この記事をまとめると

■「橋の上は駐車禁止」という認識が広まっている

■しかし道路交通法などを確認しても、そのような事実はない

■観光名所になった駐車禁止の橋での違法駐車がウワサの出所の可能性

「橋の上は駐車禁止」という決まりはない

 SNSなどでは「橋の上は駐車禁止なんだよ」という指摘を見かけることがある。はたして、そうした指摘は正当なのだろうか。

 たしかに道路交通法では、停車及び駐車を禁止する場所が定められている。法律によって定められた地点においては道路標識がなくとも駐車禁止の違反をとられてしまってもおかしくないのだ。

 具体的には、どのような場所が駐車禁止に当たるのか。愛知県警がホームページに掲載している情報を引用してみよう。

 1. 道路標識又は道路標示により停車及び駐車が禁止されている道路の部分

 2. 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内(通常は路面電車の線路部分)、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル

 3. 交差点の側端又は道路のまがり角から5メートル以内の部分

 4. 横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5メートル以内の部分

 5. 安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分

 6. バス停から10メートル以内の部分

 7. 踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分

 参考:愛知県警HP
(https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/koutsu/chusha-shinsei/chusha/chushadekinai.html)

 たしかに「トンネル」、「勾配の急な坂」、「坂の頂上付近」といった場所については標識がなくとも駐車禁止となっているわけだが、どこを見ても「橋の上」に該当するような場所は見当たらない。

 しいていえば、勾配の急な坂になっている橋であれば駐車禁止区間に該当するかもしれないが、橋の上というだけでは条件を満たさない。

橋の上が駐車禁止の条件を満たすこともある

 また、「道路(車道)の左側端に沿う等正しい方法で駐車した場合、車両の右側の道路(車道)上に3.5メートル以上の余地がない場所」は無余地場所として駐車禁止となっている。

 道幅が狭い橋であれば、この条件を満たすこともあるだろうが、やはり橋の上だからという理由で駐車禁止になることはないといえる。

 では、橋の上は駐車禁止という噂はどこから生まれたのだろうか。

 たとえば、平成元年(1989年)に開通した横浜ベイブリッジにおいては、眺めがいいデートスポットということで当初は路肩に駐車するクルマが少なくなかった。バブル全盛期であり、いわゆるデートカーを路肩に止めて夜景を眺めるカップルが中心だったという印象がある。

 ただし、ベイブリッジは首都高速道路のため、橋の上に限らず全線において故障以外での駐停車は原則禁止とされている。それを根拠にベイブリッジでの駐停車禁止が強く啓蒙されてきたという経緯がある。

 同様に、観光スポットとなっている橋については一般道であっても標識によって駐車禁止となっていることが多い。

 こうした背景もあって、映える写真が撮れたり、眺めがよかったりするような橋の上は駐車禁止という認識が広まった可能性が考えられる。

 まとめると、橋の上という条件だけでは駐車禁止とはいえない。

 駐車禁止の標識がなく、十分な余地があればクルマを駐車したからといってそれだけで道路交通法違反と指摘はできないといえる。

 ただし、橋の上というのは車線の余裕がないことが多く、駐車していると交通の流れを妨げるばかりか、一歩間違えれば落下事故につながるような危険性もある。クルマの故障などの緊急事態で止まってしまうのは仕方ないとしても、可能な限り橋の上での駐停車は避けるが吉と認識しておくべきだろう。