神奈川県中央部で「ツインシティ」のまちづくりが進んでいます。ここには東海道新幹線の新駅構想や相鉄いずみ野線の延伸構想などがあり、さらに相模線複線化を求める声も。神奈川県が2022年度も鉄道会社へ「要望」を行いました。

新駅や新線構想が「目白押し」の「ツインシティ」

 神奈川県や県内市町村、経済団体などで構成される「神奈川県鉄道輸送力増強促進会議」が、鉄道各社に対して2022年度に行った“要望”の結果が、2023年4月に公表されました。 東海道新幹線の新駅をはじめとした、県の中央部で進む「ツインシティ」関連の鉄道整備についても要望結果が出ています。


東海道新幹線(画像:写真AC)。

 東海道新幹線の新横浜〜小田原間は約51kmにわたって駅が存在しませんが、その中間となるJR相模線の倉見駅(神奈川県寒川町)付近に新駅を設置する構想があります。

 神奈川県では、リニア中央新幹線の橋本駅を「北のゲート」、東海道新幹線の新駅を「南のゲート」に位置づけており、東海道新幹線新駅の受け皿となるまちづくり「ツインシティ」の整備が推進されています。これは寒川町倉見地区と相模川を挟んで対岸に位置する平塚市大神地区に橋をかけて一体的に整備するもの。平塚市大神地区には「ジ・アウトレット湘南平塚」が2023年4月28日に開業したほか、土地や道路の造成が進んでいます。倉見地区は土地利用を検討している段階です。
 
 この倉見地区には、東海道新幹線の新駅以外にも、相鉄いずみ野線を湘南台から延伸する構想があるほか、倉見駅を通る相模線の複線化を求める声もあります。「東海道新幹線の新駅」「相鉄いずみ野線の延伸」「相模線複線化」が実現すれば、この地域を取り巻く鉄道の利便性は劇的に向上することになります。

新線や新駅の要望に鉄道事業者の回答は?

 東海道新幹線の新駅に関して、JR東海は「新駅の設置は列車の到達時分の延伸やダイヤ構成に影響を与え、結果として多くのお客様の利便性を損ねることになるため、現時点で新駅設置は極めて困難」と回答。しかし、「中央新幹線が開業し、東海道新幹線のダイヤ構成に余裕が生まれれば、新駅設置の余地が高まると考えています」としており、「現在は新駅設置可否について検討できる段階ではありませんが、新駅周辺のまちづくりの検討にあたり、助言などを求められれば協力していきます」という見解を示しています。これは従来からのスタンスと変らないようです。

 相鉄いずみ線のツインシティ延伸をめぐっては、湘南台から慶応義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)までの約3kmを第一期区間(先行区間)、SFCから倉見までの約5kmを第二期区間として検討が行われており、相鉄も「いずみ野線延伸検討協議会」に参加しています。延伸の要望に対して相鉄は「更なる需要を期待するとともに、今後も事業性確保を大前提として検討を進めていきます」としたうえで、「自治体におかれましても、上下分離方式の導入や、道路財源などを投入するなど、事業実現に向けた具体的整備手法の確立を進めていただくことをお願いします」と回答しています。

 相模線の複線化についてJR東日本は「相模線の利用状況などを勘案すると、莫大な設備投資を必要とする複線化については、難しい状況にあると考えています。今後の沿線の開発状況や利用動向などを総合的に判断し、長期的に検討する必要があると考えています」と返答しています。
 
「ツインシティ」をめぐる鉄道整備構想は、今後のまちづくりの進展と鉄道需要の創出が実現の鍵になりそうです。