矯正治療における「セカンドオピニオン」の目的やタイミング、メリット・デメリットを歯科医が解説

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一般的な治療と比べて費用も期間もかかる「矯正治療」を受けるときは、医院選びや治療法・矯正装置の選択も普段より慎重に進めたいと誰しもが考えるでしょう。その一方で、専門知識がないため、ドクターの提案や治療のやり方が本当に正しいのか・妥当なのかの判断は難しいところです。今回は、そのような場合に有効な「セカンドオピニオン」について、メリットやデメリット、注意点などを「つみき矯正歯科稲毛」の戸嶋翼先生に解説していただきました。

矯正歯科の治療でセカンドオピニオンは受けられる? セカンドオピニオンの正しい目的やメリット・デメリットを歯科医が解説

編集部

まず、「セカンドオピニオン」とはどのようなものか教えてください。

戸嶋先生

セカンドオピニオンは、最初に診てもらった、あるいは治療を受けた歯科医とは別の歯科医に治療の内容や経過などについて意見を求めるものです。患者さんが自身のお口の状態や治療法、さらに治療期間や費用について、より多くの情報を得ることができる手段の1つと言えます。

編集部

矯正治療でもセカンドオピニオンを受けることは可能でしょうか?

戸嶋先生

もちろん可能です。セカンドオピニオンは患者さんの権利として認められており、多くの歯科医も患者さんがセカンドオピニオンを求めることに一定の理解を示しています。とくに歯列矯正の場合は、受診する矯正歯科によって治療方針や治療内容、選択できる装置などが異なるため、どの治療法が自分にふさわしいか悩む人も少なくありません。そのようなときにセカンドオピニオンは非常に有効な手段だと思います。

編集部

矯正治療でセカンドオピニオンを受けると、どのようなメリットがありますか?

戸嶋先生

最初の歯科医とは違う歯科医の視点から、多くの情報を得られる点です。とくに矯正歯科の場合は、医院によって取り扱う矯正装置やそれに対応できる症例などが異なります。また、同じ装置で治療する場合でも「A歯科医院では抜歯するけど、B歯科医院では抜歯しない」など治療内容が違うこともあります。セカンドオピニオンを受けると、このように様々な視点から装置や治療法が提案されるため、患者さんにとっては選択の幅が広がるのもメリットでしょう。

編集部

「治療の選択の幅が広がる」というのは大きなメリットですね。一方で、セカンドオピニオンにもデメリットはあるのでしょうか?

戸嶋先生

デメリットとしては、治療費とは別に費用がかかってしまう点が挙げられます。また、患者さんによっては、他院を受診する労力や時間的な負担などもデメリットになるかもしれません。とくに「労力」という点では、最初に診てもらった歯科医との信頼関係が崩れてしまうリスクもあります。歯科医の多くは患者さんのセカンドオピニオンに一定の理解を示していますが、稀に理解が得られないケースもあるようです。したがって、相手(前医)の性格や様子などもよく見て検討していく必要があります。

矯正治療のセカンドオピニオンはいつ受ける? セカンドオピニオンのタイミングや流れが知りたい!

編集部

矯正治療のセカンドオピニオンは、どのタイミングで受けるものなのでしょうか?

戸嶋先生

大きく分けると、まだ装置はつけていない「治療開始前」と、すでに装置はついている「治療開始後」の2パターンがあります。

編集部

治療開始前のセカンドオピニオンでは、具体的にどのようなお悩みや相談が多いのでしょうか?

戸嶋先生

「前の先生に”抜歯が必要”と言われたけど、できれば抜きたくない」「ほかの装置で治療ができないか」といったお悩みやご相談が多いですね。ほかにも「1件目の歯医者さんはマウスピース矯正では治せないと言われたが、2件目ではできると言われた」といったケースもあります。

編集部

治療後、装置がすでについた状態でのセカンドオピニオンでは、どのようなお悩みが多く聞かれるのでしょうか?

戸嶋先生

多くは「前医の治療に納得がいかない」といったご不満やお悩みです。具体例には「なかなか治療が終わらない」「次で治療が終わると言われたが、これで本当に終わりなのか?」などが挙げられます。ほかにも、「治療前と治療をはじめてからで先生の態度が違う」など、担当医との相性や信頼関係に疑問を感じてセカンドオピニオンを受けられる人もいらっしゃいます。

編集部

これらの悩みや不満などでセカンドオピニオンを受けると決めた場合、どのような流れで手続きをおこなえばいいのでしょうか?

戸嶋先生

すでに装置を着けて治療が始まっている場合、少し言いにくいと思いますが担当医にセカンドオピニオンを受けたい旨を伝える必要があります。治療中の人はすでに歯が動いてしまっているので、最初の歯並びの状態がそのままではわかりません。そのため、レントゲン写真や口腔内写真、模型など初診時の歯並びの状態がわかる資料を担当医に用意してもらうようにしてください。

編集部

治療開始前にセカンドオピニオンを受ける場合も、前医にその旨を伝えた方がいいのでしょうか?

戸嶋先生

まだ装置が歯についていない時期であれば、先にかかった先生にとくに伝える必要はないでしょう。初診相談であれば、その際にもらった資料をそのまま次の歯科医院に持参していただいても問題ありません。

矯正治療のセカンドオピニオンで確認しておきたい注意事項セカンドオピニオンにかかる費用の目安は?

編集部

セカンドオピニオンを受ける前にやっておいた方がいいこと、注意しておきたいことはありますか?

戸嶋先生

限られた時間で自分の不安や悩みを解決するためには、あらかじめそれらの要点をまとめておくことが大切です。自分の思いや考えに前医がどう答え、それに対し自身がどう感じたのか、何を不安に思ったのかを時系列で整理しておきましょう。また、聞きたいことや疑問に思っていることをあらかじめメモしておくのも方法の1つです。

編集部

セカンドオピニオンの費用の目安を教えてください。

戸嶋先生

セカンドオピニオンの費用は受診する歯科医院によって大きく異なるため、事前に受診予定の医院に確認しておくことをおすすめします。おおよその目安は5000円~1万円です。また、すでに治療中でレントゲンや模型などの資料を前医に準備してもらう場合は、資料の作成費用が別途かかることもあります。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

戸嶋先生

矯正治療は費用も期間もかなりかかるため、満足のいかない結果になるとそれが後々の人生にまで影を落としてしまうこともあります。したがって、初診相談の時点で疑問を抱いたら別の矯正歯科にも意見を求めて、自分が納得できる医院を探すことが肝心です。治療内容や費用もそうですが、先生との相性や通いやすさなども考慮しておくと治療開始後のトラブルも少ないでしょう。

編集部まとめ

セカンドオピニオンは自身のお口の状態や治療法、矯正装置についてより深く理解でき、選択の幅を広げることができます。一方で、すでに治療が始まっている段階でセカンドオピニオンを受ける場合、担当医への申告や費用面など患者側の労力や負担が大きくなるというデメリットもあるようです。こうしたリスクを回避するためにも、最初の歯科医院選びでは複数の医院で話を聞き、自身に合った歯科医院を見つけていきましょう。

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