「小児がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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がんは年齢に関係なく発症する病気であり、「がん」と付く病名もその種類はたくさんあります。今回はその中の1つである子供の時に発症する「小児がん」をまとめてみました。

小児がんと聞くと白血病のイメージが強いですが、白血病は小児がんの1つであり、白血病以外にもあります。

小児がんは些細なことがきっかけで起こる病気であるため、もしもの時に備え知識を深めておきましょう。

小児がんとはどんな病気?

小児がんとはどのような病気でしょうか?

小児がんは、一般的に幼少期の子供にみられるがんのことです。実は小児がんという病名はなく、様々ながんの病気を総合的に「小児がん」といいます。小児がんと呼ばれる病気の種類は主に以下のものです。

白血病

リンパ腫

脳腫瘍

神経芽腫(しんけいがしゅ)

胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)

Wilms腫瘍/腎芽腫(ウィルムスしゅよう/じんがしゅ)

この中で血液のがんである白血病は最も罹患率が高く、小児がん全体の約40%を占めます。続いて、脳腫瘍が16%・リンパ腫が9%・神経芽腫が約8%・胚細胞腫瘍が7%です。
小児の白血病の多くは急性リンパ性白血病であり割合として約70%です。約25%は急性骨髄性白血病といわれています。急性と付くだけあり病気の進行が速く、早期発見・治療がポイントになります。

小児がんにみられる症状があれば教えてください。

前述のとおり小児がんは様々あるため、発症した病気によって現れる症状は異なります。しかし一般的にみられる症状もあり、以下がその症状です。

長期的に続く発熱

頭痛

リンパ節の腫脹

疼痛(骨・関節)

しこり(胸・おしり・筋肉)

体重減少

食欲低下

(白血病の場合)原因不明のあざ

(脳腫瘍の場合)視力低下

貧血症状(顔色不良、息切れ動悸、活動度の低下)

出血傾向(紫斑、鼻出血、下血、関節出血など)

これらがすべて小児がんに当てはまるわけではありません。風邪だと思い病院へ受診したら、小児がんを発症していたケースもあります。小児がんに限らず病気は何かしらの前兆が付き物です。
また、他の病気でも似た症状は現れるため、自己判断はせず少しでもおかしいと感じたら速やかに病院へ受診しましょう。

小児がんになってしまう原因はありますか?

小児がんになる原因はまだ不明な部分が多いですが、主に成長や発達の過程で何らかの遺伝子異常が起こり、細胞が変異し増殖して発症してしまうことがあると考えられています。なお、成人のがんは生活習慣により発症していることが多いです。

小児がんは何歳くらいの子供がなることが多いのでしょうか?

必ずある年齢で小児がんになると決まってはいませんが、0~14歳までの子供が小児がんに罹患しやすいです。小児がんに罹患する子供は年間で2,000~5,000人になり、子供の約10,000人に1人と非常に少ないです。
一方、成人のがんは2人に1人の割合と小児がんと比べると非常に多くなっています。しかし、小児がんは進行が早い上に発見することは難しいため、早期発見・治療が重要な鍵となります。

小児がんの受診目安や検査方法

小児がんの初期症状を教えてください。

小児がんの多くは初期症状がないことが多いです。その中でも白血病は初期から症状が現れるため発見しやすい傾向にあります。主な症状として、貧血症状(顔色不良、息切れ動悸、活動度の低下)です。
さらに出血傾向(紫斑、鼻出血、下血、関節出血など)や発熱もあります。白血病はがんとなった血液細胞が異常なスピードで増殖をし、正常な血液細胞が減るため体に異変が現れやすくなっています。子供は病気になるスピードも早いですが、回復するスピードも早いです。
治療してもなかなか改善しない場合は大きな病気が隠れている可能性があります。正確な診断をするにも詳しい検査が必要です。

小児がんが進行してしまうとどうなりますか?

進行するスピードは、がんによって異なります。前述でもお話ししましたが、小児がんの多くは発達や成長の過程で遺伝子に異変が起こり、がんと化した細胞が増殖します。増殖スピードも速いため、転移する可能性も少なくありません。
また、小児がんの多くは進行すると一気に症状がでるものが多いのも特徴です。神経芽腫は交感神経になる細胞からできるがんであり、初期は無症状なことがほとんどです。しかし、進行するとお腹が腫れたりしこりができたりします。

小児がんの受診目安を知りたいです。

前述でもお話をしましたが、小児がんは特徴的な症状がないため気付くケースはまれです。しかし、以下のような症状がみられる場合は受診の目安にしてみてください。

風邪のような症状がいつまでも治らない

痛みが継続している

治療前よりさらに病状が悪化した

小児がんに罹患した子供は風邪のような症状が続く・痛みが続いているなどの前兆が2ヶ月以上続いていることが多い傾向にあります。しかし、がんによって前兆は様々であるため疑いがある場合はよく思い出してみてください。
些細なことからがんが発見されるため、小さな異変を見逃さずおかしいと思ったら速やかに小児科へ受診しましょう。

小児がんを診断する際はどのような検査方法がありますか?

保護者様よりお子様の症状を聞いたり見たり触ったりして、小児がんと医師が疑った場合は診断を確定するために様々な検査が行われます。以下が小児がんを診断するために行う検査です。

血液検査

腫瘍マーカー検査

画像診断(レントゲン・超音波・CT・MRI・PETなど)

腫瘍生検

(血液や・リンパのがんが疑われる場合)骨髄検査

疑われるがんによって検査は異なるだけでなく、より正確な診断をするため小児がんを専門とする病院で詳しい検査をすることが多いです。がんの種類が確定したらがんがどの程度体の中で広がっているかの検査もします。
小児がんの検査は診断を確定する以外に治療中・治癒後も検査を行い、経過観察を慎重に行っています。

小児がんの治療方法や治療中・治療後の過ごし方

小児がんではどのような治療を行うのでしょう?

小児がんの治療は、手術・放射線治療・薬物治療・造血幹細胞移植などの集中的治療が基本になります。この中からがんの種類によって治療方法を組み合わせて行います。

手術:がん化している部分を切除

放射線治療:がん化した腫瘍に放射線を当てがん化した細胞の遺伝子を破壊

薬物治療:抗がん剤治療

造血幹細胞移植:血液や免疫不全のがんに対し行う治療。上記治療で効果が期待できない時に骨髄などの移植を行い完治を目指す

小児がんの生存率はどのくらいですか?

小児がんが原因で命を落とす子供もいるのは事実です。5歳以上の子供の死因の1位はがんが原因になります。
しかし、小児がんに罹患したからといって必ず命を落とすわけではありません。適切に治療した子供の70~80%は治癒しています。小児がんは発症まで発見がしづらく、増殖スピードも速いというマイナス点はあるものの、薬物治療や放射線治療での効果が非常に高いのも特徴の1つです。
また医療も進歩していることから生存率も必然的に高くなりました。しかし、1度治癒したからといって再発しないわけではありません。再発を未然に防ぐためにも定期的な検査が必要になります。

小児がんの治療中・治療後の過ごし方を教えてください。

小児がんの治療は身体的・精神的に辛いことが多いです。そのため、お子様によっては辛いことをいわず黙っていることもあります。辛い場合、痛みを緩和するケア(緩和ケア)もあるため、お子様が苦しさを訴える・苦しそうにしている姿をみた場合は保護者様から医療スタッフに伝えましょう。
家族の支えはもちろん、友人の励ましも支えになります。お手紙や動画など持参しても良いのか治療がはじまる前に確認しておくと良いでしょう。治療後は感染対策をしながら過ごしてください。治療により体力も免疫も下がっているため、些細なことでも大事になる可能性があります。
また、小児がんに罹患する子供の多くは学校に通っていることが多いですが、どのタイミングで復学するのかも決めなくてはなりません。しかし、治療のために休んでいたこともあり授業についていけるのか不安を抱えているケースも少なくありません。その不安を埋めるためにも、先生との相談の他にお子様とも話し合うことが大切になります。
小児がんは本人はもちろん、家族への負担が大きいことも事実です。1人で抱え込まず、患者会やソーシャルワーカーなどといったお子様が辛さや不安を分かち合える環境に身を置くことも必要です。様々な方の手を借りながら、お子様とともに一緒に乗り越えていきましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

医療が進む前までは小児がんは治らない病気といわれていました。しかし、現在は医療環境も整い、小児がんに罹患しても治癒する確率が格段に上がっています。そのため、治らない病気ではありません。
しかし、発見がしづらく気付いた時にはすでに病状が進行しているのも事実です。少しでも異変を感じたら速やかに小児科へ受診し、1日でも早く適切な治療を行うことが重要です。また、安心して治療後も生活ができるよう長期的にしっかり外来にてフォローアップしてくれますので、不安を抱えたままにせずご相談ください。

編集部まとめ


0~14歳の子供が発症する小児がんですが、小児がんはあくまでも総称であり小児がんの種類は様々です。

がんと聞くと治らないイメージが強いですが、しっかり治療を行えば小児がんは70~80%は治癒することが確認されています。

しかし治癒しても再発する可能性があるため、長期的なフォローアップは欠かせません。

小児がんのきっかけは些細なことからはじまります。少しの異変で早期発見に繋がるため、おかしいと思ったら速やかに小児科へ受診しましょう。

参考文献

小児がんについて(がん情報サービス)

小児がんの治療(がん情報サービス)

造血幹細胞移植(がん情報サービス)