男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

―果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「男が朝、慌てて帰った理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:3度目のデートでキス。「付き合おう」と言って家まで来たのに、翌朝に男が慌てて帰った理由




日差しが眩しくて、僕はうっすらと目を開ける。すると見慣れない天井がパッと目に入ってきた。

「ん…?あれ…?」

すると、パーカを羽織った加奈子の姿がぼんやりと浮かび上がってきた。

「礼央、おはよう♡」
「あぁ…加奈子ちゃんおはよう」

目を擦りながら、上半身を起こす。しかしそれと同時に、僕は驚いてしまった。

「シャワー浴びる?」

加奈子の言葉に、僕は急いで首を横に振る。

「…いや、大丈夫ありがとう。ごめん、用事があるから早く帰らないと」
「そうなの?」

とりあえず服を着て、僕はささっと加奈子の家を後にした。

― ナシだな…。

そう思いながら……。


A1:きちんとしている、素敵な女性だなと思っていた。


加奈子と出会ったのは、友人の紹介だった。最初は男だけで飲んでいたのだけれど、友達が加奈子たちを呼び、一緒に飲むことになった。

その時は「綺麗な人だな」くらいの印象しかなかったけれど、同じメンバーでもう一度飲むことになり、僕たちの距離はグッと近くなった。

なぜなら、この時の加奈子との会話がとても印象的だったからだ。

「礼央くんは、何の仕事をしているの?」

気さくに話しかけてきてくれた加奈子に対し、僕もフランクに返事をする。

「僕は不動産会社の経営をしているよ」
「そうなんだ!実は今家を買おうかなと思っていて…。相談に乗ってもらえたりする?」

多分僕より年下か同じ年くらいなのに、家を買うことを考えている加奈子を素直に尊敬した。

― めちゃくちゃしっかりしてるじゃん。




「その年でもうマンション購入を考えているの?すごいね。でもいいと思う。何かあれば言って。相談に乗るよ」

純粋に、何か手伝えることがあればいいなと思った。

「本当に?ありがとう!嬉しい。…連絡先教えてもらってもいい?」
「うん、もちろん」

こうして連絡先を交換した僕たち。気になったので、僕は翌日加奈子を食事に誘った。そしてすぐに初デートをすることになった。




「礼央くんって、カッコいいだけじゃなくてお店まで詳しいんだね。すごい♡」
「いやいや、普通だから。全然すごくないよ」

褒められて嫌な男性はいない。しかも加奈子の褒め方は決して下心がある感じではなく、純粋に言ってくれているのが伝わってきた。

「初めて会った時から思ってたけど、加奈子ちゃんってすごく華やかだよね?」
「そうかな?ジュエリーのおかげかも(笑)」

そう言われて初めて気がついたけれど、加奈子は華やかなアクセサリーを身につけている。値段はわからないけれど、高そうな物であることに違いはない。

「たしかに、キラキラしてる(笑)。でも本当に加奈子ちゃんは偉いよね。仕事も頑張っていて」
「仕事が生き甲斐だからね。あと働くのが好きなんだよね。礼央くんは?」
「僕も仕事は好きかな。自分で会社を立ち上げてから楽しくて…」

僕の仕事の話にうんうんと頷きながら、まっすぐこちらを見つめながら聞いてくれている彼女は、かなりの聞き上手だった。そのせいか、つい饒舌になってしまう。

「ってごめん!仕事の話ばかりしてもつまらないよね」
「全然。礼央くんの業界のことあまり知らないから、むしろ聞いていて楽しい!」

仕事の話をすると、つまらなさそうな顔をする女性はたくさんいる。でも加奈子とは仕事の話もできるし、他の話もできる。

― この子、しっかりしていて素敵だな…。

「加奈子ちゃんって、最高だね」

加奈子に対する好感度は上がる一方だった。だから僕はこの日の帰り際、すぐに会う約束をした。

「またご飯行かない?」
「もちろん」

この時、僕の加奈子に対する好意は本物だった。しかし彼女の部屋に行ったときに、あることに気がついてしまったのだ…。


A2:部屋に女性の本質が詰まっていたから。


この後もう一度デートをし、3度目のデートもすぐにやってきた。この日もいい感じに飲み、僕たちの距離は近くなっていく。

「礼央くんの好きなタイプって、どんな子なの?」
「何かに対して、一生懸命頑張っている子かな」
「頑張っている子…?」
「そう。加奈子ちゃんみたいに、仕事を頑張っていたり。頑張る目的は何でもいいんだけど」

加奈子は、尊敬できる女性だった。

仕事を頑張っていて話が通じるし、美人なだけでなく頭が良い。スマートな女性は素敵だと思う。

「言いたいこと、わかる気がする。私も熱意がある人、好きだから」
「お互い、タイプが一緒だね」

今日で、もう3度目のデートだ。何となく僕たちは、店を出て加奈子の家へと行く流れになった。

「うちでいいの?」
「うん。加奈子ちゃん家のほうが近いし」

加奈子の家は店から徒歩5分くらいのところにあり、近かった。しかし歩き始めた途端に、加奈子が急に真顔になった。

「でも付き合う前の男性を家に上げたくなくて……付き合うってことでいいのかな?」

もちろん加奈子的には確認しておきたかったのだろう。その気持ちはわかるし、僕もいいなと思っていたので答えはYESだった。

「うん。いいよ」

ただ、この言葉を翌日に僕は慌てて取り消すことになる…。




加奈子の家に着くと、準備があるからと玄関で待つように言われてしまった。

「ごめん!10分だけ玄関で待ってて」

スマホをいじりながら待っていると、加奈子が笑顔でやってきた。

「ごめんお待たせ。狭い部屋ですが…」
「お邪魔します…」

そう言って部屋へ上がらせてもらうと、僕は驚いてしまった。

決して広くはない部屋に、ブランド物のバッグやアクセサリーが仰々しく並べられていたからだ。

「これ全部加奈子ちゃんの私物?」
「私物って(笑)そうだよ」
「カバンの数、すごくない?」

バッグだけではない。部屋の隅には、ハイブランドの箱が何個も積み重なって置かれている。

でもそれが部屋の狭さと不釣り合いで、妙に浮いて見えた。

「中身が入っていないやつもあるよ。ただの箱だけとか」
「女の子の部屋って感じがするわ〜。すごいね」
「そんなジロジロ見なくていいよ」

ただもう時間が遅かったこともあり、そのまま僕たちは眠りについた。しかし翌朝、目を覚まして僕はギョッとした。

夜は暗くて見えなかったけれど、クローゼットからは荷物がはみ出している。

物が溢れ返り、狭い部屋にブランド物がこれ見よがしに並べられている…。

それはまるで、加奈子の心の中を映し出しているようにも見えた。




― この子って、実は満たされていないのかな?

ブランド物が悪いわけではない。僕自身もハイブランドは好きだし、頑張っている自分へのご褒美に買っているのだろう。

でも部屋の狭さと合っておらず、ブランド物に投資する前に、まずは生活を見直すべきなように思えた。

そして何よりも、掃除が行き届いているようには見えない。

部屋が汚い人が、僕は生理的に無理だ。

― めちゃくちゃアンバランスな生活じゃん…。

そう思うと急に冷めてしまうと同時に、埃を吸い込みたくなくて僕は慌てて部屋を飛び出したのだった。

「外見を磨く前に、丁寧な生活を目指すとか、部屋を綺麗にすることから始めるべきだなのでは?」

そんなお節介なことを思いながら…。

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