それぞれの治療期間と料金の相場を知りたいのですが、どうですか?
牧野先生
治療期間は装具による変化はなく、平均すると2年がスタンダードです。結構難しいケースでは、3年かかる人もいます。部分矯正では、1年未満で終わることもありますね。費用相場は、だいたい100万前後と言われています。
森田さん
ワイヤー矯正とマウスピース矯正は値段もだいたい一緒なのですか?
牧野先生
そうですね。表側のワイヤー矯正や、マウスピース矯正は100万円前後です。裏側のワイヤー矯正には、専門的なテクニックも必要になるので、費用が1.5倍ぐらいになる場合もあります。
森田さん
少しずつコロナも収まって、マスクを外す機会が増えると、矯正に対して一歩踏み出しにくくなる人もいると思うのですが、おすすめの矯正方法はありますか?
牧野先生
そうですね。現状はマウスピースの治療が多くなっていますが、古い歴史があるのはワイヤー矯正なので、見た目の問題はありますが、ワイヤー矯正治療をおすすめします。
森田さん
症例数や実績が多いということですもんね。
牧野先生
マウスピース矯正もしっかり使用すれば、同じように治療が可能です。ただ、人間の心ってどこかサボっちゃうところがあるので。
森田さん
気持ちは、わかります。
牧野先生
これから会食なども増えて、マウスピースを外す時間が増えることを考えると、ワイヤー矯正のほうが楽なのかなとは思います。
森田さん
ワイヤー矯正は強制的に1日24時間ずっと付けていますしね。
牧野先生
そうですね。ただし、ワイヤー矯正にも注意点があります。1カ月に1回、ちゃんと歯医者に行かないといけないことです。2~3カ月受診するのを飛ばしちゃうと、治らないこともあります。
森田さん
あー、そういうことか。
牧野先生
つまり、ワイヤー矯正は、1カ月に1回しっかり歯医者さんに行くこと、マウスピース矯正はサボらずに使用することが大切です。
森田さん
どちらにもメリット・デメリットがあるので、しっかりと医師と相談した上で、治療方法を選択することが大切だということですね。ありがとうございました。
編集部より
健康的な食生活を維持するためには、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことが推奨されている一方で、この目標を達成している日本人は半分にも満たないと言われています。コロナ禍でマスクをしている間に矯正をしたという方も多いようですが、今はマスクを外す時に向けて矯正をする人も増えてきています。歯列矯正がもたらす効果は、見た目や噛み合わせの改善、虫歯の予防、そして歯の健康意識の向上です。この記事が、歯列矯正について深く知り、歯の健康について考えるきっかけになることを願います。